第2話 アトラ魔法学校へ入学。

 アトラ魔法学校。


 それはアトラス王国にある三大魔法学校の一つである。


 今まで数多くの冒険者や騎士、英雄を生み出した名門校。


 倍率はとても高く、とにかく実力がなければ入れない。


 そんな名門校に俺、バルーノ=エルガーは無事合格し、今日からアトラ魔法学校の一年生になった。


「それにしても、デカくて綺麗な学校だな……。 こんな凄いところで3年間生活できるのは嬉しいな」


 グラウンドは4つあり、体育館とアリーナが3つ。


 しかも、全部魔法壁が貼られていて、ちょっとやそっとのことでは壊れない。


 魔法の練習にはもってこいの場所がたくさんあるのは嬉しいな。


「建物、でっかぁ……」


 ちょっと首を動かすと、大きな建物が3つ見える。


 1号館は1年生、2号館は2年生、3号館は3年生が主に使うことになっていると、パンフレットに書いていた。


 1学年に1つ建物があんのかよ……しかも、ダイヤモンドとかを使ってるらしいから、なんだか高級感が溢れてるんだけど……。


 これに加えて、少し離れたところには貴族が使っても全然文句が出ないぐらい、凄い学生寮があるんだろ?


 本当、名門校って感じがするわ。 俺そんなところに住めてラッキー。


「ねぇねぇあの3人ってーーーーーー!」

「えっ? きゃあーーーーー!」

「『五彗星』の御三方よ! この学校に入学するっていう噂は本当だったんだわ!!」

「実物初めて見るけど、三人ともカッケェなぁ!!」


 少し離れたところが一気に賑やかになる。


 俺は気になったので人集りの中に突入して、その中心にいる人物達を見た。


 そこには『瞬雷』と『戦士皇女』、『竜姫』の三人が朗らかな笑みを浮かべながら手を振っていた。


「これから3年間、みんなよろしくな!!」


 甘い笑みを浮かべて女子生徒を虜にしている男の名前はフラン=オーリオ。


 190cmぐらいあり、手足が長くてスタイル抜群。 サラサラな金髪に甘いマスク、丁寧な言動から特に女性ファンが多いイメージだ。


 雷魔法を得意とし、一瞬で敵を屠る姿から『瞬雷』という二つ名をつけられている。


「皆さん。 仲良くしてくださいね!」


 長くて絹のような美しい金髪を靡かせながら、ヒラヒラと上品に手を振るのはアリス=アトラス。


 アトラス王国の第3皇女だ。


 光魔法を得意とし、魔法と王具を使って戦場を駆け抜ける姿から『戦士皇女』という二つ名をつけられている。


「3年間切磋琢磨して、腕を磨いていきましょう……」


 綺麗な黒髪を可愛らしいお団子に結び、目元を細めて笑うのはアーテル=ノルヴァン。


 闇魔法を得意とし、わずか13歳で『七龍』の1体と契約した、竜使いの天才少女である。


 そんな彼女にみんなは畏怖と尊敬の念を込めて竜の姫、『竜姫』という二つ名をつけた。


「うわぁ……ワクワクしてきたぁ!」

「オーラがもう強者って感じだよね……」

「俺も卒業する頃にはあんなになってんのかな?」

「私……この学校で頑張れるかな……」


 SSランク冒険者を目の当たりにして気持ちを振るい立たせる者、自信をなくす者、色々な人がいた。


 俺はそんな人達を横目で見ながら三人を見る。


 ……俺は正直、『五彗星』が嫌いだ。


 なぜなら、なにかと比較の対象として出され、嫌な思い、苦渋を味わされてきた。


 特に『瞬雷』が嫌いだ。


 同じ雷属性で歳も同じ。


 あっちはサラサラな金髪を備えたイケメンで、俺は霞んだ金髪に、お世辞でもイケメンとは言えないような顔立ち。


 しかも、俺は過去に一度瞬雷と戦い、している。


 地位、強さなどほとんど現時点で俺より上だ。


「………ほんと、同い年に天才がいるとか嫌になるわ〜」


 俺はそんなことをぼそっと呟いてから、人集りから脱出する。


 でも、見てろよ。 最終的に『帝』の位に就くのは俺だ。


 お前らのことは嫌いだが、技の技術や闘い方とかは目で見て奪わせて貰う。


 今は色々お前らの方が上かもしれないけど、未来では負けねぇ。


 そんなことを思いながら、俺はクラスが発表されている1号館のエントランスへと向かって、掲示板を見た。


「Aクラスか」


 俺は人集りの少し後ろから確認する。


 今年の一年生は120人。


 1クラス40人で、

 Aクラスには『戦士皇女』。

 Bクラスには『竜姫』。

 Cクラスには『瞬雷』が在籍しているみたいだ。


 まぁ、そりゃこの3人はバラバラにするよな。 そうしないと、クラスのバランス崩れちまうもんな。


 良かった。 『瞬雷』と同じクラスにならなくて。


「そろそろ入学式始まるってよ」

「場所はどこだっけ?」

「第一体育館らしいわよ」


 そんな声が聞こえたので周りを見渡すと、生徒達が一つの方向へと流れていく。


 きっと辿り着いた先に第一体育館があるんだろうな。


「場所分からんから、この流れについてこ」


 俺はポケットに手を突っ込みながら、歩き始めたのだった。


 □ □ □ □


「諸君。 まずはアトラス魔法学校に入学おめでとう! 私達職員、在校生は君たちのことを歓迎するわ!!」


 体育館に着き、席に座ると少しして入学式が始まった。


 今、体育館の壇上に立って話をし、みんなの視線を独り占めしているのは、緑髪を肩辺りで揃えている妙齢の女性だ。


「うわっ……学園長すげぇ美人」

「それでいて無茶苦茶強いんでしょ?」

「あんな女性になりたいなぁ」


 ミラ=ラージュリー。  アトラス魔法学校の学園長で、前『風帝』。


 現役時代は風魔法と槍を使って、幾つもの戦績を挙げた猛者らしい。


 40代らしいがとても美しく、強者のオーラを纏っていた。


「さて、君たちはこれから色々なことを知り、経験する。 その経験をどう活かすかは君たち次第よ!  若者よ! 考えろ! 実行しろ! 自分の道は自分で切り開け!」


 学園長の言葉を聞いた生徒と先生は盛大な拍手を送る。 実力者からの言葉は多くの人の心に響いたみたいだ。


「さて、私から話すことは後1つだけあるの。 それは1週間後に行われる1年生交流会についてよ!!」


 その言葉を聞いた多くの1年生は?マークを浮かべ、在校生はなんだか思い出に耽っていた。


 1年生交流会って何だ??


「1週間後に1年生交流会という、10日間かけて強さを競う大会を開きます。 その大会で現時点でのランキングが決まるから、みんな頑張ってね!!」


 学園長の話を聞いて1年生はザワザワし始める。


 へぇ……そんな早い段階で強さを確認すんのか。


 おもしれぇ……やってやろうじゃねーか!!


「詳しいことは学年主任の先生が後からここで説明するから、よくお話を聞いてね! それじゃあ、入学式はこれでおしまいにします。 在校生はそれぞれのクラスに戻ってね!」


 学園長はウィンクをして、壇上から消える。


 在校生もそれぞれのクラスに帰り始め、数十分経つと、第一体育館に残っているのは1年生と一部だけの先生になっていた。

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