雷拳と呼ばれる無冠の五帝。 雷帝を目指す。

@raitiiii

一章 始まり

第1話 『無冠の五帝』の一人、雷拳。

 3年前、アトラス王国の間で5人の少年少女が話題になった。


 歴代最速でSランク冒険者になった子ども達。


戦刃せんじん

雷拳らいけん

疾風はやて

奇術乙女きじゅつおとめ

剣狼けんろう


 この5人はいつかSSSランク冒険者になり、『帝』という称号を貰い、『帝』になるだろうと誰もが噂をし、期待した。


 しかし、2年前そんな5人にあっという間に追いつき、追い越して、歴代最速でSSランク冒険者になった少年少女が話題になる。


鉄壁てっぺき

炎虎えんこ

瞬雷しゅんらい

戦士皇女せんしこうじょ

竜姫りゅうき


 この5人は瞬く間に結果を出し、一躍人気者になった。


 世間は一気にこの5人、『五彗星』に夢中になる。


 かっこよくて漢気がある。 美しくて可愛い。


 そして、強くて華がある。


 世間は掌を返し、この『五彗星』が次の『帝』になるだろうと声高く言った。


 いつしか『戦刃』達は世間から少しずつ忘れられるようになり、『五彗星』の影へと埋もれていく。


 そんな5人に対して世間は、『無冠の五帝』と呼ぶようになったのだったーーーーーーーー



 □ □ □


「ふぅ……さて、明日の準備もしたいしさっさと仕事を片付けるか」


 緑が茂る森の中でそんなことを言って、目の前にいる魔物達を見つめるのは、声などを変えてくれる認証仮面をつけている1人の男。


 目の前にいるのはAランクの魔物、キマイラだ。


 数は20匹。


 Sランク冒険者が1人で戦うには、少々手こずる相手達だ。


 しかし、男は怯むことなくポケットに手を入れたままキマイラ達を見つめる。


 そんな男を見たキマイラは、態度が気に食わないのか一斉に襲いかかってきた。


 火炎や毒蛇の尻尾、鋭い牙が男に襲い掛かろうとする。


 でも、その攻撃が男に届くことはなかった。


「ーーーーーー!?!?」


 いつのまにかキマイラ達はぶっとばされる。


 周りを見てみれば首がもげている物や、自身が放った火炎に燃やされているキマイラ達がいた。


 生き延びているキマイラ達は、命の危険を感じて逃げようとする。


 しかし、目の前にいる男は決してキマイラ達を逃すことはなかった。


「悪いけど逃がさないよ。 こっちも仕事なんでね」


 ポケットに手を入れたままの男はキマイラ達に話しかける。


 次の瞬間、キマイラ達は地面に叩きのめされていた。


 地面にはヒビが入って割れており、キマイラ達の腹部は


「1.2.3ーーーーーーよし! 20匹全員死亡してるの確認っと。 後は牙なり尻尾なりを持ち帰って、ギルドに提出するか」


 男はキマイラの死骸に近づき、倒した証拠となる物品を集めていく。


 集め終わった男はキマイラの死骸を燃やして埋めた後、ギルドがあるアトラス王国へと向かったのだった。


 □ □ □ □


「お、あいつがギルドにいんぞ」

「この時間にいるなんて珍しいな」

「本当本当。 いつもはこんな真夜中にギルドに来ないのにねぇ」


 俺がギルドに入ると、酒を呑んでいる冒険者達がこっちを見る。


 俺はそんな視線を無視して受付嬢に戦利品を渡し、依頼が完了したことを伝えた。


「キマイラ20匹の討伐確認いたしました。 お疲れ様です」


「ありがとう。 後、ギルドマスターに話がしたいんだけど、繋げてもらうことは可能かな?」


 俺がそう言うと、受付嬢はギルドマスターの部屋へと向かう。


 少しすると受付嬢が戻ってきて、ギルドマスターの部屋に行くようにと伝えられた。


 俺はギルドマスターの部屋まで行き、ノックをした後に部屋に入る。


 中には手を組んでこっちを見ているギルドマスター、ホムラ=エスキュードがいた。


「おう、おつかれさん。 こっちに来て座れよ」


「そうさせてもらいます」


 俺はマスターに言われた通り、ソファへと座る。


 座ったことを確認すると、マスターは紅茶を出してくれた。


「いつもすいません」


「別にこんぐらいどうってことはねーよ。 で、話ってのはなんだよ?」


 マスターはドガっとソファに座りながら、俺に話すように促した。


「明日、アトラ魔法学校の入学式なんです。 で、学費とかを出してくれたマスターには、やっぱり一言お礼を言いたくてですね……」


「おー明日遂に入学式か……って、何回もお礼言わなくてもいいのに」


「でも、やっぱりお金とかかかってますし、そこはキッチリしときたいんですよ」


「そうかいそうかい」


「マスター、色々ありがとうございました」


「はい。 どういたしまして」


 そう言うマスターは苦笑いを浮かべながら俺の方を見た。


「しかし、子どもの成長ってのは早いな。 お前ももう15歳か……俺も歳をとるわけだ」


「マスターまだ40歳なんだから若い方でしょ」


「おっ? そう思う?」


 ホムラ=エスキュード。 35歳にしてギルドマスターになり、SSランク冒険者。


 二つ名は『炎王』だ。


 巧みな炎魔法、鍛えられた身体から繰り出される攻撃は、重くて鋭い。


「学校生活楽しめよ? 青春は一度きりなんだからな」


「でも、同じ学校にも入学するんですよ? 少し嫌です」


「あー……まぁ、お前からしたら、あいつらの存在はちょっと嬉しくないかもなぁ。 でも、学べることはあるはずだ。 そんなにネガティブに考えんなよ」


「……はい」


 今年の新入生にはあの『五彗星』の『瞬雷』と『戦士皇女』、『竜姫』がいる。


 正直、憂鬱だ。


「話はそれだけか? もう時間も時間だし、明日の入学式に備えて寝た方がいいんじゃないか?」


 マスターは時計の方を見る。 時間は0時に近かった。


「そうっすね。 準備もまだ少し残ってますし、ここらで帰らせてもらいます。 マスター、時間をとっていただきありがとうございました!」


「おう、いいってことよ! またなー」


 俺はマスターの部屋から出て、ギルドの食堂で飯を食った後、自分の家に戻ったのだった。


 □ □ □ □


「さて、アトラ魔法学校に『五彗星』の『瞬雷』と『戦士皇女』、『竜姫』が入学か……。 それにプラスして『無冠の五帝』、『雷拳』も入学」


 ホムラは自室でペラペラと資料をめくる。


「ラルク魔法学校には『五彗星』の『炎虎』、『無冠の五帝』、『剣狼』と『奇術乙女』が入学か」


 ホムラは片手で紅茶を飲む。


「クルガ魔法学校には『五彗星』の『鉄壁』、『無冠の五帝』、『戦刃』と『疾風』が入学……。 アトラス王国が誇る三大魔法学校に、同時期にこんなに才能がある若者が入学してくるなんて、今までなかったなぁ」


 ホムラは紅茶を飲み干して立ち上がり、窓の方へと向かう。


 外を見ると、夜空には星々が輝いていた。


「さて、若人達よ。 どんな学校生活になるかな? できれば、切磋琢磨してお互いを高めていってほしいんだけど……ま、それは神のみぞ知るってやつかな?」


 ホムラはそんなことを1人呟いた後、椅子へと座る。


 そして、残っている仕事をせっせと片付け始めたのだった。






 □ □ □ □






 ーーーーこの物語は『五彗星』という天才達の影に埋もれてしまった『無冠の五帝』の1人、『雷拳』こと、バルーノ=エルガーが学校生活などを通じて心身共に強くなり、アトラス王国に7人しかいないSSSランク冒険者の1人、『雷帝』を目指す。 そんなお話である。




ーーーーーーーーーーーーーーーー

10話まで毎日更新。 時間は19時〜21時の間です。

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