剣士転校編

第2話 魔法学園

俺、黒崎刹那は訳あって転校することになった。


その転校先の学校の名は聖城学園。


トップクラスの実績と他のところにはない特別なカリキュラムがある国の認めた学校。


そして数少ない魔法学校である。


ここに通うには普通の学校と同じように一定以上の学力と一定以上の魔法使いとしての適正が必要となる。


そんな学校に俺は魔法学校ではない平凡な学校から転校することになった。


「明日から、ここに通うのか。」


俺は目の前にある大きな学校を見上げ、その大きさに圧倒される。


一呼吸置いて腰に装備した剣を触り確認して


「じゃあ、行くか。」


と一人で呟き、堂々と学園に入って行った。





「まずは校長に挨拶に行かなきゃな。」


そう言って学園に入ってから三十分が経った。


この学園に通い出す前に転校を認めてくれた校長に挨拶するためにこの学園に脚を運んだが、学園が想像よりもかなり広く未だに校長室にたどり着いていなかった。


「ここどこだ。ってか、この学園でかすぎないか。」


学校の案内書に目を通したが、場所まではちゃんと確認していなかったのでどこに校長室があるかわからないし、そもそもここが何処かわからない。


前の学校では校長室は入り口に近かった為、今回も同じだろうと考えたが入り口近くにはなく探しているうちに完全に迷った。


しっかり、案内書を読み込んでおけばよかったと後悔する。


「完全に道に迷ったな。」


学園内を周っていると自分が住むであろう寮や他に比べて異常に頑丈そうな部屋を見かけた。


しかし、一番最初に訪れるはずだった校長室が見つからない。


「さて、どうするか。」


あまりにも広すぎで場所が把握できなかったのでどのように校長室に辿り付こうかと悩んでいると、


「どうかしたの?」


と突然後ろから少女の声が聞こえた。


考えることに集中しすぎたせいか人の気配を全く感知できず、当然背後から話しかけられたことに驚いて、振り向いて相手を確認する前にすぐに軽く距離を取る。


鞘に入った剣に手を伸ばしていつでも抜けるようにして話しかけてきた人を確認する。そこには制服である魔法服を着た少女がいた。


制服を着てるってことはここの学生であると判断して警戒を解き剣から手を離す。


警戒しすぎた。


そんな俺の姿を見て少女は


「あっ、ごめんなさい。いきなりだったので驚かせてしまいましたよね。」


と頭を下げる。


こっちが勝手に過剰に反応し過ぎただけなので少女が謝る必要はまったくない。


「大丈夫です。寧ろこっちこそなんかすみません。話しかけてくれたのに警戒してしまって。」


剣に手を伸ばして、一瞬でも敵扱いした俺を許してくれ。と心の中で謝る。


そもそも、ここは学校。敵なんているはずない為、かなり変なことをしていたと自覚する。


少女はそんなのいいですよ。と笑いながら返してくれる。


そのまま続けて、


「見ない顔、服装ですね? 誰かの親戚の方ですか?」


と言いながら顔を除いてくる。


今、俺の服装は私服?に近い格好である。理由は制服が届かなかったため。


そんな俺の服装が気になって声を掛けてきたみたいだ。


「一応、明日から此処に通うことになっています。二年黒崎刹那といいます。」


と名乗っておくと


「二年生!? 私も二年なんです。クラスはBクラスで高城夕陽って言います。よろしくお願いします。」


と自己紹介をした。


「雰囲気が大人っぽくて年上だと思いましたよ。って、同い年ならタメ語でもいいですか?敬語少しめんどくさいので。」


普段から敬語のタイプの人だと思っていた。

俺も敬語よりタメ語の方がいい。


「ああ。いいよ。その代わり俺もタメ語にさせてもらうけど。」


「あ、うん。お願い。」


お互い即行でタメ語になる。


「今日は何しに来たの?」


「校長への挨拶とかクラス確認とかかな。」


「クラス確認かー。ねぇ、刹那君。クラス、私も一緒に聞きに行っていい?」


「いいけど。俺、校長室で教えてもらうはずだから、すぐには教えられないよ。」


「そうなんだー。残念。」


と見るからに落ち込む。


「あれ? でも、なんでここにいるの? 

ここに校長室はないよ?」


不思議そうに首を傾げて聞いてくる。普段使っている人からしたら校長室なんてすぐわかるからな。迷子なんて想像できないだろう。


「恥ずかしながら、道に迷ったんだよ。」


「ふふ。大人っぽいのに、迷子かー。なら、お姉さんが教えてあげるからついて来て。」


と微笑して手を差し伸べてくる。


迷子って言われるとなんか恥ずかしい。それに冗談だが子供扱いされるなんてな。


「お姉さんよろしくお願いしますよー。」


悔しかったので適当に返す。


たった数分でここまで距離を縮められるとは最近の高校生は凄いコミュニケーション能力だと思う。


刹那の前に立って、校長室まで案内をしてくれた。 


お互い気まずくて何も話さず校長室に案内されている中、もう耐えられないと夕陽が


「なんで刹那君は、この学園に転校することに?」


と聞いてくる。


俺は無言が無理なタイプではない為、何も話さなくても良かったが話を振られたからには答えたい。


しかし、転校して来た理由はかなり長くなるので


「ちょっと色々あってな。」


と適当に返す。


そのせいで


「えっと、聞いちゃいけないことだったかな?」


と勘違いをして恐る恐るこちらの表情を伺おうと後ろを向いてくる。


「いや、大したことじゃないから別に気にしなくていいよ。」


なんか、勘違いされたままだと嫌だから、時間があれば、いつか話すか。そう思いながら次の質問を聞く。


「そっか。じゃあ、次は転校前の学校についてとか?」


「前の学校は普通の学校だったからな。特に言うこともないなー。」


「えー。何かあるでしょ。」


「本当に特に何もないよ。」


昔の話に特に面白い話はない。すぐに会話が終わってしまう。


「むー。私と話したくないからそんなこと言ってるんじゃないかな?」


と頬を膨らませて怒る。


「そんなことないよ。」


慌ててそう返す。不機嫌そうな夕陽は


「それに刹那君、私の名前まだ一回も呼んでないよね?」


と言ってくる。


二人だと誰に話しているかわかる為、名前は省略する。そのせいでまだ、一度も夕陽と呼んでいないし、そもそも、高城とも呼んでない。


「そういえば、そうだな。 」


今、呼ぶ必要はないが、呼んで欲しいなら別に構わない。


「夕陽。」


俺はそう呼んだ。


「これでいいか?」


下の名前で呼ぶのは不味かったかなと、確認する。


「えっ、あっ、うん。いいよ。」


夕陽はまた動揺しているがこちらを向いて、笑顔で


「えへへ、男の子に名前で呼ばれるとなんだか、照れちゃうね。」


と頬をほんのり赤くして返事をした。


可愛い。


その後、夕陽は俺の顔を見て


「これからよろしくね! 刹那君。」


と笑顔で俺の名前を呼んだ。

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