第41話 放課後の予定

祐樹のバトルが終わり、終礼があるので自分たちの教室へ向かう。


反省会をすぐやりたかったが時間がないため後にする。


「色々言いたいことはあるけど、今は時間がないからまた今度な。」


「わかった。」


教室に戻ると殆どの人が席に着いていた。教壇には先生が立っていた。


祐樹と別れて自分の席に向かった刹那は遅れたかもしれないと不安になったため隣の席に座っている花に小声で


「終礼ってまだ始まってないよな?」


と尋ねる。


「まだ、始まってないよ。」


そう言われて安心する。


椅子に座ると教室に他の生徒が慌てた様子で教室に入ってくる。


もう終礼が始まっていると思ってしまったのだろう。人のこと言えないけど。


その人たちが座るのを確認すると終礼が始まった。


終礼中、祐樹のこと、そして勇者に何を聞こうか考えていた。


祐樹はバトルシステムでの最後の方であった制御が効かなくなってからどうするか。


勇者には何を聞こうか。何もない。


聞くことを考えていたら先生の話の内容がほとんど入ってこなくて気づいたら終礼は終わっていた。


終礼が終わり椅子から立ちすぐに祐樹の元へ向かう。


「祐樹、反省会は明日でいいか?」


終礼中考えていた結果明日の練習時に話しながらやるのが一番効率がいいと思った。だから、明日でもいいか聞いてみたが。


「えっ、今日じゃダメなのか?」


と返される。今日やる気満々でしたね。


「ちょっとこの後、人に会う約束しているんだ。もし、反省会はその後でもいいって言うならここで待ってて欲しいんだけど。」


「誰に会いにいくんだ? 人によっては、生徒会とか、校長とかだと長くなるかもしれないしけど、花とかみたいな友達だったら早いかもしれないからな。」


勇者と会いに行くということを言っていいのか悩む。まず、勇者と関係があるすら言っていないが、結局、悩みに悩んだ末に伝えることにした。まあ、細かい説明は後ですることにするけど。


「勇者だ。これ以上のことは後で説明する。」


予想していない人を言われて驚く祐樹だったが、それよりも驚いている人がいた。


由依だ。


由依は机をバンっと叩いて鳴らしながら立ちこちらを見て目を見開いて固まる。その後すぐに刹那の元へ駆け寄ってくる。


「なんで、貴方が勇者と関わりがあるの?」


「勇者がこの学園に転校してきたからだ。」


「転校してきたって…。それ、本当なの?」


いつもより鋭く睨んでくる。勇者との間に何かあったのか。


「ああ。」


刹那が肯定すると睨むのをやめて、


「なんで勇者がこの学校に。」


と小さな声でつぶやいた。


いつもは花のことでしか反応しない由依が何故ここまで勇者に反応するのかわからない。


ってか、勇者が転校してきているのはかなり広まっていると思ったんだけどな。


「みんなで何話してるの?」


そこへいつも通りの花がやってくる。


「何でもないよ。」


花が来ると由緒は刹那から少し距離を置く。


「えー。何か真剣そうな話してたじゃん。」


「本当に何でもないから。今、丁度話が終わったところだから。話はもう終わったし姉さん行こう。」


と由依は半ば強引に花から勇者の話題を遠ざけている。


「待ってよー。」


由依は刹那を睨みながら教室を出て行った。花もそれを追いかける様に由緒について行く。


あの反応からして勇者と由依たちには何か関係があることは間違いない。


由依からは話してくれなさそうだし、由依たちについて勇者なら何か知っているのかもしれないので後で勇者に聞いてみよう。


「さて、俺も行かなきゃ行けないんだけど。祐樹はどうする?」


「えっと、俺も一緒に行ってもいいか?」


待つか、帰るかっていう選択肢しか与えてなかったんだが何故か知らないうちに新しい選択肢が増えていた。


「何でだ?勇者になんか用があるのか?」


「あの強さの秘密を知りたいんだ。」


勇者の魔力は一般人では持つことのできないものだ。


祐樹が聞くのは正直、やめた方がいいと思う。あれを技術をあげても一生真似することはできないのでまた自分の実力に失望してしまうかもしれない。


だが、今の興味津々の祐樹にダメだなどと言えないのと待たせることの罪悪感で許してしまう。


「あー、えっと、まあ、いいよ。その代わりだが条件として俺か勇者が出て行ってくれってお願いしたらすぐにその場から離れてくれ。」


そろそろ俺のこと、昔の俺が何をしていたかを祐樹に伝えてもいいだろう。剣で戦うことはなんとなく察していると思うが前線で戦っていた魔法師だったことは話してないし。


勇者が話す内容も他の人に知られてはいけない様なことを話すかもしれないのでその時はどこか聞こえないところに行ってもらわなければならない。


話す相手は勇者だ。重要な話をするかもしれないし。


「わかった。」


「なら、行くぞー。」


荷物を持って教室を出る。そして、待ち合わせの場所である練習場へ向かった。


練習場へ行くまでにスマホの着信音が鳴り誰から来たのか確かめる。送り主は知らない人だった。取り敢えず、内容だけ確認する。


『今日、10時に校舎裏に来て。』


そんなことが書かれていた。人が来ない時間と場所を選んでいる。


不審なメール。もしかしたら、初日に襲いかかって来たフードの奴かもしれない。


「ながらスマホは良くないぞ。」


スマホを注視して気をとられていると祐樹に注意される。


「そうだな。今しまうよ。」


時間はまだある、行くかどうかはこの後、もしくは夕ご飯を食べてからにしようと思いながらポケットの中にしまった。


そんなやり取りをしているうちに練習場に着く。練習場には何人かの生徒がいたが勇者の姿は見つからない。


「早かったか?」


と呟く。すると後ろから


「いや、丁度だよ。」


と返事が返ってくる。刹那と祐樹は同時に振り向きその声の主を確認する。背後には勇者が立っていた。


「やあ、さっきぶりだね。刹那


「ここじゃ話せないことも多いだろう。僕の部屋に来ないか?」


そう提案される。


俺としては断る理由はない。話す場所はここじゃないあまり他の人に知られない様な部屋の方がいい。


「そうするよ。あと、こいつも一緒に行ってもいいか?」


勇者は悩み黙り込む。そして、出した答えは


「あまり他の人は来てほしくないな。」


という駄目に近い返事だった。


「他の人に知られたくない内容の時は離れてもらうっていう条件を出している。邪魔は絶対にさせない。それでも駄目か?」


勇者はもう一度黙り込み、そして、


「わかった。いいよ。但し、黒崎くんが言った条件は必ず守ってくれよ。まあ、そんな機密事項は話さないけど、念のためにね。」


と了承してくれた。


「わかってるよ。いいよな。祐樹。」


祐樹はそれに


「ああ。わかった。」


と答えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

邪神が蔓延る魔法の世界で少年は英雄となる 吹雪く吹雪 @hubuku_hubuki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ