第39話 勇者の戦い方
その後も何度か花に手伝ってもらい魔法を練習し、授業の時間が来る前に練習をやめた。
ギリギリまでやっていたかったが、これ以上花に魔力を貰うのは悪いかなっと思ったのでやめた。
あと、由依の無言の圧力が怖かった。
刹那と祐樹はやることもなくなったので誰か面白いバトルをしていないかなという期待をして暇を潰すためにバトルシステムのある教室へ向かった。
バトルシステムは基本は授業で使われているが、誰も使っていない場合、誰でも使えるらしい。
花たちも誘ったが二人でやりたいことがあるらしくやんわり断られた。
バトルシステムでは特に良い試合はなかった。しかし隣にいた祐樹は真剣にそのバトルを見て何かを学ぼうとしていたので邪魔をするわけにもいかずただただそのバトルをぼーっと眺めるしかやることがなかった。
無駄の多い動きをしていたり魔力の調整ができていない初級魔法を撃っていたりするそのバトルは最前線を見ている刹那からすると退屈過ぎた。少なくとも目の前のバトルから学ぶことはなかった。暇すぎて寝そうになっていたので少し歩いて眠気を覚まそうかなと思い立ち上がる。
「ちょっと、飲み物買ってくる。」
「わかった。俺はこれを見て待ってるよ。」
そのまま教室から出て行き自販機の置いてある学食まで歩いて行く。廊下にはあまり人はいない。そこそこ距離があるので眠気は覚めるだろうなどと考えながら歩く。そして誰か知り合いに会うこともなく自販機までたどり着き、水を買った。
「祐樹にも何か買っていってあげるか。」
何が好きかわからないので俺と同じ水を買っておく。そのまま水を自販機から取り出して教室に戻る。戻るまでの先程まで人がほとんどいなかった廊下では何故か刹那と同じ方向へ歩く人が多く、その人の流れはバトルシステムの部屋まで続いていた。
「何かやっているのか?」
辺りを見回しながらバトルシステムのある教室へ入る。この賑わいと教室的なものからして何故かは大体は予想がつくが誰がやっているかはわからない。誰か確認するためにバトルシステムの中の映像を見るとそこには昨日戦った勇者が映っていた。
尽きることのない魔力を使い魔法を連発できる勇者の戦いは刹那たちが真似できるものではないものでありそれは魔法師からすれば理想であった。
「勇者か。ならこんなに盛り上がるのも納得だわ。」
映像に映った勇者は中級魔法を連発して邪神を蹴散らしていく。その動きはさっき見ていた人たちとは全く違う。その戦いは見ていて飽きない。そして同時に思う。
「あいつに本気で勝つにはあの魔法を完成させなきゃ駄目か。」
今の実力だけでは勝てない。もっと強くならなければいけない。一回も剣を弾かれ飛ばされないで戦うことは難しい。勇者に納得できる勝ち方をしたいという思いだけじゃない。この先の戦い、上級邪神との戦いなども考えると必ず必要なことだ。
「やるしかないか。」
気持ちが改めて固まるころには勇者のバトルは終わっていた。
「そろそろ、祐樹の元に戻らないとな。」
祐樹の元へ向かおうとすると、
「やあ、黒崎くん。丁度今、君を探していたんだよ。」
などという声が聞こえる。正直、勇者には関わりたくないと思っていたので無視して祐樹の元へ向かいたいと思うが、なんとか堪えてその場に留まる。
「勇者様が僕になんのようですか?」
「まあ、大した用ではないけど君と話しがしたいと思ってね。」
周りの生徒たちは最弱と呼ばれている刹那が勇者に話しかけられていることでざわざわしている。
「最弱だから最弱の話も聞きたいからって理由で話したいんじゃないか?」などという声が聞こえてくる。
そういうのが嫌だから関わりたくないだ。早く勇者と別れたいので話しが終わるような流れに持っていこうとする。
「僕と話したところで何もないと思いますよ。」
「そんなことはない。君は僕に勝った魔法師だよ。話をすることで僕はまた強くなれる。」
それを聞いた奴らは更にざわざわうるさくなる。
「そうですか。」
「僕に敬語は使わないでくれ。僕が負けた相手が敬語を使っているとなんか変な感じになる。普段、敬語ではないだろ? 昨日は敬語ではなくタメ口だった筈だ。そうだろ?」
学園での刹那と邪を斬る者と呼ばれている最前線での刹那の立場は違う。
勇者はそれをわかった上で言っているようだった。周りと刹那の反応を楽しむかのように更に続けてくる勇者。
「ついでに勇者って呼ぶんじゃなくてかなでって呼んでほしいかな。」
「ちょっと、そこまでは。」
敬語で話したくないからそれはいいが、なんで関わりたくない奴の名前を呼ばなきゃいけないんだ。
「嫌ならいい。」
「敬語で話すのは嫌というよりむしろやめたいからやめるさ。でも名前で呼ぶのは嫌だ。」
「そうかい。ならそれでもいいよ。それよりも話したいことがあるんだ。今から、時間はあるかい?」
これ以上ここで話したくない。せめて場所は変えたい。
「これを見てわかるように友達を待たせているからな。そんなに話したいことがあるなら、放課後、練習場に来てくれ。」
と二本持っていた水を見せて嘘ではないことを強調して勇者から逃げるように祐樹の元へ向かった。
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