第37話 想像力
剣を発現させることには成功した刹那は1回目と2回目の違いを考えていた。
あの時、勇者と戦った時と何が違かったか。動作は同じだった筈だ。しかし、1回目は剣の形にすらならずに消えていった。違いといったら、イメージをしていたかしていなかったかだ。魔法にイメージ力が関係しているなどということは聞いたことはない。だが、それしか考えられない。
「イメージ力なのかな。」
と独り言を呟く。
「イメージ力?」
独り言だったのだが、祐樹が反応する。
「この魔法を完成させるには何が必要なのかなって考えた時にさ、 失敗した時としなかった時の違いからしかまだ参考にできなくて、その時の違いがイメージ力くらいだったんだよ。」
「イメージ力…。必要そうだけど、普通に魔法を撃つ時はそんなにイメージしてないよな。」
「俺もそこが気になっているんだよなー。魔法にイメージが必要なら、そもそも全く知らない魔法なんて使えないし。」
「うーん。俺は全く分からん。他に知っている人がいるかもしれないけど、刹那が知らないなら殆どの人が知らないと思うし、もう、自分で確かめるしかないんじゃないか?」
自分でか。確かめる必要はあるな。
「そうだな。なら、祐樹。魔力贈与の時にさっきよりも強くイメージしながらやってくれないか?」
もしも、魔法にイメージ力が必要なら強くイメージする事で魔法の効率は良くなると思う。
どうなるか。
祐樹は先程同様、刹那の背中に手を当てると魔力を流し始める。流し込まれた魔力は前よりも多く流れ込んでくる。流し終わると祐樹に魔力の減少具合を聞いてみる。
「やっきと変わらないな。」
さっきよりも早く魔力は送られたが、効率自体はあまり変わらないようだった。
「早く送ろうって思いながらやったんだけどな。」
祐樹は早く送ろうと思いながらやる事で魔力を実際に多く送ってしまった。これはイメージが影響したとは言えない。
イメージ力で早く魔力を流したというよりは、実際に早く流していた。
多分魔力を実際にどう言うものか掴んでしまったことにより考えと行動が一致してしまった訳だ。
早く流すと考えなくても、さっきより早くなったのならイメージ力が関係しているが、今回はそう言い切れない。
確かめるなら、イメージだけで全く知らない魔法を作れるかどうかか。
「なんとなく、確かめ方はわかった気がするよ。」
そう言って氷の弾丸を発現する。発現させたその氷は弾丸というよりは氷柱のようだった。
目の前に現れたそれを思いっきり掴むとそこに魔力を注ぐ。氷柱は徐々に姿を変えて剣となる。そのまま、剣への意識を保ち続ける。俺の魔力がなくなってから少しの時間なら剣は消えることはなかった。
「今、何も言わずに魔法が発現したのか?」
魔法の詠唱省略。少し時間はかかるができる。
「ああ。俺の推測でしかないが、魔法の名をいうのはイメージを固める為のものでそれによってイメージをすぐに固めていたんだと思う。」
一度覚えたイメージはそう簡単に消えない。だから、魔法の名を言うことで無意識にイメージしている。一度自分の中で固定概念となった物は出し入れがしやすい。
お米をイメージしてと言われた時、見たことない人は自分の中の空想上のお米をイメージするが、見たことのある人は言われたらすぐに頭の中にお米の絵が浮かんでくる。
名前と魔法を一致させる。それが詠唱。魔法の名前を言う理由。詠唱はすんなり魔法を出せるようにしているものなのかもしれない。
今、作り出した魔法が弾丸ではなく氷柱だったのは、イメージしたのが弾丸ではなく氷柱だったからだ。魔力はいつも以上に使ってしまったがイメージ力と魔法が繋がっていると言える。
「つまりイメージ力は魔法に影響するってことか。」
「全部にではないけど関係していると思う。」
新しい魔法を作る時、それは作る人のイメージによって作られる訳だ。だからと言って、氷の剣が完成した訳じゃない。完成させるには別の何か、最悪魔力が必要になる。それでも今回の発見は俺の新しい魔法を作る上で大きな前進となったし、今後も役に立つことだ。先は長いかもしれないが出だしとしては順調と言える。
「さて、お互いに魔力も使いきったし今日はもう終わりにしようぜ。」
「そうだな。」
俺は何もすることがないので少し他の人の練習をみる。殆どの人が初級魔法を撃っている中、一人だけ中級魔法を撃っている人がいた。
「なあ、花と由依ってなんでこのクラスにいるんだ?」
あれ程の実力を持っているなら、一番下のクラスにいる訳ない。由依は中級魔法を使えるし華の魔力贈与の効率は100%に近かった。あの二人にも何かあるそう思う自分がいた。
「バトルシステムの時、花は魔法を撃たなかったし、由依は一発中級魔法撃って終わったからだった気がする。バトルシステムでクラスが決まるからAクラスじゃなかったのはそれらが影響してると思う。」
「手加減したのか?」
2人の言動から多分、手加減はしてないと思うけど。
何故なんだろうか疑問が残る。
「さあな。」
祐樹もわからないようだったのでこれ以上の詮索はマナー違反だと思い話をやめた。それと同時に一つだけ思いついたことがあった。
花の魔力贈与の力を借りれば早く完成させることができるのではないかと。
断られたら断られたでいい。
出来るだけ新しい魔法を早く使えればそこから多くのことができる。それに花の魔力贈与をもう一度ちゃんと受けることで花について何かわかることがあるかもしれない。
そう思い祐樹に
「ちょっと、花達のところに行ってくる。」
と伝える。
「俺も暇だし着いて行くよ。」
そう返されたので祐樹とともに花達の元へ向かった。
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