第34話 vs勇者
あの会話の後、校長は
「忙しいから二人で勝手にやっちゃっていいよ。」
と言って部屋に残り、刹那たちは二人で誰もいない練習場に足を運んだ。
そして今、刹那は勇者とお互いに向き合って立っている。
「手加減は無しで頼むよ。」
「わかってるよ。」
挑発ではないのだろうけど、挑発されているように聞こえる。
無限に魔法を打てる奴に手加減なんてするわけないというか、できるわけない。
「じゃあ、始めるかい?」
「いいだろ。」
そう言って剣を握ることなく立つ。
正々堂々勝負するには剣を握るわけにはいかない。
勇者は勝負が始まるまで魔法の展開やその準備はできない。だから、こっちも準備なんてしちゃいけないそんな謎のプライドがあった。
そして、お互いに準備が終わったことを確認して、
「いくぞ!」
とお互いに叫び動き出した。
刹那は直進して、走りながら剣を抜き一気に距離を詰める。
勇者はその場で魔法を発現させている。
魔力があるからと言ってすぐに魔法を撃てる訳じゃない。
速攻で攻撃したら、展開が間に合わず勇者の実力がわからないかもしれない。だが、同じ条件だったのだ。別に文句はいえないだろう。
それが勇者の今の実力ということだ。
剣を握り勇者の行動を伺いながら距離を詰める。
その間に勇者の前に魔法が展開されている。今から撃っても刹那の攻撃には間に合わない。
そう思っていた。
勇者の距離が1メートルより近くなった時、
「火炎球。」
という声とともにその魔法は放たれた。
予想よりも魔法の展開が早すぎて、避けることが出来なかった為、魔法の中心を斬って破壊する。
いつも通り大きな爆風が周囲に広がる。
魔法の威力が高く態勢が崩れるが、爆風が止む前に態勢を立て直す。
しかし、前を見ると無数の魔法が飛んでくる。刹那は爆音によって勇者の声が聞こえてなかったせいでどんな魔法が来るか事前に把握することができなかった。
「炎の追従弾か?」
腰にある剣を握り、勇者との距離を縮めるために勇者の周りを回りながら少しずつ距離を縮める。
無数の火の玉が刹那を追ってくる。その量は普通の魔導師が一回に放つ追従弾の数ではない。
「ちょっと待て。チートだろ。」
この時、刹那は剣を握りもう少し早く、速攻で決めればよかったと後悔する。
少しだけ、勇者を試したかったってのはあったのがいけない。
当たりそうになるものを破壊しながら走り続ける。そんな刹那に容赦なく魔法を打ち続ける。
その魔法の種類は多数で実力を見せつけているようだった。
刹那も対抗して魔法を破壊する。しかし、避けずに全てを破壊しようとしたのが仇となり、俺は突然の下から発言した魔法『火柱』を剣で受けようとして、そのまま押さえきれずに手から剣は吹き飛ぶ。
剣の場所を確認して、次に来る魔法を避ける。一つずつ魔法を避けながら剣との距離を縮める。その狙いもすぐに読まれたのか剣の周りを集中的に狙ってくる。
「やはり剣がなければ君も一般人だね。」
それだけは言われたくなかった。
特に才能のある勇者には言われなくなかった。努力をして少しでも魔法を使えるようになったのに、努力していない他の奴らと同じように扱われる。才能のある者から見たら全て同じものに見えるんだ。それがとてつもなく嫌だった。
刹那の中にちょっとした怒りがこみ上げてくる。
「なら、見せてやるよ。俺の魔法を!」
勇者の撃っている魔法の位置は今のところ変わらない。
どうせ剣を取りに行けない。
剣が使えないことで一般人としてみられているのなら、このまま乗り込む。それが一番今の勇者を倒すには有効だ。
ここからはこっちの番だ。
勇者の魔法を避けるために見ていたが、命中率はそこまで高くない。また、撃つ時に追従弾以外は最初から当てるようとする方向に魔法を展開する。そして、魔法と魔法との間に大きな隙が生まれる。それさえわかれば近づくことぐらいはできる。
刹那は勇者の魔法が飛んできた瞬間、方向を変え突撃する。幸いにも追従弾じゃない。勇者は刹那の行動に一瞬驚いて怯んだが、すぐに魔法を展開する。
「そこだ。」
勇者の懐に入る。
今、必要なのは魔法を破壊ができて、そのまま攻撃ができる武器だ。
武器を作る魔法なんて俺は持っていない。だが、このチャンスをものにするにはこれしかない。
持っていないなら作るしかない!
そう決意して俺は発現させた氷の弾丸に魔力全てを注ぎ弾丸を掴む。
それは眩い光を放ち一瞬だけ剣の姿を作り出す。刹那は奇跡的できたその武器を勇者の魔法の中心めがけて殴るように腕を振り突き刺す。
勇者の魔法は放たれるとともに破壊される。それでも刹那は腕を止めない。即興で作った剣は未だに消えていない。
「ハァァァァァァァ!」
叫びながら勇者の喉めがけて腕を伸ばす。
勝った。
そう確信した瞬間、魔法は勇者に届くことなく消えてなくなった。
勇者は何もできずただ立ち尽くすことしたできなかった。そして魔力を使い剣もない刹那もそのまま立つしかなかった。
俺も負けだな。
そう思って負けを認めようと口を開けるよりも先に
「僕の負けだ。」
と勇者は降参をした。
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