第27話 side 夕陽 英雄
刹那が夕陽の助けに入る前、夕陽は後輩の少女を守るために一人で邪神相手に戦っていた。
「私は大丈夫だから、あなたは逃げて。」
そう言ってから、数十分ほどたった。あと少しで、邪神を殲滅できる。
「中級魔法。光の追尾弾。」
夕陽の放った魔法が邪神めがけて飛んで行く。魔法一個一個にかける魔力は普通の魔法よりも多くした。そのため当たった邪神はすぐに消えてゆく。
誰かの助けになりたいそう思ってこの学園に入った。しかし、学園であまり実力を発揮することがなかったため、今回の遠征に呼ばれることはなかった。
誰かの助けにはなれなかった。
けど、それが幸いして、今、何人かの人を助けることができたんだ。
そう思いながら夕陽は邪神を倒していった。
「もう、逃げたみんな、助かったよね。」
そう呟いて、夕陽も逃げる準備に入った。
しかし、何処からか魔法が飛んでくる。すぐに魔法を展開しようとするが間に合わない。そのまま、足に魔法が直撃し、吹き飛ばされる。
足を怪我して地面に倒れた夕陽は立つことがやっとだった。
そんな夕陽は魔法が飛んできた方を見る。そこには魔法を複数個展開しようとしている邪神が飛んでいた。
動けないことはすぐにわかった。だから、すぐに魔法を展開して、邪神の魔法の発現を妨げようとする。
「初級魔法。光の槍。」
放った魔法はその邪神に直撃した。しかし、その邪神に傷がつくことはなかった。
そして、邪神は展開していた複数個の魔法がに向かって放たれる。
三年前みたいにはいかない、今度こそ終わりだと夕陽はその時、確信した。
三年前
魔法が使えなかった頃、冬休みに夕陽は家族と一緒に中央都市に旅行へ行った。午前中、母と買い物をするために大きなショッピングモールを周った。
夕陽たちは買い物をし終わって時間も丁度良かったので父と合流して昼食を取ろうとしていた。
「夕陽。何食べたい?」
「私はねー。パスタかな。」
「ほんと、夕陽はパスタが大好きだな。」
そんな父の顔は笑顔だった。
「じゃあ、あそこの店に行くか。」
そう言って父が指差すお店に向かった。
すぐにパスタが食べたかった夕陽は走ってその店に向かう。父も母もそんな夕陽の姿を眺めながら後を着いていく。
何もなければ普通にパスタを食べてこの後も楽しい旅行が続いただろう。
しかし、そうはならなかった。
夕陽が目の前に着いた瞬間、目の前のお店は無くなっていて、その代わりに目の前は炎に包まれていた。
何が起きたか、わからなかった。
夕陽は状況を確認するために空を見るとそこには黒く、羽の生えた見たことのない生物がいた。
そして、その生物は、辺り一帯を破壊しする。その生物が破壊した建物の破片が夕陽の横を通ってゆく。
その直後、叫び声が聞こえて誰かが倒れた音がした。恐る恐る後ろを振り返ると、母が倒れていた。
すぐに母の元へ駆け寄る。隣で父は母に刺さった破片を取り除こうとしている。
「お母さん。大丈夫?ねえ。ねぇ。」
何度も声をかけるが反応は小さい。
黒色の生物は母をゆすっている夕陽の方へ向かってくる。
そして、その生物は爪を立て、夕陽を引き裂こうとした。
「夕陽。逃げろ。」
そう言って父が夕陽を押し倒し、二人とも地面に倒れる。
庇うように倒れた父は肩を切られ肩から血が吹き出す。父はそのまま肩を押さえて屈み込む。
「嘘、でしょ。」
何も考えられない。考えたくなかった。
何もできない。自分の親を助けられない。ただ見ていることしかできない。
夕陽はただ父の呻き声を聞いていることしかできなかった。
それは恐怖だったのか悲しみだったのか、自分が無力だと悟ったからか覚えていない。
そんな時でもその生物は夕陽を襲ってきた。
もう終わりだ。私も両親と一緒に。
そう思った時に、刹那がやってきた。
黒き剣を持った夕陽と同じくらいの少年。
少年はその生物、邪神の攻撃を剣で止め振り払い、距離を詰め、素早く邪神を刺し倒す。邪神はそのまま消えていき、少年は私の方に歩いてくる。
少年は周りを見て、
「ごめん。」
と一言だけ呟いて、何処かへ走っていった。
その後、邪神は一掃されたという報道を聞いた。父も母も医療と魔法によって一命を取り留めた。父も母も未だに目覚めていない。でも、彼のお陰で夕陽自身もも両親も生きていた。それだけで十分だった。
それからだ。夕陽が魔法を知り、それを使って誰かを助けたいと思ったのは。刹那みたいになりたいと思ったのは。
邪神の攻撃が夕陽に迫る。
たとえ、彼が来たとしても魔法を破壊することなんてできない。私は助からない。
そう思いながら、黙って魔法を見つめていた。
が、突然誰かに押し倒される。当たりそうだった魔法はすべて黒い剣で防がれる。
辺り一面が煙に包まれる。
誰かが助けに来た?先生?
煙が晴れると、そこにはあの時、私を助けてくれた剣士、黒崎 刹那がいた。
「ごめん。」
そう言いながら刹那は立ち上がる。
夕陽は刹那の後ろ姿をじっと見つめる。
彼ならば、この状況をどうにかしてくれると感じた。
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