第24話 ギリギリ
少女から場所を聞いた刹那は邪神を倒しながら、練習場に着いた。
「先輩。」
不安そうにこちらを見ている。夕陽一人でピンチだと言っているのに俺一人しか来なければ不安になるのも当然だろうな。
どんなに強かったとしてもそれは遠征に呼ばれないくらいで、ここを乗り切ることはできないと思うだろう。
「大丈夫だ。夕陽も君も俺が守るよ。とりあえず、危ないから、ここにいてくれ。夕陽のところには俺が行くから、俺か、夕陽の指示があるまでここにいてくれよ。何かあったらこっちに来てくれ。」
そう言っても彼女の不安は消えることはない。それでも少しでも信じてもらうことができるならそれでいい。
「わかりました。」
決意を固めたのか少女ははっきりとそう言った。
「頼むぞ。」
刹那はそう言って後ろを向き一歩前へと踏み出し歩き出した。
「ちゃんと無事に戻ってきてくださいね。」
それを聞いて立ち止まり、後ろを振り返り、
「ああ、夕陽も連れて戻ってくる。」
と言って少しだけ微笑んで再び前を向き走り出した。
彼女を置いて一人で夕陽のいる場所へ向かった。練習場に入ると、部屋の端の方に無数の邪神とそれに囲まれた少女がいた。多分あれが夕陽だろう。
夕陽は魔法を使い、いくつかの邪神を倒していた。魔法によって邪神が倒されあと、数体となっていたが、一体だけ見るからに強そうな邪神がいた。夕陽は自分の周りを確認して逃げようとしていたが、その邪神が夕陽めがけて魔法を放つ。
すぐに夕陽の元に向かおうとするが邪神が行く手を阻む。
「邪魔だ。」
行く手を阻まれイライラする。このままじゃ間に合わない。刹那は剣を腰から抜き走り出す。邪神からの攻撃を避け、進行を防ごうとする邪神のみを斬り裂きスピードを落とすことなく走り続ける。
しかし、間に合わない。
夕陽はなんとか避けようとするが、魔法は足に直撃した。それにより、吹き飛ばされ動けなくなる。
今度こそ魔法が放たれたら、夕陽は。
邪神は複数の魔法を展開するまでに少し時間がかかる。
頼む。間に合え。
そう願いながら走る。
そして、魔法が夕陽に向かって放たれたと同時に俺は夕陽を押し倒し、それでも防げないところを剣を盾がわりにして防ぐ。
何とか、ギリギリのところで間に合ったが、俺は夕陽に覆いかぶさるような体勢になっていた。
緊急時だったとはいえ、あまりよろしくない体勢だったのですぐに夕陽との距離を取る。
「ごめん。」
立ち上がりながら、
『ここまで無理させてごめん。』
『いきなり押し倒してごめん。』
など色々な意味を込めてそう言って邪神を見る。
魔法の発現をもう一度しようと複数個の魔法を展開している。
「あとは俺に任せろ。夕陽は足を怪我してるみたいだし、そこで見てろ。まあ、俺が取り残した雑魚から自分の身を守るくらいはして欲しいけど。」
背後にいる夕陽に向かってそう言う。夕陽のことは見ることはなかったが、大人しく待機、倒せそうな雑魚の邪神からならさっきの魔法を見る限り自分の身を守ることはできるだろう。
目の前にいるこいつさえ倒せれば、なんとかなる。
「やはり中級の邪神か。悪いがお前の相手は俺だ。」
一人、そう呟いて剣を構える。
こいつは剣を使わなきゃ勝てない。俺は本気でこいつを倒す。変に剣を使っているところを見られたくないとか考えて勝てる相手じゃない。
邪神から放たれた魔法は全て刹那の元に迫ってくる。
しかし、刹那はそこから動くことなく剣を振り、放たれた魔法を一つ一つ斬り裂いてゆく。
その度に煙が刹那を覆う。
魔法は一発も俺の体に当たることなく破壊され、全身煙に包まれる。その煙を剣で振り払い邪神を睨みつける。
「さて、お前の魔法と俺の剣、どちらが強いか勝負と行こうか。」
そして、刹那と中級邪神との戦いが始まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます