第23話 全力疾走

他に誰かいないか確認する為に走る。


その途中にも邪神は当然現れる。


「下級邪神が四体か。」


 邪神が道を塞ぐように目の前にいる。


「邪魔するなら俺の前から消えてもらう。」


 刹那はそう言って走り出した。


 一体の邪神が迫ってくる。走りながら右に小さく飛び、空中で体の向きを邪神の方に変える。そして剣を軽く振り、横を通らすぎる邪神の腹を切り裂く。邪神は腹で真っ二つに斬りされてそのまま地面に倒れる。


「まずは一体!」


 着地した刹那に向かって二体の邪神が向かってくる。それに対して、刹那は後ろに一歩とび、下がり体制を立て直す。二体の邪神の爪での攻撃を同時に剣で受け止める。


「軽いな。」


 邪神の攻撃を弾き返し、トドメをさそうとするが、そこに飛んでいる邪神の魔法が飛んでくる。


「初級の魔弾か。めんどくさいな。」


 剣で邪神の魔法を防ぐ。魔弾は初級の魔法で最も簡単な魔法だ。ただ、魔力を飛ばすだけ。そのため属性はないが誰でも使える。威力もあまり高くないし魔力の効率も悪いため使うのは下級の邪神くらいだ。しかし、それでも魔法であることに違いはないので、当たればそこそこのダメージを食らう。


「やっぱ、飛んでるやつが邪魔だな。先に仕留めるか。」


 そう呟いて、近くにあった壁まで走り、壁に向かって跳ぶ。そして思いっきり壁を蹴る。そのまま空中に浮かぶ邪神に向かって跳ぶ。魔弾を撃ってくるが剣で弾く。魔弾が効かないとわかり途中から別の魔法の構築を始める。


「だが、遅い。」


 邪神の魔法が放たれる前に剣を振り、邪神を斬り裂いた。


「二体目!あと、二体か。」


 二体目の邪神が動かなくなったのを、一瞬確認して前の二体を見る。

 そのまま着地し、目の前にいる二体に向かって走り出す。邪神は迫り来る刹那に気づいたらしいがもう遅い。


 二体の邪神の間を通り抜けながら二体とも斬る。


「三、四!」


 後ろを振り返ることなく走り出す。邪神が死んだのを確認する必要ない。


ただ道を切り開くのみ。


「もう、邪魔するなよ。俺はなるべく多くの人を救わなきゃいけないんだ。だから、こんなことで時間をかけている暇なんてない。 」


そう言いながらまた走る。


邪神と闘いながら移動しているため、かなり時間がかかっている。


「早く。」


焦りを感じていた。


ここには俺しかいない。だから、俺がここを守らなければならない。


そんな中、近くに中級クラスの邪神の魔力を感じる。


「ヤバいな。」


中級邪神がいるとなると、ここでの被害はかなり大きいものとなる。それに、中級邪神と戦ったら時間がかなりかかってしまう。今のうちに、他の人たちを見つけなければ。


刹那は中級邪神のある場所を避けて走る。すると、前から人が走ってくる。その背後には邪神が迫っていた。


無言で走る速さを上げて腰にある剣を抜く。


刹那はそのまま少女の横を通り過ぎた直後に壁に向かって大きく右に跳んで壁を蹴って邪神の上から叩き斬る。攻撃をもろに喰らった邪神はそのまま倒れて動かなくなる。周りには他の邪神の姿はなかったので動かなくなった邪神の胸のあたりに剣を突き刺した。


「怪我はないか?」


剣を突き刺したまま、少女に声をかける。少女は


「ありがとうございます。」


と頭を下げる。そして、頭を上げると


「あの、助けて下さい。」


と少女はそう言った。全力で走ってきたのか息が切れている。


まず一人目。見た限り他には誰もいないので、一人で逃げてきたのだろう。


「君はもう大丈夫だ。」


少女にそう声をかけると、少女は首を横に振って


「違うんです。助けて欲しいのは、他の人、高城先輩なんです。」


と言った。


少女から突然、夕陽の名前が出てきたことに驚く。


なんで夕陽が。夕陽は討伐部隊に選ばれてここにはいないはずじゃ。


「夕陽は何処にいる。」


そう少女に問いかけ居場所を確認して、夕陽の元に向かった。

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