第22話 魔法師の使命

刹那は剣を振り、追いかけてきた邪神を一掃した。


地面には邪神の死体がかなりの数倒れていて、邪神はまだ生き残っているが、追ってこれるような邪神自体はもういない。


「取り敢えず、一旦祐樹の元に行かないとな。」


邪神との戦いでかなりの時間使ってしまったため、今がどのような状態かわからない。


「無事に辿り着いたなら、いいんだけど。」


一回の割れた窓から廊下に降りる。


刹那が引きつけたことでこの廊下には邪神はいない。


何もいない廊下を少し進んで特別シェルターを目指す。特別シェルターの前に立つと、扉に触る。鍵などはかかっておらず、力を入れて無理やり横にスライドさせることで扉は開いた。


下級邪神程度ならば扉を破壊することしかしない為、横に開けるようにすれば破壊しか考えられない邪神は扉を開けることができない。そして扉が頑丈ならば破壊されることはない。


扉を開けるとその先には祐樹と花、由依が待っていた。祐樹は男と何かを真剣に話していたが、刹那の姿を見て、その話を辞めて扉の近くまで歩いてくる。


「良かった。」


花がそう呟いた。


「大丈夫だったのか。」


祐樹が心配そうに聞いてくる。


「ああ。」


そう呟いた。


祐樹たちの安否が確認できたので他の学年を確認する為に、もう一度戦わなければならない。


「入れよ。刹那。」


祐樹がそう言ってくれるが、入ることはできない。今、刹那はこの学校の生徒であるが、それ以前に魔法師であり、唯一与えられた邪神を斬ることができる力を使って多くの人を助けなければならない。


「いや、今は入れない。俺にはまだ、やるべきことがあるから。」


祐樹にそう言う。祐樹は今すぐやるべきことなどわかるわけがなく、


「何言ってるんだ?」


と返してくる。


「俺は、」


俺がその続きを言おうとする前に背後に邪神の気配がしたため、振り向き邪神を斬り裂く。


「危ないから、もう扉を閉めろ。」


と後ろの方でうるさい。


「ここで無駄な時間をかけなくないから。」


そう呟いてその場から離れようとすると、誰かが背中に手を当てて、それと同時に魔力が流れてくる。


「しょうがないなー。刹那くんは。どうせ、やらなきゃいけないことって、人助けでしょ?」


そう言ったその声は花のものだった。


「刹那くんが何をしたいか私はわかってるよ。祐樹くんには私が説明しとくから。私の魔力を持っていって。これしか私にはできないけど、魔剣師である刹那くんなら。」


そう言って、花は刹那の魔力を全回復させてくれる。


魔剣師、花からそんな言葉が出てくるなんて、そう思った。


俺のことを知っているのか?


そう聞きたかったけど、花に背中を押され、扉はゆっくりと閉じられていく。


「おい、刹那。」


ユウキが俺を呼び止めようとする。振り返ると、祐樹は扉の外に飛び出そうとしていた。だが、それを他の何人かで止めている。


囮りをしている時の刹那の姿を見て中にいた殆どの人が刹那がこの中で一番邪神と戦えると思っていた。


だから、他の人を助けようとしていることもなんとなく察していた。だから、祐樹を止めた。あの数分で刹那という人間が最弱であるという認識を変えたのだ。


「私にはできないことをやってきて。」


最後に花からそう言われる。そして、強く背中を押される。


「ほら、行った、行った。」


そう言われて、


「ああ、行ってくる。」


そう言って、閉まっていく扉の音を聞いた。

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