第21話 オトリ

ドアが破壊され、何体か邪神が入ってくる。


「来たか。」


 刹那はつかさず、ドアを破壊しゆっくりと入ってくる邪神との距離を詰める。


「道を開けろ!」


 とそう言って大きく横に剣を振った。


邪神はいきなりの攻撃を防ぐことができず剣をくらって、吹き飛ばされる。邪神は真っ二つに切り裂かれながら、後ろにいた邪神を押し出して部屋の外へ吹き飛ばされる。


「ぼーっとするな。今がチャンスだ!」


 そう言うと全員が動き出す。全員の態度が変わる。


「さて、行くか。」


 その一言を信じて全員が一斉に走り出す。


「祐樹。そろそろ行くぞ。ここからは油断なんて一瞬もできないからな。」


 ここからはミスをすれば誰かが傷つく。そんなことはあってはいけない。


刹那は自分にも言い聞かせるように言う。


「わかってるよ。」


 祐樹も真剣だった。


「この後はもしかしたらお前の力を借りるかもしれない。」


 祐樹は刹那にそう言われたのが意外だったらしく少しだけ驚いていたがすぐに真剣な表情を作った。


「俺にできることは少ないし。」


「そんなことない。さっきだって助けられた。だから、俺は祐樹に期待している。」


「俺に期待。」


祐樹はそう呟く。


「もう全員、止まるなよ。もたもたしてるとさっき吹き飛ばした奴が動き出すと思う。俺が合図を出したら気を引き締めて行け。」


 そう言って一人、部屋の外へと出る。外にはさっき吹き飛ばした邪神が動き出していた。


「来いよ。」


 邪神が飛びかかってくる。


刹那は鞘に入った剣で受け止める。それを全て剣で受け止めて、一気に振り払う。


「お前らの相手は俺だ。邪神どもついてこい。」


そう言って目の前の窓を目指す。走りながら、剣を鞘に納める。


「祐樹、目の前から邪神が居なくなったら、合図だ。一気に階段を目指せ。」


祐樹に振り返りそう伝えると、窓から飛び降りた。


「刹那!」


祐樹が名前を呼ぶ声がする。


心配しているのだろう。心配してくれるのは嬉しいが、今は自分たちが避難することに集中してほしい。そもそも、俺が飛び降りたのは自殺する為じゃないし、三階から落ちたくらいならばどうにか出来る。


落ちながら


「氷の衝撃」


と呟いて片腕を地面に向ける。


威力を下げ調整したそれにより、大きな音を立てて爆風が起こる。爆風により、落下の衝撃は抑えられ少し浮いてから地面に着地する。


鞘から剣を抜く。周りには無数の邪神が追いかけてやってきて刹那を覆う。


「最低でも、時間稼ぎをしないとな。」


そう言いながら、剣を邪神に向ける。そして、


「行くぞ。」


そう言って邪神目掛けて走り出し、目の前にいた邪神を速攻で切り裂く。一体斬られてからやっと邪神たちは刹那に襲いかかる。


一回、下がって邪神の攻撃を防ぎつつ、半回転して振り返り、後ろに迫った邪神の攻撃が届く前に腹を斬り、腰を捻ってさっき攻撃してきた邪神を攻撃をもう一度避けつつ剣で刺す。


そのまま、剣を滑らせて隣にいた邪神もついでに斬っておく。そして、もう一度距離を取る。


邪神が完全に死んだことを確認する前に、周りを確認する。殆どの邪神がせつなのことを狙っているが、何匹か別のところ、三階を目指している邪神が居た。


「ふざけんなよ。」


 全力で走るが間に合わない。


「祐樹!」


 叫んでももう届かない。さっき油断するなと言ったはずなのに。絶対に間に合わないと判断した刹那は三階に最も近い邪神に向かって剣を投げる。剣は邪神の胸を貫き、学内へ消えた。


無事かどうかがわからない為、すぐに向かいたいが周りを囲む邪神がそれをさせてくれない。


「まだ、何匹か残っているのに。」


邪神の攻撃を避けながら飛んでいるタイプの邪神を踏み台にして、三階へと向かう。


その時だった。


「中級魔法。風槍の雨。」


 突然、祐樹たちを追っていた邪神が無数の槍によって貫かれ三階を目指していた邪神が次々に落ちていった。


刹那は落ちてくる邪神を踏みつけて、3階まで上り、窓から中へと戻る。そこにいたのは由依だった。


「ありがとう。」


一言、由依にそう言う。


由依は刹那のことを見ると、


「姉さんの為だから。」


と言って避難組の最後尾に戻っていく。俺は壁に刺さった剣を抜き、もう一度、窓から飛び降りる。


今度は刹那を追って3階まで来た、邪神を切り裂きながら落ちていく時の速度を落としながら降りていく。


地面に降りると、


「後少しだ。」


と呟いてもう一度、邪神に向かって走った。

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