第20話 話し合い

「特別シェルターって本当にあるのか。聞いたことないぞ。」


誰かがそう言った。


「この真下って緊急時以外、確か立ち入り禁止じゃなかったっけ?」


他の人が説明をしている。


立ち入り禁止区域、どうりで知らないわけだ。


どうやら、俺は道に迷った時にその区間に間違えて入ってしまったらしい。


「転校してからすぐに、学園の案内があってその時に教えてもらった。それに今は間違いなく緊急時だ。入ってはいけないという制約はもうない。」


勿論嘘だが、これを信じてもらうしかない。


どうして、立ち入り禁止にしてるかわからないがあそこが一番安全だろう。あそこを教えたらあそこで魔法を撃つ人が出てしまうと思ったから教えなかったのだろか。それとも他に理由があるのか。


「全員でここから、一階へ向かう。今は三階だから二階降りなければならない。」


「それって、結構危なくないか?」


またしても反論してくる。


その気持ちはわかる。


俺だけだったたら余裕だったが、その数、数十人を連れて移動するなど危険すぎる。一回で全員行くのは無理そうだが、何度も行くのもそれはそれで大変だ。俺が下にいる間に何が起きるかわからない。


どれだけ魔法が使えていても実戦を積んでいないものが殆どだろうし、部隊の招集がかけられなかった人達。今は戦力として考えられない。


最悪、自分の身は守れるくらいの実力はあると思うから、数分持ちこたえることができる程度として考えておく。そうしないと判断ミスにつながるかもしれない。


「俺が先に出て、邪神を攻撃する。」


だが、すぐにそれを否定される。


「おい、なんで最弱が仕切ってるんだ!それに最弱じゃ、ちょっと戦っただけで魔力切れで戦えなくなるだろ!」


さっきまで冷静さを欠いていた人たちが落ち着き気持ちの整理ができたのか刹那の指示に不満を持っていた。


自分より弱いもの、最弱の命令は聞かないということだろう。特に刹那は最弱。一番命令されたくない存在。


普通、最弱から指示されることなんてありえないことだから。だが、今は指示に従ってもらうしかない。


「それは間違ってない。現に今、俺はもう殆ど魔力がない。」


どうすればいいのか。もう、剣で戦かえることを伝えるしか、でもそれも嘘だろと言われる筈だ。


今の一言で周りでは

「最弱なんかがでしゃばるなよ。」

「最弱に指示されたって助かる可能性低いだけじゃん。」

「何かあった時に最弱じゃ責任取れないだろ。」


などと文句を言うものが増えている。


さっきまで刹那のことを信じてくれたことが嘘のように。


「ちょっと待てよ、外の奴を倒してくれたのは刹那だろ!この中で一番戦えるのは刹那なんだよ!」


祐樹は怒鳴り声を上げる。周りの人たちはそれに怯み静まり返る。


「俺たちの話をちゃんと聞け!それから文句を言えよ。」


祐樹のお陰で全員が黙り込む。


これなら、話を聞いてもらえるか。


刹那は一歩前に出る。


「俺は弱い。だから、みんなに助けてもらいたいんだ。さっきも言った通り、俺は全員でここを乗り切りたい。これから言う、俺の作戦が駄目だと思うなら俺に従わなくていい。でも、聞いてくれないか。」


と頭を下げた。


これでも話が聞いてもらえなかったら祐樹と花、由依を連れて逃げた後、ここにいる邪神を倒す。


その間に犠牲になる人もいるかもしれないが、それはしょうがないものとしていいだろう。


頭を下げたのを見て、男は折れたようで、


「わかった。聞くだけ聞いといてやる。」


と言ってくれる。


最初に文句を言い出した奴がそう言うと周りの奴らも納得したのか文句を言わなくなる。


「刹那くん。それで、これからどうするの?」


「取り敢えず、ここから出るが出た瞬間に邪神が襲ってこないように俺が先に出る。俺がオッケーといったら出てきてくれ。もし何も言わなかったら、出てくるな。その時は俺に何かあった時だ。」


「俺たちは何もしなくていいってことか?」


「最初はな。俺もまだ戦える。最初が一番大事だろ?それくらい提案者の俺がやらなきゃな。」


「わかった。」


俺の意志を尊重してか、全員が賛成する。


どうせ、囮りにでもしようとか思ってるのだろうが、元々囮りをやるつもりなので何も言わない。


「その後、階段まで向かって全員走れ。俺が邪神をどうにかする。それでも対処出来なかったら、各自で自分の使える魔法を撃って邪神を倒してくれ。」


「お前が邪神をどうこうできるとは思わない。」


「わかってるよ。倒すせるかどうかは置いといて、時間稼ぎは出来るから、その間に行ってくれ。」


「俺らを囮りにして、逃げるのか?」


反感をかったらしい。


「囮りにする訳ない。むしろ逆だ。俺よりも魔法の使えるお前らを守る、その方が今後の為になる。」


「そうか。」


あっさり、納得してくれた。意外といいやつなのかもしれない。理解が早くて助かる。


「階段を降りてからはさっきと同じ。邪神がいないか確認して、そのまま特別シェルターまで走ってくれ。」


単純だが、それが一番いい。無駄に難しいことをしてもそれが出来なければ意味がない。それにもう時間が近い。これ以上、話はできない。


「悪くない案だ。それに一番無難だ。」


「なら、行くぞ。」


そう言った瞬間に部屋のドアが破壊された。

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