第17話 練習
あれから、一週間。
先生にお願いして、刹那たちは授業時間を特別練習のために貰った。すんなり承認してくれた為、こうなることを予測していたのだろうかと疑ってしまいそうだった。
練習を本格的に始めた祐樹はなかなか掴みが良く、少しだけ早く魔力を感じるようができるようになっていた。
このままいけば、あと三週間程度で初級魔法を発現まで少し時間がかかってしまうが自分の意思で使えるようになるだろう。
「さすが祐樹だ。いい感じだな。」
「そうか?」
「魔力がどんなものか大体わかっただろ。」
「まだ、ほんとになんとなくだけどな。」
祐樹は自分の手を見てそう言う。魔力がどう言うものかちゃんと分かり始めている。
「それでいい。魔力はエネルギーであって形あるものじゃない。そんなものを感覚以外でわかるようになるなんてトップクラスの魔法使いでもできないだろ。響谷未来は流石に除くけどな」
刹那に魔法を教えてくれた人、魔法使いの師匠と呼べる人はできていたのかもしれないけど、それ以外の魔法使い、祐樹の知っている魔法使いでそれができたのは響谷未来くらいだろう。
始まりの魔法師である彼女ならば、その存在がどんなものかわかっているはずだ。まあ、100年前の英雄なので、実際に知っていたかどうか確かめるすべはないが。
それくらい魔力をちゃんと把握することは難しい。自分の魔力を感じることができればもう一人前で、それ以上のことが出来たら、人外って呼んでもいいんじゃないかと思う。俺ですら感覚でしか魔力を知らないし。
だからこそ、この短期間に少し教わっただけでここまで出来るようになったことは素直に驚いている。
「なんか凄い事やっているんだな。」
「まあ、魔法が使えないくらいの人が魔法を使えるようになるくらいは凄い事だろうな。」
「そう考えると刹那って魔力が無いだけで、すごい魔法使いだよな。」
「魔力がなければ限界がすぐにくる。技術でも補えないのが才能なんだよ。だからきっとこれが完璧になれば祐樹もトップクラスの魔法使いになれるよ。魔力があれば可能性は広がるからね。」
「なら、頑張らなきゃな。お前がすごい魔法使いであることも証明するためにもな。」
祐樹はやる気に満ちあふれていた。
俺のことは別に気にしなくてもいいのにな。俺に剣があるし。
「やる気を出してくれたとこ悪いんだけど、一旦休憩だ。」
「まだ、やれるぞ。」
と祐樹は手のひらに魔力を集める。元気なのは見なくてもわかっている。
「わかってるよ。でも、休むことを大事だ。ちょっと休んでからの方が効率が良くなる。」
魔力が完全になくなってから休んで回復するより、少し残っている間に回復させる方が回復スピードは変わる。それに一日中魔力を使うことは体力的にも辛いところがある。
「お前がそう言うなら休むよ。」
若干渋々であったがそれでも納得してくれたようだった。
刹那たちは練習場の端に行きその場で座った。
何の話をするかな。全然話すことなんてない。休んでる間も魔法の話ってのも良くないと思うし。そんな感じ悩んでいると祐樹が話題を振ってくれた。
「そういえば最近、邪神の出現スポットが一つ発見されたみたいでさ、明日大部隊で攻めるらしいぜ。」
意外な話が飛んできた。
邪神の出現スポットが見つかった、これに関しては全く聞いていない。今まで邪神とは一人で戦っていたことが多かったが、誰が邪神の情報を連絡してこないないことは少なかった。それに邪神の出現スポットの話。これに関してはちゃんと確かめなければならない。
「詳しく教えてくれないか。」
「俺の知っている範囲でっていうか、聞いた話だけどいいか?」
「それでいい。」
これは確かめなきゃいけないことだ。これが事実ならここに来た一番の理由に反する。
「えっと、邪神が最近多く出現するようになった場所があるらしくてな、そこが邪神の出現スポットらしい。ちょっと遠いから、今日の夜から向かうらしいぞ。」
それだけで邪神のスポットっていうのは少し浅はかだが、邪神が多くいるところに大規模な部隊で攻めることに何も問題はない。普通のことだ。
そもそも、邪神がこちらに現れるのは、現時点で二つ。始めに開いてしまったゲートからの出現。そして、新しくゲートが開いき、そこからの出現。つまりゲートによるもの。
そして二つ目が突然変異体の新種の邪神がごく稀にゲートが発生していないところに現れるもの。
この二つ。それ以外は殺し損ねて逃すか、出現した邪神を見逃していたかだけだ。邪神が集まっていると言うのなら、ゲートがある可能性が高いし、ゲートが無くても邪神の生き残りを大量に倒せることはメリットでしかない。
新種であった場合でも即倒さなければ大惨事になることだってある。
「その邪神討伐部隊にこの学園からも多くの生徒が呼ばれたらしいぞ。」
ここの生徒。多分、大量の魔法師が集まる為、実戦を経験させられるからだろう。だが、ここの強い魔法使いがいなくなるとなるということだ。
もしものことがあった場合、本当に大丈夫なのか?
何処か嫌な予感がする。
気にしすぎか?
考え込んでいると祐樹は暇になったのか、
「もう、練習再開しないか?」
と尋ねてきた。
もう考えてもしょうがないか。
考えるのをやめ、
「やるか。」
と言って歩き出したのだった。
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