第16話 歴史

邪神、それは当然現れた。


 100年前のある日、何の前触れもなく大都市の空に亀裂が入りその周りの空間が歪み、そこから無数の邪神が進行してきた。人間は即座に邪神を倒すために軍を派遣した。しかし、人間が邪神に攻撃をしてもその攻撃が効くことはなくそのまま返り討ちに遭い軍はほとんど壊滅状態になった。結局その日、人間は何もできなかった。


その時はまだ魔法は存在せず、誰も邪神に対抗するすべはなかった。人間にでききることは武器による一時的な足止めと逃げることだけ。戦うことすらできなかった。何もできない人間は次々に鋭い爪によって切り裂かれ、建物は壊され、その下敷きとなり多くの死んでいった。どんな人でも構わず殺されていった。


邪神は見たことのない炎の玉や氷の刃などを何もないところから作り出し、それで人間を殺した。人々は恐怖し邪神に殺されないようにと逃げた。逃げ場なんてないのに。その頃には足止めなんて無意味だと皆が認識していた。


その都市から人が居なくなってやっと、邪神による初めての進行は終わった。


 しかし、その日以降、邪神が初めて進行してきた都市を中心に各地で邪神が現れるようになった。邪神の数は最初よりはかなり少ない数だった。だがそれでも各地で大きな被害が出てしまう。少ない邪神でも壊滅した町や村も多くあった。


ここままではいけないと、人々は邪神に対抗するすべを探した。そんなある日、人々は何もないところから何かを生み出す力について調べるようになった。それを自分たちで使うことができないかと。


結果を言えばできた。


今、魔法が存在するからそれは当たり前だ。しかし、最初のうちはなにもできなかった。魔力という存在はその時の人にとってみれば未知の存在感のだ。それに全ての人が魔法を使えるだけの魔力を持っているわけではない。


そして魔法が使えるようにならないまま、時間だけがすぎていった。


多くの人が魔法を調べることをやめていった。その時、多くの人が滅びるのは時間の問題だと思っていただろう。


 そうしているうちに今までにない数の邪神が攻め込んできた。


今回ばかりは全ての人が諦めただろう。


ここまま終わる。人は今日滅びてしまうと。


だが、そうはならなかった。無数の光が邪神を覆い消し去ったのだった。


絶望から解放した存在。


それが最初の魔法使い。魔法師、響谷未来だった。


彼女の魔法により次々に邪神は倒されていった。


そして、その日始めて人が邪神に勝つことができたのだった。


それからは未来によって魔法の使い方は広まり人は魔法を使えるようになったという。


未来が魔法を使えるようになった理由はわからない。わからなかったとしても彼女によって人は未来の名の通り、未来を掴むことができるようになったそれだけで良かった。だから、そこは誰も聞かなかった。


そして人が魔法についてちゃんと知ったことにより魔法使いのための学校、この魔法学園ができたのだった。


「これが私が習った邪神の歴史かな。」


夕陽は長い時間かけて丁寧に真剣に邪神について話してくれた。


俺の知っている内容だったが、少し浅い気がした。一つ一つの戦いについて詳しく習うわけじゃないらしい。


だが、戦場に行く前に習うには丁度いいくらいだ。邪神についての歴史を知ることで自分たちの存在がどれだけ人にとって必要なものか自覚させることができる。


「ありがとう。凄いわかりやすかったよ。」


「私でよければ他にも色々聞いていいからね。」


と胸を張った。


「ああ、また今度、頼む。今日はもう遅いから帰ろうか。」


夕陽はが歴史を熱弁してくれたことで外はもう真っ暗で周りにも人が多く居た。


「あっ、もうこんな時間なんだ。帰ろっか。」


夕陽は隣に並び、ちょっとした話をしながら自分の部屋に戻った。

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