第15話 ご飯

教室に戻った刹那は荷物をまとめて、寮に戻っていた。


「夕陽とご飯を食べるまで時間があるな。」


夕陽とご飯を食べる時間は昨日と同じなはずなので、まだ時間はある。剣の手入れは戻ってからすぐにしたため、今やることは特にない。


やることがないので、制服を脱いで、学園に来る前の戦闘服に着替える。服が殆どないため、これが私服だ。


「やっぱり、この格好が落ち着くな。」


着替え終わったのでベッドにダイブする。そのまま、今日のことを振り返る。そんなことをしていると、眠気が襲い眠りについた。


ふと目を覚ます。


「寝てたか。」


そう呟いて、ベッドから降り、大きく伸びをした。そこでやっと意識が鮮明になっていく。


「今は、」


そう呟いて、外を確認する。外は少し暗くなっていて、昨日夕陽と会った時間よりも遅いことが見てわかる。


「やば。」


急いで寮を出て、学食を目指す。


「夕陽が待ってたら最悪だ。」


間に合わなかった言い訳で、寝過ごしたなんて言いたくない。邪神による緊急事態の時のように全力で走った。


そして昨日、夕陽と会った場所についた。そこに夕陽がいた。


「あっ、いたいた。」


と夕陽は駆け足でこちらに向かってくる。


「遅かったね。刹那くん。」


「悪い、疲れて寝過ごした。」


適当な理由がなかった為、正直にそう答える。

怒られるよな。


「そうなんだ。良かったー。約束、忘れてなかった。刹那くん、来ないかもって思ったから来てくれて安心したよ。」


そう言う夕陽だったが、怒られると思っていたので、心配していたことに驚く。


「怒るんじゃないのか?」


夕陽はそれを聞いて、首を傾げる。


「なんで、私が怒るの?今日はバトルシステムもあったし、疲れたのは知ってるから、それで寝ちゃった刹那くんを怒るなんてする訳ないよ。」


「それでも待たせたことは悪いことだから、それくらいは怒ってくれてもいいのに。」


「私は別に怒らないよ。そんなことより、ご飯食べに行こ。ここで話してて、混んだら嫌だよ!」


夕陽は急かすと学食へと向かった。


「なんか、夕陽には敵わないな。」


そう呟いて夕陽の後を追って、学食に向かった。


昨日同様、メニューが多くて選べなかったのでおすすめを頼み、昨日と同じ席に座った。そして、二人で


「いただきます。」


と挨拶してご飯を食べ始めた。ご飯を食べている間、俺たちは特に何も話すことはなかった。ご飯を食べ終えて水を一杯飲む。


コップを置くと、夕陽が話しかけてくる。


「そういえば、昨日の夜、この近くに邪神が出現したらしいよ?」


「ああ、知ってる。」


その邪神と戦ったため、勿論知っている。


「刹那くんも聞いたんだ。その話。その邪神、うちの学生が目で追えないくらいの氷の魔法を撃って倒したんだって。凄いよねー。」


夕陽は邪神討伐をする魔法師であることを知っている。だから、隠す必要はないので昨日のことを正直に話す。


「多分、それ、俺のことだと思う。昨日、夕陽と別れたあと、邪神の反応があったんだ。すぐに向かったら邪神が反応通りいたから、それを倒した。この近くで、それ以外の邪神の反応はなかったから、俺の話で合ってると思う。」


「へぇー。刹那くんの話だったんだ。やっぱり、凄いね。」


「後始末とかは丸投げしたから、そこら辺は魔法師失格だけど。」


あの後どうなったのかわからないけど変な話は聞いてないので何事もなく片付いたのだろう。


「後始末は学生だから、出来なかったって話になってるよ。」


「そんな話になってるのか。」


都合の良い解釈だ。魔法師の戦いは美化されやすいが昨日のも多少、美化されている。


「後始末は、水島美嘉さんって言う魔法師がやってくれたみたい。」


「美嘉がやってくれたのか。」


水島美嘉は刹那と同じ邪神討伐をする高レベルの魔法師だ。範囲水魔法を得意とし、何度も一緒に戦った仲間。そんな彼女が後処理をしてくれたのなら、問題が起こることはないし心配は要らない。それくらい信用している。


「水島美嘉さんと知り合いなの?」


「ああ、一緒に戦ってた仲間だよ。」


邪神討伐で親しい人が少ないが、魔法を教えてくれた人、師匠の知り合いということもあり仲は悪くない。


「へぇー。私、魔法師のことは詳しくないからわからないけど、凄い人なんだよね。」


「ああ。俺よりは有名で強い魔法師だよ。彼女と一緒なら大抵の邪神討伐で困ることはないな。」


刹那は魔法師の間では有名だが、一般的にはそうではない。基本、有名になっているのはかなり凄腕の魔法師たちである。美嘉もそこそこ有名でファンもいるという話も聞く。


「私もそれくらい刹那くんに信頼してもらえるように頑張らないと。」


「頑張れよ。」


夕陽のことをまだわからない為、俺はそれしか言えなかった。


刹那たちはお互いに無言になる。


そして、昨日と同じように夕陽が口を開く、


「話はすっごい変わるけど、刹那くん今日はどうだった?」


「普段と違うから疲れたかな。」


「そうだよね。慣れるまで大変だよね。何か、聞きたいことある?」


夕陽は善意でそう聞いてくる。


聞きたいことは何個かある。祐樹に聞けなかった邪神の歴史とかどこまで習ったか聞きた。


「夕陽。邪神の歴史って習ったか?」


「うん。勿論、習ったよ。」


「なら、それを聞きたい。俺に教えてくれるか?」


「えっ、刹那くんなら、それくらい知ってると思ったけど。」


夕陽は少し驚いている。


「知っているよ。ただ、この学校ではどんなことを習うか興味があるだけだよ。」


「そっか。なら、いいよ。一から教えてあげる。」


そう言って邪神と人間の歴史の話が始まった

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