第14話 ドッキリ

刹那は疲れて帰った祐樹と別れて先生の元へ向かった。時間まで作って貰ったので報告はしておく必要があるためである。


「佐藤くんなんですけど、もう大丈夫です。時間を作っていただきありがとうございました。」


とお礼を言う。


「無理はしてないですよね?」


「勿論、見てわかる通りしてないですよ。」


先生は身体を下から上までしっかりと見て何処にも怪我ないか確認した。


「本当みたいですね。」


「それでは、俺はこれで。」


必要な報告は終わったので教室に戻ろうとする。


「黒崎くん。これからも佐藤くんのことをよろしくお願いします。」


先生はそう言って頭を下げた。


言われなくても祐樹が魔法を使えるようになるまで指導するつもりだ。


「任せてください。」


そう言って寮に戻る前に教室に戻るために歩き出した。


教室までの道のり、すれ違う人の殆どが、刹那の方を見ると刹那には聞こえない小さな声で、刹那を避けながらなにかを話している。


文句を言われるのはいいのだが、陰口をされるのはあまり気分が良くない。


「ハァ。」


ため息をつく。


その直後、背後に誰かの気配が迫っているのを感じた。


「誰だ。」


殺意はないが、嫌がらせの可能性はあるため、咄嗟に後ろを振り返る。


昨日襲って来た奴とは違う感じの気配だった。そして、振り返った先には花がいた。花は突然、刹那が振り向いたことに驚いて、


「わっ。」


と声を出しながら一歩後ろに下がる。


「あと、ちょっとなのに、バレちゃったかー。」


「何しようとしてたんだ。」


と聞く。


声をかけてこないということには何か理由があるはずだ。何をしようとしていたかは気になる。


「驚かそうかと。」


即座にそう返される。殺意も感じられなかったので嘘は言っていないと思う。


「それは無理だな。」


素人のドッキリで驚くほど、索敵能力は弱くない。夕陽の時は考え込んで驚いてしまったけど。


「えー、なんでー。」


「俺はよく不意打ちとか喰らってたからそういうのには敏感なんだよ。俺のことを背後から驚かせたいならかなりの努力が必要かもな。」


それを言われて「ぐぬぬ。」と悔しがる。


「なら、いつか絶対成功させるからね。」


ものすごくやる気を出す花。


絶対に驚かせると決意しているみたいだ。


それにしても、この先何度も来るのか。毎回毎回、気をつけなければいけないとなるとめんどくさいから今回、引っかかっておけば良かったと思う。


「まあまあ、そんなことは置いといて、刹那くん、さっきのすごかったねー。かっこよかったよ。」


そう言ってくる。


多分、こっちが本命の話だ。


「さっきのって、火の玉のやつか?」


「それ以外ないでしょ!」


火の玉のやつで伝わったので、かなり最初の方から見られている可能性がある。見られていても何も問題はないけど。


「どこから見てたんだ?まさか、最初から…。」


「最初からじゃないよ。私が見たのは刹那くんが叫んだ時くらいからだよ。流石にあんなに大きな声で叫んだらみんな注目するよ。」


そういえば、かなり大きな声で叫んだからな。


「じゃあ、剣で魔法を晒したってところから見られてたってわけだ。」


「うん。あんなの見たことなかったし、あれはすごくかっこよかったよ。」


「そうか?」


見たことないというか、まず剣をあんな感じで使う人がいないから見れない。あれで剣の必要性がわかってもらえれば嬉しい。


「逃げろとか言われたのに逃げられずなかった人たちを刹那くんが守った。それがかっこよくないわけないよ。」


そんなことでかっこいいとか思われたら戦場にいる人みんなかっこいいってことになると思ったが、殆どみんなかっこいい為、当てはまるかもと思ってしまう。


「花も俺のことかっこいいと思ったってことだよな?」


それは友達として嬉しいことだ。


「うん。」


「そっか。花にそう思ってもらえて嬉しいよ。」


とそう返す。


花はそれを聞いてえっ。と顔を赤く染める。


「そ、そんなこと、言わないでよー。」


と明らかに動揺している。


「どうした?何か、変なこと言ったか?」


何も言ってないんだけどな。


「なんでもないよ。じゃ、由依のところに行かないとだから、じゃあね。また、明日。」


花はそう言って駆け足で教室に帰っていった。刹那はそれをただ見ているだけだった。


「何だったんだ?」


そう呟いて、教室に戻った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る