第13話 魔力
先生に与えられた時間を無駄にしないように先程いた場所に戻った。先生は戻ってきた祐樹を見て何処かホッとしているようだった。
「練習する前に一ついいか。これまでの授業では何を習ったんだ?」
祐樹が座学で習ったこと。魔法を使うために必要な知識をどれだけ持っているか知っておきたい。それによって教える内容が変わってくる。
刹那の質問に祐樹は一つ一つ思い出しながら答えていった。
「えっと、魔法の使い方。種類。魔法の仕組み。あとは普通の学校と同じかな。ただ邪神が進行してきたあとの歴史や邪神についての説明などは詳しく習った。」
魔法を使える人の一般常識程度の知識のみのようだ。個人的に邪神の歴史とかは聞きたいが、指導に全く関係ないのでスルーする。今は魔法を使えるようになる方法を教えなければ。
「今日からはまず大きく分けた中の一つ、魔力の調整からだな。」
「魔力の調整?そんなことできるのか?」
聞いたことないことに祐樹は疑問を持った。
予想通りの反応だな。やはり魔法を使うための方法くらいまでしか習っていなかったみたいだ。
「ああ、祐樹の魔法が制御できないのは魔法にかかる魔力が多すぎるからだ。魔力を調整することができれば祐樹が撃とうとしている初級魔法はちゃんと使えるようになる。」
それを聞いて、
「本当か!」
と祐樹は驚く。
「ああ、本当だ。俺が使えるようになったのも魔力の調整をして余計な魔力を使わないようにしたからだ。だが、これが一番の難所だ。ちゃんとできるようになれば一発を強くしたり、魔法の回数を増やすことができるようになる。」
「そうなのか。魔法は魔力を込めてただ撃てばいいと思っていた。」
かなり複雑で長い話をしたので全く理解できていないかもしれないと思ったがその心配は要らなかったようだ。
「多くの人がそう思うだろうな。なんせ魔力を込めれば魔法が使える。邪神相手にはそれで十分だからな。それ以上のことはみんな考える必要はない。まぁ、これは魔法が使えればの話だけどな。魔力が殆ど無いのに魔法が使いたいとか思うやつとかあとは魔法を使いこなせている人しか気づかないことだよ。」
刹那自信も初めはどうすれば使えるようになるか色々試した。多くの魔法使いを戦場で見て違いを確認したり、魔法を使えるように師匠に聞いたり。それで本来自分では使うことができない魔法を使えるところまでたどり着いた。
「魔力が一般人レベルの俺が初級魔法を三回も使えるようになるくらい魔力の調整は大切だ。やりたくないなら、いつでもやめてくれていいからな。」
その言葉は祐樹の更にやる気を出したようだった。
「やめないよ。やるって言ったこともやらないんじゃ強い魔法使いにはなれないだろうからな。」
さっきとは全く違う。これなら最後までやり遂げそうだ。
それにしても、魔力がなくて悩んでた俺が魔力があるやつに教えるなんて考えられなかったな。
「じゃあ、始めようか。まずは自分の身体の魔力を確認してくれ。」
自分の魔力で魔力がどのようなものなのか掴む。そうすれば調整も楽になる。
「これができなきゃ調整なんてできないぞ。」
今の刹那は自分の魔力くらいわかってる。
バトルシステムの時は、あの時持っていた残りの魔力量はわかっていた。調整してもう一回使いないか試したんだが、やはり駄目だった。流石に半分の魔力で使えるような魔法はないらしい。今だって、どのくらい回復しているかちゃんとわかっている。それができないと、邪神と戦う時の作戦を考えられない。
まあ、魔力をちゃんと意識しないとどれくらい残っているか忘れるけど。
祐樹はそれを聞いて自身の魔力を感じようと目を閉じる。
「できない。」
しかし、感覚で魔法撃ってた祐樹は全く魔力というものを感じられていなかった。そもそも、みんな初級魔法と中級魔法は基本調整しなくても撃てるため、魔力なんて感じることは少ない。
そもそも魔法を撃つ時、基本的には手順が決まっている。初級魔法と中級魔法は魔法の名前を考え唱えれば自然と魔力が集まり魔法が撃てる。何故かはまだわかっていない。
だが、魔法の使えるものは皆、感覚でこれを使えるようになる。だから調整なんていらない。無理なら無理やり魔力を詰め込めばいいわけだ。
唱えて使えない魔法は自分の力だけでは使えない魔法。無理に使ったとしても、相性が合わないため、魔力から魔法にする間の効率が悪すぎて魔力をかなり持っていかれる。
祐樹の場合、魔法を発現する時の魔力が高いため魔法が強くなりすぎる。
使っている祐樹はそこまで高い魔法を制御できてないのでこうなるのは普通なのかもしれない。もちろん、このままいけば魔法は発現できても使うことはできない。魔法を使うことができても祐樹が言っているように時間がかかるし、自分の魔力を発現までの過程で無駄に消費している。それじゃあ、とても魔法を使えているとは言えない。
「いつも魔法を撃っている時、魔力のことを考えてないからわからないんだよ。だから威力も下げられない。魔力ってのは自分の中を流れるエネルギーだ。魔法を発現せる時に何かがなくなる感じしないか?」
「言われてみれば、少し感じるような感じないような。」
これはわかっていない人の反応だ。魔力は思っている以上にはっきりとしている。
魔力は喉を通る水のようなもの?なのかもしれない。意識すればよくわかるが意識しなければあまりわからない。
「わからないか。なら、目を閉じてみろ。」
祐樹は言われた通り大人しく目を閉じる。
「いいか。今から祐樹に魔力を少し与える。」
そう言って祐樹の肩に手を乗せる。
「初級魔法。魔力贈与」
初級魔法で触った相手に魔力を与えられる魔法。刹那の持つ唯一の支援魔法。
そもそもこれは魔力の調整ができるようになれば誰でも使える魔法だ。ちゃんと調整しないと魔力が多い人でも無駄になって魔力切れになる。
使えたとしても効率もあまり良くないため、実戦では使えない。実戦で使える魔法ではない。
刹那は祐樹に魔力を流す。今持っているやつ全部だ。初級魔法一回分より少ないくらい。全部流さないとわからないだろ。
「何となくだけどな、わかったかもしれない。」
俺から送られたものならば何となく魔力がわかるかもしれないと思ったが、予想通りほんの少しだが理解してくれたみたいだ。
「多分それだ。なら次に移るか。」
わかってくれてなくても今日はもう使えないため、わかってなくても進める。
「次だ。次は魔力を外に出してみろ。魔法としてじゃないぞ。いいな。」
祐樹は何度も出そうとする。
祐樹の手の先に魔力が少し出ているのを感じるがまだ意識できていないな。
「今日はそれが終わるまでやるぞ。」
そう言うと、
「すぐ終わるぜ。」
自信ありげにそう言って祐樹はひたすら魔力を出そうとした。
〈三十分後〉
「やっぱり、終わらなかったな。」
「無理。どうすればいいんだ。」
魔力を出すことはそれなりにできるようになった。だが、できたのは祐樹の魔力が切れるギリギリの時だったため、その後何をしようとできるわけなかった。
出すことはできても魔力を感じることはできていないので魔力切れすらわかっていない。まだまだ魔力を掴めてないということでずっと無意味なことをやらせてたわけだ。
流石に今日はもう無理だろ。
「今日は終わりだ。祐樹は魔力切れにも気づいてないようだからな。」
「魔力切れになってたのか。通りで魔力出ないわけだ。気づかなかった。」
「これ以上はできないから、終わりだ。」
「わかった、今日はもう帰って休むよ。この後、授業もないし。」
本当に疲れた様子の祐樹。流石に魔力が尽きている今日はもう寝たいだろうな。
「また、明日、よろしくな。」
「任せろ。一週間で何とかする。じゃ、明日な。」
そう言って祐樹と別れた。
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