第12話 説得

刹那たちのせいで突然授業は終わり、自由時間ができた。


終わらせた理由は、いつでも魔法練習をやめられるようにするためとさっきの事故のことで全員の集中力が欠けてしまったからだ。


刹那は祐樹が練習を続ける気がなく終わりと聞いて教室に向けて歩いていたので、それについていく。


「祐樹、大丈夫か?」


「何がだ。」


「魔法のことを恐れてないかってこと。」


それを聞いた祐樹はさっきよりも明るく振舞おうとする。


「恐るわけないだろ。俺には魔法は使えないってだけで、怖いものじゃないよ。」


バトルシステムの話した時と同じような暗い顔をしながらもそれを隠そうとぎこちなく笑う。


やはり精神的ダメージがあるみたいだった。


「本当か?ちなみに俺は少し、怖いと思ってる。」


少しでも今の雰囲気を変えようと試みる。


「嘘だろ?」


祐樹は冗談だと思っている。


「あんなの怖いに決まってるだろ。簡単に人を殺すことができるんだから。」


祐樹は黙り込んでしまう。


「だけどさ、魔法を使わないと邪神は殺せない。それによってもっと多くの人が傷つくかもしれない。俺はそれの方が嫌だし、魔法を使いこなせれば自分が傷つけるよりも自分が助ける人の方が多くなる。」


祐樹はもう一度俯くと何も言わない。あと少し、嫌になったものはもうやらないだろうだが、やる理由を持てばもう一度やろうと思えるはずだ。


「だから、俺は魔法を使う。祐樹には魔法を使わなきゃけいない理由ってのはないのか?」


魔法を使わなければいけない理由、それを持てれば魔法を使う時、恐怖よりも使命感が勝つ。だからこそ、それを持つ必要がある。祐樹はこの学園に来てワーストだったのにも関わらず学園やめなかった。そこにはちゃんとした理由があるはずだ。その理由が魔法を使えるようにする力となる。


「魔法を使わなきゃいけない理由。」


祐樹は考え込む。


「俺にはあるよ。使わなければならない理由じゃないけど使う理由。今、邪神によって多くの被害が出ている。邪神を殺すことは魔法使いにしかできないことだ。だから、俺にも魔法が使えるなら少しでも多くの被害をなくしたい。それが俺の魔法を使う理由。祐樹はそういうのないのか。」


祐樹はそれを聞いて何かを感じたのか、顔を上げる。


「今は理由なんてない。でも、それが見つかるように努力して強くなりたい。それが理由じゃ駄目か?」


強くなりたい。その思いを今、持てれば魔法の恐怖は乗り越えられるだろう。


「駄目じゃない。それも立派な理由だ。」


祐樹の肩に手を乗せる。そして、


「これでいいのか。」


と祐樹は呟いた。


「魔法については俺がちゃんと教えてやる。最強の魔法までは教えてやれないけど、魔法の制御や効率のいい魔法の使い方とかを教えることはできる。最弱だけど、いや最弱だからこそ教えられることを全部、教えてやるよ。」


使えなかったからこそ、誰よりも基礎を深く学び魔法をよく知った。俺だからこそ教えられることなのかもしれない。


祐樹に手を差し伸べる。


この手を祐樹が払ったらそれまでだ。無理に使わせなくてもいい。それに無理やり使わせたところでろくに魔法は使えない。


「俺に魔法を教えてくれ。」


刹那の手をとり強く握り、そう言い放った祐樹は決意を決めたまっすぐな目をしていた。


「言っとくけど、死ぬほど辛いこともあるからな。ちゃんと覚悟しとけよ。」


「えっと、やっぱりやめようかな。」


刹那の冗談に嫌な顔をしてそんなことを言う。


「ふざけるなよ。さっきのはなんだったんだよ。それだけの意志だったってことか?」


笑いながらそう言う。


「嘘だ。わかってるよ。どんなことだってやってやるよ。」


そう言って祐樹は決意する。


こうして祐樹の魔法の練習が始まったのだった。

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