第11話 反省

「大丈夫だったか、刹那。」


祐樹がこちらに歩いてくる。


祐樹は周りを見て誰も怪我していなかったので火の玉と対峙した刹那の心配をする。


刹那の背後にいる生徒はまだ動けずにいた。


「ああ、どこも怪我してないし、なんとかなったな。」


剣を鞘にしまい、手を広げどこにも怪我がないことをアピールする。


刹那は後ろの生徒を見て、


「君達も大丈夫か?」


と問いかける。その問いかけに後ろの奴らは頷いた。


まだ、動かそうではなかったが怪我人はいなかったので間に合ったみたいだ。


「俺のせいで、すまないな。」


祐樹は刹那の前に立ち頭を下げた。


「しょうがないことだったし、俺は別にどうでもいい。謝るならそっちにいるやつらに謝ってくれ。」


そう言われた祐樹の後ろの生徒まで謝りに行った。


そもそも魔法を使わせた俺も悪いし。


そうしている間に先生が刹那たちの元へやってくる。


あれだけ叫んでいれば気づくよな。流石に、怒られるかな。


「黒崎くん。何があったんですか?」


先生に怒る様子はなく心配しているようだった。


「祐樹くんが魔法の制御ができなくなってしまって…。」


「そうですか。それで、その魔法をあなたが吹き飛ばしたということですか?」


最後の方は見られていたようだ。あそこで失敗していたらクラスでの扱いがさらに悪くなるところだった。それに魔法を斬っていたらその爆風とかで説明が物凄く大変になっていた。


「見ていたんですか。一応、晒して、誰にも怪我がないように動いたんですけど、駄目でしたか?」


「結果的に無事でも駄目なんですよ。あなたが怪我するかもしれなかったんですから。わかってます?」


最初はどうやって対処するか決めてなかったし、怪我する可能性はなかったわけじゃない。結果的に最善の行動が取れただけだ。


「すみません。」


ただ謝ることしかできなかった。


「ですか、誰にも怪我がなかったので、今回はそれが理解できれば許します。」


生徒と思いの優しい先生なんだな。生徒の安全第一。そんな考えを持つ先生の前では無茶しないようにしておかなきゃいけないなと思った。


「それとは別で、黒崎くん、ありがとうございます。君がいなければあの魔法が誰かに当たっていて怪我するかもしれなかったので。こういうのは本当は先生であるわたしが対処しなければいないけなかったことですから、生徒に助けて貰うなんて。」


感謝されるようなことをしたわけじゃない。これはペアの俺のミスでもある。祐樹のことをよく知っていれば暴走することはなかったかもしれないし、もっと早く対処できたかもしれない。


「先生は全員をずっと見ることはできない。だから、俺たちがそれを補うんですよ。」


「ありがとうございます。でも、必要な時は先生を頼ってくださいね。」


「はい。」

 

そう返事をした。


刹那との話を終えた先生は刹那の後ろで他生徒に謝っている祐樹の方を見て、歩いて行き、それについて行く。


「黒崎くんは大丈夫として、佐藤くん、次からこんなことはないように気をつけて下さいね。あまり無理な魔法の発現は自分だけでなく周りも傷つけてしまうものですから。」


「すみません。」


と注意された祐樹は深く頭を下げた。


祐樹の表情は分からなかったがあまり良くなさそうだ。


先生は祐樹の心に負荷がかかることを避けできるだけ必要なことだけを伝えた。


これで怒られて、トラウマをもってしまって祐樹が魔法を恐れて使えなるってのが最悪のパターンで、自分の魔法は凶器だと思ってしまうこと、その気持ちが魔法の発現を妨げて使えなくする。邪神と戦っていた時にもそうなる人が何人かいた。そうなってしまったらもう一生、魔法は使えなくなるだろう。魔法は他者を傷つけてしまうかもしれないと言うことを身を持って感じた祐樹がまだ、魔法を恐れていなければいいが。


先生は刹那の方に振り返る。


「では、黒崎くんは今日は休んでください。魔法を止めたのですから、それなりに疲れたでしょう。」


疲れていない訳ではないが、流石に、はじめての授業からサボるなんてことはしたくない。それに早めに祐樹の気持ちの整理をしてあげたい。


「僕はまだやれますよ。魔法は撃てませんが。」


「魔法が撃てなけいのならばなおさら、休んでいて下さい。休んでいた方が魔力も回復しやすいですし。」

 

先生の言っていることは事実だ。しかし、休んでいた方が回復しやすいが、休んでも回復までの時間はもう少しかかる。授業終了までにはギリギリ間に合わない。


「大丈夫ですよ。魔法は撃てませんが祐樹くんに魔法のコツを教えることはできると思いますし、また魔法の制御ができなくなった時にすぐに対応できるようにはしときたいので。」


俺がどうしてもと思いを伝えたことで先生は折れてくれたのか、ため息をついて、


「わかりました。では、佐藤くんのことをお願いします。私よりも黒崎くんの方がなんとかできそうですからね。でも危ないことだけはしないでくださいね。」


とそう言って無茶をしないようにと念を押した。


先生に頼まれる前からなんとかする気だ。


刹那にそう言った後、先生は生徒の中心に立つ。よく見ると殆どの生徒がもう、此処に集まっていた。


「では、これで授業は終わりとします。あとは此処で自由にやっていて下さい。先生が一応、時間までは見ますが危ない魔法は禁止ですよ。では今日は解散。」


そう言われて初日の授業は終わりとなったのだった。

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