第9話 授業

「さて、黒崎くんの実力もわかりましたので授業を始めていこうと思います。」


先生はそう言って、授業の内容を話し始める。


祐樹達と話し終えた刹那たちは机について次の授業について聞いていた。


さっきは全く聞いていなくて、必要な情報を聞き流していたので今度はしっかりと聞いておく。


これからはじめてのちゃんとした授業が始まる訳だが、俺の実力がどれほどのものか確認するためだけにさっきの時間を使ったと言うのには驚きだ。


それに、わざわざ二年生全員が見れるようにする必要はなかった。まあ、特別な転校生だから先生達も期待していたのだろう。あんな結果になってしまったけど。


「さて、邪神や魔法についての座学はある程度、一年生で学びましたので今日からは実技中心に学びます。」


あれ、もう座学の授業はないのか。魔法については理解しているし、あまり興味ないけど、どんな授業かは知りたかったな。


今度、誰かにどんなことを学んだか聞こう。


「では外で授業をやりますので皆さん魔法練習場に集まってください。荷物はメモ用紙と筆記用具くらいでいいですよ。」


先生がそう告げて教室を出ていくと、刹那はペンを一本持って、祐樹の机をを見る。そこにはもう祐樹はいなく、


どこだ?


っと辺りを見渡すともうすでに俺の近くまで歩いてきていた。


「行くぞ。刹那。」


「わかってるよ。今行く。」


そう言って祐樹の元へ駆け寄る。そして一緒に練習場に向かった。


「これから何するんだろうな。」


祐樹がそう尋ねてくるが、始めての実技授業。授業を受けたことのないので全くわからない。


「俺が分かるわけないだろ。今ではこう言った実技はなかったのか?」


「あったけど、基礎中の基礎しかやってないな。初級魔法の発現の仕方とか、自分の適正属性魔法を調べたりとかかな。」


魔法は自分に適した一つの系統の魔法を上手く使えるようになる。その系統のことを属性といい、属性には氷や火、風など十程度の種類がある。魔法はその属性の中で形や現象を変えて使うことができるものだ。


俺の使う魔法もそうだが、その変化の難易度によって初級魔法、中級魔法、上級魔法に分けられる。


俺だったら氷の魔法中心なように基本的に魔法は一人につき一つの属性を中心に使うようにすることで効率は良くなるが、中にはいくつかの属性を使って暴れている魔法師もいる。


そして自分の適正属性魔法というのは自分の一番使える、使いやすい魔法の系統ことを表しているわけだ。


「そうか。」


俺も適正検査はやったな。

氷って出た時は嬉しかったけど、思った以上に扱いづらくて他の系統にしたいと思ったっけ?


と昔を懐かしむ。そんな俺のことを知らない祐樹は話を続ける。


「なんせ、俺たちは基礎もまともにできないからな。それを知っているから学園もまず座学を多めにしてたんだろ。他のクラスは実技もそこそこやってたらしいけどな。まぁ、そのせいで更にクラス間の差が広がってしまったんだけど。」


「そうだったのか。なんかこの学園のやり方が少しだがわかってきたよ。」


この学園のやり方はたぶん強いものにはどんな邪神にでも対応できるように、早めに更なる高みを目指させ、弱いものには最低ライン、下級邪神一体を倒せるくらいまでの強さを手に入れさせる。


だからこそ、同じレベルの魔法使いを集めて、実習クラスと座学クラスに分けたわけだ。結構効率がいいのは分かる。だが、それが実力による格差を生む。それも踏まえた上での授業の割り振りなのかもしれないが。


そんなことを話しているとすぐに魔法の練習場に着いた。


辺りを見渡すしても誰もいないことから今日は他のクラスなしで俺たちだけが使うらしい。


「はい。ここに集まってください。」


と先生の声が練習場の中央から聞こえる。刹那たちはそこに向かって歩いて行った。


先生は全員が揃ったのを確認して、指示を出す。


「まずは二人ペアになって。」


二人ペアか。そう言われて隣にいる祐樹の顔をちらっと見る。祐樹はこっちを見て笑っていた。


ペアワーク。


友達がいないので祐樹が組んでくれなかったら一人になる。


「心配しなくてもいいぞ。ちゃんと俺は刹那と組むから。」


俺の心配を読み取ったのか、そう祐樹は言う。


「ありがと。祐樹に断れたら一人になるのは確定だから。」


いや、先生と組むことになるかもしれない。


どっちにしても、先生とでも、一人でも、自分の限界は近いため、大した意味のない実習になる。


祐樹に誘われて一安心する。


「いいってことよ。俺はお前の魔法を近くで見てみたいと思ってたし、俺のペアはいつも違ったからお前と組めれば俺も相手のことを理解した上で魔法を使えるからな。」


「それなら、俺の魔法の限界を早めに見せなきゃな。」


限界を見せると言っても魔力はもう限界に近いからこれ以上はあまりできないけど。


「魔法の限界か。バトルシステムの時のが限界じゃなかったのか?」


まぁ、それが当然の反応だよな。


刹那の魔法の限界。魔力量と使える魔法の限界。魔力の限界はバトルシステムでわかっているだろうから後者、魔法の限界だ。


刹那の使える最強魔法である、氷の衝撃は祐樹たちには見せていない。これも一応見ておいて欲しい。


「あれは俺の魔力量の限界だ。まだ、祐樹たちには見せてない魔法が今の俺の限界だよ。」


「そうか。それは楽しみだな。」


そして、二人ペアが全員できたのか、先生は魔法実技の指示を出し始めた。


「じゃぁ、まずは初級魔法をお互いに一回ずつ撃ってください。」


初回の授業なのでこのくらいのレベルだということは予想していた通りだった。


魔力は殆ど残っていないため、後はもう氷の弾丸、一発くらいしか撃てない。


さっき限界を見せるとか言ってたけど、今日、授業でそれを見せることはできそうにない。


今日は祐樹の魔法を見るだけで終わりそうだな。


「何黙ってるんだ? 初級魔法撃つぞ。」


一人考えていると祐樹は魔法を撃つ準備に入っていた。


「ちょっと待ってくれ。期待させて悪いんだけど、さっき魔法を使ったせいで今、魔法が使えないことを忘れていた。今日はさっき撃った初級魔法を今、撃ったことにしてくれないか?」


何が限界だ!

恥ず!

カッコつけて魔法の限界見せてやるなんて言わなきゃ良かった


と後悔する。


「そっか、そうだよな。さっき使いきったもんな。なら、その限界とやらは今度見せてもらうとして今日は俺の魔法を見てくれ。」


そう言って祐樹は俺と距離をとる。


そして、


「初級魔法。火の玉」


と魔法を発現させようとした。

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