第7話 バトルシステムと擬似邪神

バトルシステム

それはこの学園の生徒の強さを測るもの。魔力値と擬似邪神の討伐数に応じてこの学園でのランキングをつけられる。つまり、弱くても魔力値が高ければランキング上位は狙えるし、邪神を多く倒せば魔力値が低くても狙える。才能と実力の試験。


これが俺が学園に来たいくつかある理由の一つ。


擬似邪神と闘える唯一のシステムがこの学園にはある。


「これがバトルシステムか。」


目の前にある、透明な壁に覆われた何もない広い部屋に感心する。


「ここで、邪神と闘うのか? この何もないところで。」


「そうだな。部屋に入って始め!って言われたら邪神が出でくるからそれを倒せばいいだけだ。」


それなら、俺の剣は通用するかもな。


部屋の周りには多くの椅子が部屋を囲むように並んでいる。先に来ていたクラスメイトはその椅子に座って試合が始まるのを待っている。


「まさか、見られながら闘うのか?」


何となく聞いてみる。


「部屋の中からは見えないようになってるよ。大きな声とかは聞こえるけどな。」


まあ、実戦では人を守るため見られながら戦うこともある。見られながらは戦えないなんて言ってたら実戦はやっていけない。


「そうか。祐樹はやったことあるのか?」


昨日来たばかりの人間がやるくらいだからやってるのは当然だと言ってから気づく。


「ああ、もちろん。やったさ。でも。」


そのあとに何かを言おうとする祐樹の顔は悔しそうで、暗かった。何か嫌なことがあったような感じがした。


話を変えるために、


「そっか。俺たちも早く座ろうぜ。」


と提案した。


真面目にいったつもりだったが、さっきの表情とは変わり、何故か祐樹は呆れたような顔をする。


「何言ってんだ。今日は刹那がやるんだろ?先生に聞いてないのか?」


「何も。」


さっきの授業もしかして聞かなきゃいけなかったやつなのでは?と今更ながら思う。


「まじか。何も聞いてなかったのかよ。」


そう言って祐樹は呆れながら、


「今日は刹那、お前一人がやるんだ。他のクラスの奴らも来るからなー。」


と教えてくれる。


話を聞いていなかった呆れながら祐樹は手を刹那の肩にのせ、憐れむように見てくる。


他のクラスもか。あまり無様なとこは見せられないし、失敗できない。


「じゃぁ、黒崎くん。中に入って。」


という先生の声が聞こえてくる。


「やるしかないか。」


気持ちを整えて、部屋の中へと向かう。


中は外から見たように何もない。そして言われた通り外は見えない。バトルシステムも魔道具であるため、魔力によって色々、調整されているのだろう。


そもそもの魔道具は前に少し説明した通り魔法が使えるようになった人間がそれを元にして発明したものだ。


魔道具は倒した邪神を素材として作られたもので魔力を燃料として動かせるもの。魔法服や邪神探査機なども魔道具の一種である。邪神探査機は外部の邪神の魔力を通すことで動くため、魔道具とされている。


今回のバトルシステムは邪神の死体の残った魔力や生徒達の魔力を使い動くシステムで、聞いた話では受験時の魔力測定やシステム使用時に使われた魔力などを使っているらしい。その他にも色々あるらしいがどれもここが国の認める魔法学園だから実現できることだ。


「これなら集中できるな。」


腰にある剣を握り待機する。どこから来てもいいように息を整え、集中して邪神の気配を感じられるようにする。


「準備はできたようね。」


「はい。」


「始め!」


俺の声が届いたかどうかはわからないが先生が始めた告げるとその瞬間、目の前に二足歩行の擬似邪神が現れた。邪神は翅や尻尾などは生えていなく武器などもないため魔法か殴りなどの接近戦のみしかできないような姿だった。


それを見て剣を鞘から抜き走り出す。すぐに邪神との距離を詰めると、邪神も攻撃をしようと直進する。


強さは知能のない下級邪神レベルか。


ギリギリまで近づき、邪神の攻撃が当たるギリギリで体を捻り避ける。


ギリギリと言っても狙ってやっているのでギリギリでしか避けられないわけではない。ギリギリで避けて反撃を早くするためだ。


そしてすぐに通り過ぎる邪神の腹を剣を水平に振り斬り裂く。しかし、斬れる感触はなく通り過ぎる。後ろを振り返って見るとダメージは入っていないようだった。


「まじかよ。」


魔法のみダメージが入る設定。今、俺の剣はただの棒になった。


剣での攻撃が効かないとわかり距離を取る。この擬似邪神を倒せるのは魔法のみである為、かなり不利な状態になる。


「ばかじゃねーの。あいつ、剣で戦おうとしてるぜ。」


周囲が少しうるさくなるが気にしてられない。


そんなことより、どうやって邪神を倒すかだ。いつも使っている剣が使えないというのは結構きつい。


魔法がほとんど使えない。なので一回しか使えない、氷の衝撃は使いたくない。氷の衝撃とだと一撃で仕留められなければ負けが決まる。まだ、賭けをする必要はない。


「貫け。氷の弾丸」


氷でできた弾が擬似邪神のめがけて飛んで行く。


その氷が邪神に当たるのを見届ける前に走りる。そして、氷の直撃とともに邪神の前に出る。


邪神は魔法に集中しているお陰で刹那には気づいてない。


「そこだ!」


邪神の顔に剣を突き出す。


「やっぱり。バカだろ。何度やっても意味ないことぐらいわかるだろ。」


そんな声が聞こえた気がした。


俺が意味のないことなんてする訳ないだろ。心の中でそう言う。


邪神の顔に吸い込まれていく剣から手を離す。


初めから狙いは攻撃をすることじゃない。邪神の視線を完全に逸らすことが目的だ。


「視界は封じさせてもらう。」


邪神は俺の狙いどうり剣を目で追い、爪を使い弾く。例え効かないと分かっていても邪神は自分の脅威になりそうなものを排除しようと行動する。それを狙った。


邪神が剣に視線がいっているうちに邪神の背後に回り込む。


「これで終わりだ。氷の刃」


氷の斬撃が邪神の首を斬り裂く。邪神は首を切られて完全に動きを止めて消える。


しかし、それで試験は終わらなかった。一体を倒した直後、同じ見た目の他の邪神が現れる。それも二体。そのうちの一体が直進してくる。それをなんとか躱すがもう一体が背後に迫る。


剣はさっき使って手元にない。刹那は反転し、


「いけ、氷の刃」


と叫び氷の斬撃を生み出して邪神の腕を吹き飛ばした。一体を倒せば終わりだと考えていたがそうではなかった。


正直、焦っていた。一体しか倒せていないということに。


そして、久しぶりに敗北を予感した。


まだ、いける。まだ、魔法を撃てる。そう信じて、


「氷の弾丸!」


と叫んだ。しかし、そこには何も出現しなかった。魔力切れによる魔法の不発。これが魔法だけでの限界。魔法学園にいてはいけないくらい弱い魔法使い。


「降参だ。」


 そう呟くと、邪神は消えていった。

 そして手元には


  黒崎刹那

魔力値 E 邪神討伐数 1 スコア E

ランキング112位


という文字が現れた。


ランキング112位それはこの学園の2年の最下位を示していた。

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