第6話 自己紹介

邪神を倒して帰った俺は疲れたので制服を素早く着替えてすぐに寝た。


目が覚めた俺は、


「今日からか。クラスに馴染めればいいけど。」


と学園の制服である魔法服を着て剣を腰につけ教室に向かった。よく寝たからか、かなり疲れは取れていた。


教室の前に着くと、教師らしき人が立っていた。先生をするぐらいだからこの人もある程度、魔法を使えるのだろう。


「君が黒崎刹那くんですね。」


「はい。」


「待ってました。では、教室に入ってください。」


俺を待っていたみたいで先生に言われた通りに教室に入る。教室には、二十人ほどの生徒が座っていてこちらを見ている。


ここにいる人、全てが魔法を使えるのか。魔法学園はやはりすごいな。


一人、感銘を受けていると


「刹那くん、こっちにきて自己紹介をお願いします。」


と教室の前に案内された。


「俺の名前は黒崎刹那だ。よろしく。」


特に変わったことを言うこともなく普通に自己紹介する。


「何か質問したい人がいたら聞いてもいいですよ。黒崎くんがなんでも答えます。」


質問を受け付けるかどうかは先生が決めることじゃないけどな。


やりたくないが強制らしいので黙って聞いておく。


「質問したい人!」


と先生が聞くと一人だけ手を挙げた。


一人しか上げないと言うことが興味を持たれていないみたいでか少し残念だったが、質問を受けたいかと聞かれるとそうでもないのでこれでよかったかと納得する。


そして、最初で最後の質問は


「なんで剣を持ってるんですか?」


というものだった。


なんとなくわかっていたけど、やっぱり剣について聞かれた。


邪神を剣で殺すことができる俺の存在を知らないなら当然のことだ。イレギュラーと言っても幅広く知られている訳ではないので知らなくてもおかしくない。


「魔法使いに剣は必要ないですよね。」


と魔法使いならば当たり前のことを言われるがそんな常識は俺には通用しない。


「俺には必要なものだ。その使い方はどうであれ、こいつを使って戦うってのが俺の戦闘スタイルだから。手放す気はない。」


どうせ剣で戦えると言っても信用してもらえないので剣に魔法を付与して戦っているとでも勘違いしてくれればそれでいい。


俺が話し終えるとクラスはしーんと静まり返る。気まずい空気になった。


少し言い方に問題があったみたいだ。最悪だ。


先生は静まり返ったこの空気をどうにかするために、


「ほ、他に、質問ありますか?」


と困りながらも次に進めようとする。勿論、そこで手を挙げる人はいない。それを見た先生はこれ以上は無理だと判断して


「質問は終わりです。黒崎くんは後ろの席に座ってください。」


と質問タイムを閉じた。俺は言われた通り席へ向かう。


席に着くとすぐに、


「私は飯島花。よろしくね。」


と隣の席の少女が俺に小さな声で話しかけて来た。


「よろしく。」


取り敢えず、そう返しておく。授業が始まろうとしているので前を向き、授業を聞く準備を始めようとすると、


「刹那くんは面白い人だね。魔法使いなのに剣を使うって言うんだもん。」


と話しかけてくる。


「それが俺の戦闘スタイルだし、それについて誰かに文句を言われたくはないな。」


この人も剣のことを言ってくるのか。あれでもう、剣については触れる人はいないと思ったんだけどな。


俺の答えに花は軽く手を振って違うよと否定する。


「いやいや、私は文句を言っているわけじゃないよ。魔法使いの戦闘スタイルは自由だし、それに文句を言うのは間違ってると思うから。私が言いたいのは他の人と違って他人と違う自分の戦闘スタイルに自信を持ってるのが凄いなって思ったことだよ。」


「そっか。」


特になんて返せばいいか思いつかなかったのでそれだけ返す。


「面白いって言うのは興味深って意味で、別に変な意味じゃないよ。」


と焦って言い訳をしまくってる。俺が怒っていると勘違いしている。


「わかったって。別に怒ってないから、そんなに慌てなくてもいいよ。」


隣の席のクラスメイトと仲が悪くなりたくないのでこれ以上は何も言わない。


「ごめんね。初対面なのに変なこと言っちゃって。」


自分の言葉が足りなかったことを反省して謝ってくる。


「いいよ。別に。」


本当にどうでもよかったので適当に返す。剣士であることに色々言われるのは慣れている。そんなのいちいち気にしてるのも馬鹿馬鹿しい。


それにそろそろ、授業を聞きたい。


そんな俺に対して花は


「よし、じゃー、仲直りしたところで、友達になってよ。」


とお願いしてくる。


喧嘩したわけでもないし、仲直りしたわけでもない。しかし、友達、というか、魔法使いの知り合いは多ければ多いほど助け合いができる。


それに教室で居場所ができるのは大きい。


「いきなりだな。まぁ、ダメな理由はないから君が良ければ俺はいいよ。」


「勿論、私から言ったんだからダメなわけないよ。困ったらなんでも言ってね!刹那くん。」


「ああ、この学園で分からないことがあったら頼るようにするよ。」


それを聞いた花は嬉しそうに笑った。


花といい夕陽といいこの学校の女子は凄いフレンドリーだな。JKってすげーと感心する。


花と話をしていると授業が終わり、次の授業の準備をする。


初回授業から話を聞かないのはどうかと思うが魔法の座学は学びきっているし、俺にはあまり必要ないので問題ないだろう。


次の授業はどうすればいいか尋ねようとするとそこに一人の少女がやってくる。


「姉さん。次移動教室だよ。」


「わかってるよ。」


初めて会ったクラスメイトについて花以外自己紹介がなかったので今来た人が誰かわからない。


「えっと、君の名前は?」


取り敢えず、聞いてみるがガン無視される。それを見ていた花はごめんごめんと謝って、


「この子は由依。私の妹。人見知りだから、私以外とあまり喋らないんだ。由依とも仲良くしてね。」


と紹介してくれる。


由依はじーっと俺のことを見ると、何事もなかったかのように歩いて行った。


人見知りというかただ、無視しているだけだよな。


「待ってよー。置いてかないでよ。由依。」


そう言って花も由依を追いかける。花は扉の前で立ち止まり、俺の方を向いて


「じゃあ、また教室に戻ってきたら、話そうね。」


そう言うと教室から出て行った。花も由依も次の授業を受けるために移動してしまったので支度を始める。


「次の時間の準備をしなきゃな。」


そう言って、準備を始めるが次何をやるか全くわからない。


あれ、次、移動教室って言ってなかったっけ。どこの教室だ?ヤバイ。わからない。一緒に行けばよかった。授業の準備も聞かなかった為かなりまずい。


「転校生。どうした。何、一人で突っ立ってるんだ?早く教室から出ろ。教室閉めなきゃ行けないからよ。」


「悪い。今出る。」


こいつについていけば問題なく次の授業の教室に向かえる。助かった。これで迷うことはない。


「君の名前は?」


ただ無言でついていくもの変なので名前を聞いておく。


「俺か?俺は祐樹だ。」


「祐樹か。俺のことはわかるよな。」


自己紹介聞いていなかったらショックなので念のため聞いてみる。


「刹那だろ?さっき自己紹介してたじゃねーか。何故か剣を持つ転校生!」


キャラ付けされたが悪いイメージではなさそうだ。空気が悪くなったので半分諦めてた。


これならなんとかこのクラスでもやってけそうだ。


そう思いながら次の教室へ向かったのだった。


「そういえば、次ってなんの授業なんだ?」


先生の話を花と話していて殆ど聞いていなかったので尋ねる。


「聞いてなかったのかよ。先生の話くらい聞けよ。」


祐樹は呆れていたが、ちゃんと次の授業が何か教えてくれる。


「次は刹那、お前のためのバトルシステムを使った実習だな。」


突然、出てきたバトルシステム。それはこの学園での立ち位置を決める大きなものであった。

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