第5話 邪神出現
夕陽と別れた刹那は特にやることもないため、寮に戻る。寮に戻った俺は部屋で魔法服であるコートを脱いだ。
校長や夕陽が着ている魔法服というのは、簡単に言うと魔法使いが着る服のことで、魔力を使うことで魔法服に備わった魔法的なものが使えるようになる。
例えば、今、俺が着ていたコートは微量な魔力を流すと身体能力が僅かに上がる。
このような効果あるのは魔法服の素材に邪神の一部を使っているからだと言われている。
魔法使いの殆どが邪神と戦うためこれを着ていて、一般市民でも来ている人はいないわけではないが、魔法服を着ている人=魔法使いというのが定着している為、殆ど着る人はいない。
それに特注品でなければ僅かな魔力で使える魔法服はないため俺のような魔力が少ない一般人では身につけても意味がない。
学校の制服にも魔法服用の魔法のようなものがあり、その能力は邪神からの攻撃を魔力に応じて防いでくれるものらしいが、俺の魔力は少ない為その効果を使うことはないだろう。なので元々のコートを着たいが、転校した以上、文句は言えない。
「明日から、これを着るのか。」
俺は他の家具と共に部屋に届いていた制服を手に持ち、試しに着てみる。
「やっぱり、前のやつの方がいいな。」
サイズは丁度いいが、能力が使えないのが難点でしかない。しかし、動きやすさは変わっていないため今までと同じような戦いはできる筈だ。
服の確認を終えたので脱いで部屋着に着替えようとすると、机に置いてあった魔道具が白く光り出す。
「何かあったのか。」
制服を脱ぐのをやめてそれを確認する。
起動したのは邪神探知機だ。
その名の通り、邪神を探す魔道具で邪神の魔力を感じることで起動する結晶状の魔道具。光が強くなればなるほど邪神との距離が近くなっていく。
そもそも、魔道具は魔法が使えるようになって世界が発展したことでできたものだ。詳しい話は他の魔道具と共に後で説明するだろう。
邪神探知機が反応したということは近くに邪神がいるということだ。
即座に机の邪神探知機を持ち、制服を着直して棚に立てかけてある剣を持って部屋から飛び出す。巣穴などを襲撃する時など日にちが決まっている時は魔法師が集まるが、それ以外の殺し損ねた邪神や突如現れた邪神に関しては近くにいた魔法使いがどうにかするという暗黙の了解がある。
勿論、俺も魔法は殆ど使えないが魔法師だ。邪神の被害を最小限にするためにも反応があったらすぐに動くことにしている。
「どっちだ。」
邪神探知機の光を確認しながら走る。周りから爆発音や悲鳴が聞こえないかどうか耳をすませながら夜の街を走っていく。光が段々と強くなっていく。
方向は間違っていないみたいだ。
そのまま道を真っ直ぐに突き進むと、走ってこちらに逃げてくる人達が見える。
「助けてくれ。」
走って来た男が近寄ってくる。魔法服を着ているため、こういう時、助けを求めてくる人が多くなる。そう言った人たちから邪神の情報を貰うことで事前準備や居場所を特定できる。
「魔法学校の学生さん。む、向こうに、邪神が。」
男は俺の進行方向の先を指差す。
「わかった。」
そう返事をして俺は走って逃げてくる人たちと真逆の方向に走って邪神の元を目指す。
そして、大通りの中心で邪神が人を襲っている姿を確認する。邪神は四つの足で一人の少女を押し倒し、鋭い爪で今にも少女を引き裂こうとしている。
「させるか。」
そう叫び魔法を発現する。さっき魔法を使ってからそれなりに時間が経っているため初級魔法一発くらいなら使える。
「氷の弾丸」
小さな氷の粒を一つ生み出し、それを素早く邪神目掛けて飛ばす。氷の弾丸は威力が弱いが牽制に使える。また、魔力を込める量を変えれば敵を貫くこともできる。
邪神は飛ばされた氷の粒に気づくと少女から離れて避ける。簡単に避けられたが想定済みだ。
避けられる前提だったため、その間に距離を一気に詰める。
邪神は魔法の飛んできた方、こちらを見るたら俺を敵と判断して俺目掛けて走ってくる。それに対して走りながら剣を抜く。
邪神は四つ足を使い勢いよく俺目掛けて飛んでくる。
「そのまま押し倒す気か。」
身体を晒して邪神を避けると、完全に無防備となった腹を剣で下から切り上げる。
邪神は防ぐことができず後方に飛ばされ地面に倒れ動かなくなる。
剣をしまい少女の元に駆け寄る。
目立った外傷は見られないため、少女は無事だろう。
目からは涙が流れていて邪神に殺されそうになる恐怖から気を失っていた。
「誰か。怪我はないのでこの子を頼みます。」
そう言って周りの人に少女を任せる。辺りを見渡し他に怪我人がいないか確認する。
何人か邪神に身体を切られている人がいるが、死者はいないようなので安心する。
突然だったので剣と探知機しか持って来ていなかったせいで治療はできない。その為、念のために邪神の生死を確認しに向かう。
邪神は動くことなく完全に倒せている。この死体を寮に持ち帰ることはできないので、そのままにしておく。
あとは、邪神の処理や怪我人の手当てだけなのでここにいる人たちだけでどうにかなりそうだ。
邪神の死体は魔道具屋にでも持っていけば処理は簡単にできるし。
「あとの処理はお願いします。」
そう言ってその場から離れる。その時には探知機の光は完全に消えていた。
「この魔法服でも全然戦えるな。」
そもそも、魔力が殆ど無い為、魔法服を着る意味がなかった。そのため、あまり変化はないみたいだ。
1日に色々ありすぎて
「疲れた。」
と呟いて寮まで戻った。
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