ユキが告白された


 その日は唐突に訪れた。授業が始まる前、ユキが他クラスの男子から呼び出されて、告白されたらしい。俺は朝練があってその光景を見ていないけど、クラスではその話題で持ちきりになっていた。


 ずっと一緒にいる俺から見てもユキは可愛い。だから告白されることだってあると思う。……俺だって、中学の時に告白したのだから。


 ……ユキは断ったのかな。その男子は俺も知らない人だったから……当然ユキとの関わりもないと思う。だから、きっと告白は断ったんだろうけど。


 でももしユキが告白を受け入れていたら?


 ……それがユキの幸せなら、俺はそれを受け入れるべきだ。ユキには幸せになってもらいたいから。ただ、以前の俺であればそれで終われたのかもしれない。でも今の俺は……ユキが好きだって気づいてしまったから。


 「……? どうしたの、ヒロくん?」


 放課後、俺の家でユキと一緒にキスをする前。ユキは俺の違和感に気づいたのか、心配そうな顔をしながら様子を伺う。


 「……い、いや、その……。ユキ、今日告白されたらしいじゃん。それが気になって……」


 「……う、うん。されたよ。……でも断るつもり」


 「……そっか」


 断るつもり。その言葉を聞いた時、俺は心から安堵していた。やっぱり、ユキが好きだから……誰のものにもなってほしくないという感情もあるんだろう。


 こんな不安になるなら、改めて俺から告白して、思いを伝えてしまえばいいに決まってる。だけど……。


 【…………でも、付き合いたくないの。……ヒロくんのこと……大好きだから】


 ユキのこの言葉が、それをさせてくれない。これを言われてからまだ大した月日は流れていないから……きっと、結果は見えている。ユキは一体、どんな人と付き合うつもりがあるんだろう。それとも、誰とも付き合うつもりがないのかな。


 ……考えたって、俺はユキじゃないからわからないけど。


 「……ねぇヒロくん。もしかして……心配だった? 私が、他の人と付き合うかもって?」


 「え。い、いや……そ、その」


 だけど、ユキは俺の考えを見透かしているようだ。ニコッと笑ってユキは俺の頭をポンポンと撫でて……。


 「安心してね。私は……ヒロくんとしか……キス、しないよ。他の人とは……したくもないから」


 そう言ってくれた。嬉しかった。安心した。でも……いつの間にか、俺が心配される側になってきたんだ、なんてことも思った。今までは、俺がユキを心配する側だったはずなのに。……ここ最近の俺が、情けないだけだけどさ。


 「でも……もしヒロくんが……他の人とキスしたくなったら……していいよ。ヒロくんが……それで幸せなら……私、嬉しいから」


 ユキは嫌そうな顔もせずにそんなことも言った。……なんて心が広いんだ。俺は、ユキが他のやつから告白されたことですら不安を感じたのに……。とことん、自分が情けなくなる。


 「……しよっか。今日も……よろしくね、ヒロくん」


 ユキは両手で俺の顔を触って、そして……キスをした。このキスができるのは俺だけ。その優越感が生まれてきた自分に、驚きながら。


 ――――――――――――

 これからの展開をどうするかかなり迷っているので更新遅れます。すみません。


 よろしければ星(レビュー)やフォローをよろしくお願いします!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る