雨の休日


 試合があった日曜日。残念なことに今日は雨が降っていて試合は延期になった。小雨だったらしたのかもしれないけど、結構降ってるから仕方がない。なので俺は家でテスト勉強でもするかと思って部屋に籠っているけど……まあ、集中できない。


 「……なに部屋の片付け始めちゃってんだ俺」


 案の定テストからの逃避と言うことで部屋の片付けを始める始末。おかげで結構綺麗になったけど。いや、今はそれじゃ…………あ。


 「これ……中学の時の卒アルだ」


 ふと俺は中学の卒業アルバムを見つけた。高校入ってから長らく見てなかったけど……いやー懐かしい。ついつい俺はそれをめくって思い出に浸る。


 「うわー……まだ卒業して二年しか経ってないのにこんな懐かしく感じるなんてなあ」


 思えば中学の頃も毎日サッカーしてたけど、なんだかんだ学校生活は楽しかった。小学校が同じ人も多かったし、友達も多かったから。それに……。


 「……ユキは変わらないな」


 中学にもユキがいたから。高校と違って、不登校になることはなく学校に来ていたし毎日一緒に登校してた。それは幼馴染だったから。小学校の頃から一緒にいたから。


 「……ほんと、告白なんてするもんじゃなかったなぁ」


 その関係を自分から壊しかけてしまったのが中学二年生の頃。俺はいつの間にかユキに恋心を抱いてしまって、勢いで告白してしまった。だけど結果は……振られてしまい、それ以降中学では気まづい関係が続いた。


 だけどなぜか高校も一緒になって、それから幼馴染としての関係は修復できた。ただ、ユキは不登校になってしまったので途中からは直接会える機会がなくなってしまったけど……。


 今は、とても変な関係になってしまったとはいえ、毎日会えている。


 「……でも、マジでユキが……わからん」


 この前三人で勉強した時、ユキは紫に嫉妬してキスをしてきた。そして、自分だけを見てくれと言った。前にも同じことを言われたし……。だけど、俺は告白を断られてるから……ユキは俺に好意を抱いていないはず。


 心変わりして今は俺に好意がある? 何がきっかけで? 今更そんな急に変わったりするものじゃないだろ。俺だって……ユキへの思いを諦めるのに、二年かかったから。


 「……ん?」


 ふと、ラインの通知音が鳴る。誰からかと思えば……偶然にも、ユキからだった。


 【今からヒロくんの家に行っていい?】


 メッセージはそれだけだった。……そっか、今日の分のキスをしないといけないからな。だから来るってことか。……思えば、ユキが俺の家に来るのは久しぶりか。


 【いいよ】


 俺はそう返してラインを閉じる。それから俺はユキに見られて恥ずかしいものを隠して、万全の状態でユキを迎え入れる準備をした。そして……。


 「……ごめんね、急に来て」


 ユキはすぐに俺の家に来た。


 「全然いいよ。……それで、要件は……約束?」


 「……うん、ヒロくんの部屋で……してもいい?」


 「……ああ」


 そして俺たちは一緒に部屋に行って、それから……。


 「ちゅ……ヒロくん……んんっ…………んむっ、んんっ……れろれろっ……んんんっ」


 いつも通り、唇を重ねた。特に世間話をするでなく、一緒に勉強をするわけでもなく……躊躇なくしていく。今日は俺の親はいるから、バレてしまうかもしれない。でも、ユキは……。


 「ヒロくん…………んんっ、ちゅ、ちゅぅ……んんっ……れろれろ……ん、んんっ」


 そんなこと、御構い無しにキスをし続ける。よほど今日はしたかったのか? 


 「……ユキ、親来そう」


 「……ぷはぁ……あ……ご、ごめん……ね」


 予想通り俺の母親が飲み物を持ってきてくれた。来る前に気づいたからいいものの、見られたら一体どう思われていたんだろう。……恋人同士って思われたのかな……。


 「……ユキがここに来るの、小学生以来かな」


 「……そうだね。ヒロくんの部屋……久しぶり」


 一度親が来たのでなんとなく気まづい雰囲気が流れてしまい、俺たちは飲み物を飲みながら話す。とは言っても……キスをした後は、いつも会話が盛り上がらないんだけど。


 「……あれ、これって……」


 「あ」


 しまった! つい中学の卒業アルバムを片付けるのを忘れていた。なんでこれを忘れるかな俺……一番ユキに思い出させたくないことがあるってのに。


 「……懐かしいね。……あ、ヒロくんだ。少し……今よりも可愛い」


 ユキは俺の写真を見て、クスッと可愛く笑う。……可愛い、ね。嬉しいような、そうでもないような。


 「……なあユキ。聞きたいことがあるんだけど」


 卒業アルバムを眺めているユキに、俺は質問を投げかけようとした。その内容は……


 「ユキは俺のこと、どう思ってるの?」


 ユキが俺をどう思っているか、だ。今までそれを聞く度胸はなかった。いや、今だって心臓が破裂しそうなぐらい緊張してる。だけど……どうしても、知りたい気持ちが今勝ったから。


 「…………」

 

 ユキは黙る。やっぱり答えてもらえないか。そう思っていたら……。


 「…………大好きだよ、ヒロくんのこと」


 「…………え?」


 ユキは、俺が思ってもいなかった回答を返した。


 「……な、ならどうして中学のとき……」


 俺はすかさず追加の質問をしてしまう。これ以上深掘りしていったら、どうなるかわからないけど……それでも、今しか聞くしかないから。


 「…………でも、付き合いたくないの。……ヒロくんのこと……大好きだから」


 「……え?」


 意味がわからなかった。それは、幼馴染として好きだからってことなのか? なら仕方がないけど……なんだか、そうではない気がしてならない。


 「……ねえヒロくん。私……もっとキスしたい」


 俺がまた質問するのを遮るように、ユキは俺の側にやってきて……キスをねだる。ここでそれを拒んで追及する手もあったのかもしれない。だけど……俺はどうしてか、そうすることはできなくて……。


 「んんっ…………ちゅ、ちゅ、れろれろ……ヒロくん……ちゅ、ちゅ……んむっ、ちゅ、ちゅぅ……大好きだよ…………ちゅ」


 俺はまた、ユキと唇を重ねた。そして……ユキが初めて、キスをしてる最中に大好きといってくれて……情けないことに、俺は今まで以上に……脳が、真っ白になって……快楽に取り込まれてしまいそうだった。


 思えば、ここでちゃんと追及していれば……俺はユキと真っ当な関係に、なれたのかもな。


 ――――――――――――


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