仲良くしてね

相変わらず@

仲良くしてね

女の子

 ……あたし! あたし花丸花子! 小学5年生! この前、パパのお仕事でこっちにお引越ししてきたの! どお? 綺麗なおうちでしょ? あたしすっごい気に入ってるの♪ 今日はね! 初めて、転校した小学校に行く日なの! だいじょぶかな〜、すっごい心配だな〜。お友達、できるかな〜。たっくさんできるといいな♪ 今日のための髪型もバッチリ!お洋服も可愛いの来てっちゃお♪ そろそろ行かなきゃ! ごめんね!








 あっれれ〜? おっかしいぞ〜? 教室にはだれもいなーい。なんでだろ〜? もしかして、教室間違えちゃったかな? いやでもここ、5年1組で合ってるしなー。それでね! とりあえず席に座ってみんなを待ってみることにしたの! あ、そうだ! みんなと一緒にやろうと思ってた折り紙! これで暇、つぶしてよーっと! あたし、鶴折るの好きなんだ♪











 あー、今日の学校、楽しかったなー! 男の子とねー、鬼ごっこして遊んだの! 足速かったなー。その子とね、さっそくお友達になれるような予感がするの!

 これからもっと、色んな人と仲良くなれるといいな♪











……………………………………………………

 警備員の男性

 今起こったことをありのまま、話そうと思う。俺ァいつものように、夜の学校を見回ってたんだ。そしたら、ひとつの教室だけ、光が灯っているんだ。1番奥の教室。まだ、先生がいるのかな。それか、つけっぱなしなのかな。確認するために、近づいたわけだ。え? どの教室かって? 5年1組だ。だがな、その教室に近づくにつれてなんか嫌な予感がするんだ。男の勘つーか、生命の生存本能っつーか、近づいちゃあいけないような気がしたんだ。しかし、警備員たるものこんなとこでヒヨるような俺じゃあねぇ。

 するとな、マジでこれには驚いた。教室のまんなかで二十代半ばくらいの女が座ってるんだ。しかも、服装が服装で、きっと白いワンピースなんだろうが、黒く汚れて白なのかどうかわからなくなっちまってんだ。髪がな、ボッサボサなんだ。それがわざとやってるような感じで、気味が悪い。俺ァ見えちゃいけないものがついに見えちまったんだと悟ったんだ。後ろ姿だけしか見れなかったから分からないが、ありゃこの世のもんじゃあねぇ。だけど、好奇心に駆られてだな、真正面から見てやろうって思ったんだ。そりゃあドキドキしたさ。でも、それよりも、好奇心が勝ってたんだ。今になって思えば、なんであんなことしたんだって後悔してんのさ。とっとと帰れば良かったって。それでな、ゆっくり、あいつに気づかれないように、懐中電灯も消して、忍び足で教室の前の方に近づいたんだ。そんで、ゆっくり、扉から顔を覗き込んだんだ。そしたら、そいつ、折り紙折ってんだ。一生懸命。ありゃ俺でもわかる。鶴だ。あれは鶴を折ってた。しかも、一個や二個じゃあないぜ? たくさんだ。ざっと千は超えてるな。後ろから見た時はその女のことだけで頭がいっぱいで見えてなかったが、よく見れば、いやよく見なくとも、机の上に鶴が綺麗に並べてあるんだ。それも、全部の机に。さらに、あいつの座ってる席の周りがな、鶴で埋め尽くされてるんだ。踏み場所が無いってくらいに。そりゃあ不気味だったさ。でもな、こんな危ないヤツ、警備員として見逃す訳にもいけない。勇気を振り絞って、ヤツにこう言ってやった。

「だ……だれだ! ここで何をしている!?」

 声が震えてた。いや、声だけじゃない。体が震えてるんだ。体が恐怖に気づき始めてんだ。でもなそいつ、何も答えなかったし、それどころか鶴を折るのをやめないんだ。いやしかし、真正面からみると、そいつの顔がよーく見える。折り紙折ってっけど、なんつーか、生気を感じさせないような顔だった。その顔は黒く汚れていて、かっぴらいた目ん玉の白い部分がよく目立つんだ。目をな、ずーっと開いてんだ。いつまでたっても閉じやしない。どのくらいそこにいたか、時間も忘れちまうくらい、その女に気を取られてた。俺ァもう、その空気に耐えられなくなって、遂に逃げ出しちまった。てか、逃げるしかなかったんだ。ここにいたら死ぬってわかったんだ。生存本能とはこのことかと、初めて味わったぜ……俺は学校から一気に飛び出してきた。いつも見回りしてっからな、学校内のことならよくわかってる。これが一番の外に出る最短ルートだった。そしたら急に目眩がしたんだ。目の前がブラックアウトしちまって何も見えない。思わずコンクリートの地面に倒れ込んじまった。さっきまでの緊張がとけたからか? いや違う、あの女のせいだ。確かに聞こえたんだ。俺が倒れる前、目の前が真っ暗になった瞬間に、だ。かすかに聞こえた。それは空耳なんかじゃあねぇ。かすれた、低い声が聞こえた。

「ツカマエタ……!」

 って声が。確実に聞こえた。絶対にあの女だ。ふざけんな。このままじゃあ死んじまうかもしれねぇ。そう思って、必死に這いずり回って逃げたんだ。恐怖で腰が抜けちまって、立つことすらできないんだ。だからコンクリの地面を這うことしかできなかった。もちろん、目の前はまだぼんやりしていてよく見えねぇ。ここにいちゃあまずい。とにかく逃げた。どのくらい進んだかは分からない。そしたら、右の方から強い光が見えたんだ。ありゃ人だ! 助かった!

 だけどな、それは車だった。俺ァいつの間にか車道に出てたんだ。

 気づいた時には俺はベットで寝ていたようだ。きっとここは病院だ。不思議だな、車に引かれてもかろうじて生きてやがるみてぇだ。だが、なんも見えねぇ。目が開かないんだ。体はそこまで痛くないが、ピクリとも動かせない。麻酔が効いているのだろうか? しかし、光ひとつも見えないなんておかしな話だな。さっきの車のライトが見えたんなら、光くらい見える気がするんだが。きっとこの部屋は暗いんだな。てことは、手術は終わったのか? 点滴やら包帯やら、体についていたら変な締め付けというか、やな感じがするが、それがない。ん? もしかして、ついていないのか? 車に豪快に引かれたんなら普通はついているような気がするが。もしかして軽傷だったのか?

 そういえば、看護師も医者もまだ見てない。声がすればいるって分かるだろうが、そういうのひとつもねぇ。夜だから静かなのか。しかし、なんかやけに冷えるところだ。冷房つけてんのか? いや待て、本当に何も聞これないぞ? 病院ってこんな物静かなところだったか? おかしいな。ただ、折り紙をおる音だけが、やけによく聞こえてくる。









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