第18話「戦いの後」


「『carbon dioxide』!!」


 二酸化炭素である。


 炎の海を鎮火させるために、シルフはこの辺り一帯を二酸化炭素で充満させる。


 砂浜、岩盤、そして、大海原。


 幸い、この周囲一帯に可燃性物質がほとんど存在おかげで、延焼はそこまで広がらずに済んだ。


 しかし、一面の砂浜だった場所が、さっきまでの高熱で、すっかり天然ガラスの床である。


 肌の弱い生命体だったら、歩くだけで血だらけになってしまうだろう。


『ピー!』


 大まかに鎮火が終わりかけた頃、聞きなれた声が上空から聞こえた。


「シルフィード、待ってろと言ったのに……」


 口にしながらもシルフの口元はにやけていた。


「…………」


 シルフの腕に収まるシルフィードを見つめて、どこか寂し気な表情を浮かべるフレイ。


 それが、二人が協力して掴んだ勝利だったにもかかわらず、まるで、自分だけが祝われてるみたいで、シフルは納得がいかない。


「フレイ、やっぱりお前は強いよ。こんな、凄い火を自在に操るなんて……。」


 納得いかないからと言って、じゃあ、フレイにシルフィードを抱っこさせるかというと、それは無理だ。


 だったら、せめて精一杯褒めたたえてもいい。


 シフルは一生懸命、言葉を選ぶ。


 デリカシーが足りてない中で、どういえばフレイが喜んでくれるのか、必死に頭を働かせる。


「ううん。シルフの方が強いよ。私には、こんなこと無理だった」


「いや、フレイの方が……やめた」


「え?」


「なんか、どっちが強いとか、もういいよ。そうだな、こんな危険なもん、常に身にまとっていちゃ、命に触れないもんな……。」


 シルフは、抱きかかえているシルフィードを地面に下ろす


 危ないから少し離れていろとだけ指示して、まだ燃えくすぶってる箇所を二酸化炭素で覆っていく。


「アクアの言うとり、炎が必要な命を生み出そう。みんなでさ……」


 シルフは想像する。


 もし、他のみんながシルフィードをかわいがっている中、自分だけが、近づくな、触れるなと言われたらどんな気分なのだろうか……と。


 それは、想像を絶する孤独感だろう。


 強さと引き換えに与えられた代償は、あまりに大きい。


 フレイだけにいつまでも、そんなつらい思いをさせるわけにはいかない。


「うん、ありがとう」


 それに対して、フレイが笑顔で返してくれたのが、シルフにとってはうれしかった。


「よし、あとはこの辺りの火を消して……」


 あと一息で鎮火が終わると思った矢先……。


「フレイ!シルフ!!」


 海から、戻ってきたアクアの声が、二人の間に響いてきた。


 

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