第4話「”ヒト”の記憶」
「アクア!ガイア!フレイ!!」
一方、囲まれている、シルフも、必死の形相で、こちらに助けを求めてくる。
理解するのに時間がかかった。
ガイヤの脳裏によぎるのは、敗北の二文字。
ヒューマノイドを教会に入れるわけにはいかない。
意図せずとも、ガイヤ、アクア、フレイの三人が立っているのは、教会の入り口。
新米3人がいつの間にか最終防衛ラインを守ってる形になっていた。
「待ってろ!後輩!今助ける!」
囲まれているシルフを助けに入ったのは、火人属の先輩
「おい、でもこいつらは……」
それを、同じチームの水人属の先輩が止めようとするが……。
「そんなこと言ってる場合か!行くぞ!」
「え?」
言うと、火人属の先輩は、両手を業火に変えて、シルフごとヒューマノイドを焼き尽くす。
「えぇ~!!」
風人属のシルフは炎で焼かれる心配はないが、急激に温度をあげられたので、はるか上空に、飛んでいく。
もっとも、ある程度上空に行けば気圧もさがり、気温も下がるので大きな問題ではないのだが。
「やっぱり、こいつら……」
問題は、それより火人属が炎で溶かした、ヒューマノイドの方である。
シルフがかまいたちで真っ二つに切った相手と違い、その場にとどまって、無残に溶かされている。
ただ、そこから漏れているのは……。
「この匂い、有毒ガスか?」
あっという間に、気温を下げて、元の位置……教会の入り口にシルフが戻ってくる。
「もっと、飛んでろよシルフ」
「うるせーよ、アクア!それより、あいつら、炎で溶かすと、有毒ガスを発生するのか?」
今しがた先輩が燃やしたヒューマノイドに対し険しい顔を向けるシルフ
“発生するのか?”と質問されても、土、水、火の3人は答えることはできない。
風人属のシルフが言うのだから、そうなのだろうと、推測するのが関の山だ。
呼吸をしない精霊から見れば、有毒ガスと言われても、呼吸を必要としていた“旧生命体”ほど脅威というわけではない。
だが、その有毒ガスが、万が一にも教会の壁を溶かす類のものであるなら、話は別だ。
有毒ガスを発生すると言われた以上、うかつに燃やすわけにはいかない。
「燃やせば、有毒ガスが出る?」
しかし、それは大きなヒントだと、シルフの言葉にガイヤは頭を働かせる。
数多く読んできた本の情報の中から、いくつか該当する素材をピックアップする。
だが、燃やすことで有毒ガスが発生するというのなら、そもそも燃やさなければいいだけの話である。
とはいえ、水人属特有の武器である『氷の刃』も、この気温では、長時間による使用は不可能なのだが。
「水にも強いみたいだね」
アクアが、あちらで苦戦してる水人属の先輩を見て、のんきな声を上げる。
素材が紙や布と言った、水に弱い素材なら、まだ良かったが、そうではないらしい。
「だったら、土人属の岩で殴りつければ…」
と、先輩たちを見るが……
それもダメらしい。簡単にへこむが、それだけ。
すぐに元に戻ってしまう。
水に強く、潰しても、簡単に元通り。
燃やせば有毒ガスが出る。
「もしかして……プラスチック?」
ガイヤは本で読んだ知識を思い出す。
ヒューマノイドの素材は、常に“ヒト”の記憶の残骸だ。
決して自然界には存在せず、かつて“ヒト”が作り出した、素材が元になって、襲い掛かってくる。
だから、紙や布、合成樹皮などが、ヒューマノイドの主な素材だ。
誰が作っているのか、どこから来るのか、誰も知らない。
わかっているのは、彼らが、精霊の住む教会を目指していること。
そして、絶対にヒューマノイドを教会の中に入れてはいけないことだけだった
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