第52話 那由他ちゃんだけのロリコン
参観日の翌日。金曜日だったので、元々翌日である本日土曜日は朝から一緒にいつものお勉強会をしようね。と約束していた。
いつものように、那由他ちゃんを車で迎えに行った。昨日別れる際、固く手を握り合っていてもどうしてもお互い何もしゃべれないまま、また明日、だけを言うことしかできない気まずさがあった。夜、電話はできないけど当たり障りないあいさつ文のやり取りはした。それで多少マシになった気はしていたけど、実際にあうと、やっぱり気まずかった。
言葉少ない那由他ちゃんを家に連れ込み、自室にはいる。昨日の約束を忘れているわけがない。最近習慣になっているけど、ちゃんと鍵もかける。那由他ちゃんとこういう関係になるまではほぼ鍵をかける習慣はなかったけどさすがにね、普通に頬にキスだけでも見られたら気まずいからかけるようにしてる。
「あ、あの、千鶴さん。順番、どっちが先がいいか、わからなかったんですけど……これ、どうしますか?」
「え? これって……え?」
定位置に座るなり、おずおずと差し出された紙袋に、首をかしげながら受け取って中を確認しする。衣類。と言うか、制服……? あ。昨日した約束は、キスの続き、だけじゃない。那由他ちゃんの制服を着て、小学生ごっこをすることも、また今度と約束したんだった。
「え、い、今?」
「えっと、忘れないようにと思ったので、その、どっちからでも、いいですけど」
「……あ、あとにしよう」
さすがに那由他ちゃんの制服を着て小学生ぶりながらキスをするのは、倒錯が過ぎる。もう相手が小学生じゃなくても危ない行為だ。那由他ちゃんの紙袋はすぐに視界に入らないよう、そっと机の下に避難させた。
さて、となると、先にキスをすると言う選択を選んだも同然だ。私としてはとりあえずいつも通り勉強かな? それで空気もほぐれるかな? と思っていたのに、普通に最初からメインディッシュだ。はからずとも選択肢から那由他ちゃんを選んでしまった。
「えと、じゃあ……いきなりだけど、する?」
「は、はいっ。こ、心の準備は、で、できてます」
那由他ちゃんを向いた私に、那由他ちゃんは、胸の前で両手を握って意気込んだ様子を見せてくれた。
……寄せられると、ただでさえ大きい胸部が目についてしまう。お、落ち着け私。大丈夫。ちょっと踏み込んだキスはするけど、それで終わりなんだから。あくまで、那由他ちゃんへの私の思いを証明するためであって、ちょっと手をだしていいとか、そう言うのじゃないんだから。冷静に、冷静になれ私。
「うん。じゃあ……その、私が、那由他ちゃんしか見えないってこと、証明、するね」
「は、はい」
私に向かって正座で緊張した面持ちの那由他ちゃんに、そっと膝立ちになって手をのばし、まず那由他ちゃんの頭を撫でる。なでなで、と右手で撫でながらおろしてついでに頬もむにむにする。吸い付くような肌。もちもちの頬肉。
「ち、千鶴さん?」
戸惑ったような那由他ちゃんの瞳。あどけなさが感じられて、何だか背筋がぞくっとしてしまう。
当たり前だけど今日は私服だ。最初はお母さんのを借りて大人っぽくしていた那由他ちゃんだけど、夏休みくらいからはもう普通に普段着のラフな格好だと思っていたけど、小学生だとわかってからみると、小学生だなって感じのシンプルな服だ。
と言っても一般の小学生の背丈ではないし、普通に物は大人と同じのを着ているのだから、一目で小学生だとわかるわけでもないけど、うん。いいわけではない。
小学生に迫ってるのだな。それが自覚させられてしまって、昨日の那由他ちゃんの嫌そうな顔と声音が蘇ってきて、私はそれを振り払うように左手をそっと那由他ちゃんの首の後ろにはわせるようにまわして顔を寄せる。
「……」
那由他ちゃんが黙って目を閉じる。私も黙って右手で那由他ちゃんの頬から下あごを支えながら唇を合わせた。気持ちいいし、心地よさすら感じる。
那由他ちゃんの唇の熱を感じながら、こみあげる気持ちのまま少しだけ押し付ける力を強める。頭ごと後ろに行ってしまいそうな那由他ちゃんを左手で押し返す。
細い首。産毛を指先で逆なでしながら力をこえ、右手も那由他ちゃんの肩をつかんで引き寄せるように力をいれ、唇で那由他ちゃんの唇のぷるぷる感を感じながら舌を出した。
「ん」
舐めると那由他ちゃんの唇は妙に甘い。何かぬってるのかな。可愛い。思わず隅から隅まで味わうように舐めてしまう。端が少しだけ荒れているのが、何故か妙にエロティックに感じてしまう。ただ舐めているだけなのに、さっきの静かな心地よさはなくて、もっともっとと求めてしまう気持ちよさに体が熱くなってしまう。
「っー」
那由他ちゃんは息をとめていたのか、ふいに強く鼻息で呼吸を始めた。その音が聞こえるほどの鼻息に、興奮が抑えきれなくなって私は舌を中にいれた。私の唾がすでに全体にぬれていたせいか、ぬるっと自然に中に入っていく。
那由他ちゃんの口の中は熱い。その熱気が那由他ちゃんの気持ちの昂りにすら思えて、私は右手を那由他ちゃんの背中に回して腰を落として抱きしめ、隣のベッドにもたれるように動かしてもたれかかる。ぎゅっと正面から抱きしめると胸があたる。勢いで崩れた那由他ちゃんの膝に乗り掛かるようになってしまっている。胸だけじゃなくて、那由他ちゃんに触れている全部が、気持ちいい。
「!」
那由他ちゃんが私の腰に手を回して、ぎゅっと抱きしめてきた。その反応が嬉しくて、全身全てが気持ちよくて、だけどもっと気持ちよくなりたくて私は那由他ちゃんの体に全身を擦りつけるようにくっつけながら口づけをさらに深める。
舌で那由他ちゃんの歯をノックして、ほんの少しだけ開かせて中に入れる。入れた瞬間、那由他ちゃんの舌と出会った。
「っ!」
嘘みたいに気持ちよくて、私は押し付けるように舌を那由他ちゃんの中にいれてしまう。那由他ちゃんの舌は粒粒してるけどすべすべで、触れてるだけで気持ちがいいけど動かすともう、たまらなく何度もしたくなってしまう。
気持ちいい。だけど気持ちいいのに、どこか物足りない。体がうずいて、力が有り余ってるみたいだ。その力を逃がしたくて左手を下して那由他ちゃんの体を撫でる。背中を撫でるとくすぐったいのか那由他ちゃんは身を震わせる。
その動きは何故か私の欲求をさらに掻き立てて、たまらずに手を引いた勢いで那由他ちゃんの胸にかすってしまった。
「んっ」
ぴくっとわずかに震えあまりに可愛い甲高い声を漏らした那由他ちゃんに、私は何も考えずにその胸をつかんでいた。
「ぁっ」
「っ、ご、ごめん!」
途端に声を漏らしてびくっと全身を揺らした那由他ちゃんに我に返り、私はぱっと両手をあげて謝罪した。抱きしめられている那由他ちゃんの腕はそのままなので、密着はしているけど、これ以上おかしなことにならないよう視線もそらした。
と言うか、私は、何をしてるんだ。ま、まあ、キスはまあね? 那由他ちゃんの許可もらってしてたし、セーフとはいえ。普通に体を撫でまわして、あまつさえ胸を普通に触ってしまった。
「い、いえ。全然、平気です。その……思わず、驚いちゃっただけで……、あ、も、もしかして、その、ふ、服、脱いだほうが、いいですか?」
「ああああぁぁあいたぁ!」
「ち、千鶴さん!?」
おずおず言われたとんでもないセリフに私はそのままのけぞって普通に後ろの机に頭をぶつけた。那由他ちゃんは慌てて私の腰に回してる両手で引き寄せてくれたけど、いや、抱きしめられるわけにはいかない!
倒れた勢いで戻りそうになったけど、那由他ちゃんの肩をつかんで胸があたるのだけは阻止する。
「と、とりあえずいったん離して。落ち着こう」
「え、あ、はい」
那由他ちゃんに腕をといてもらい、慎重に離れる。那由他ちゃんは少しだけ服が乱れて、シャツの裾がひるがえっていて、ぷにぷにしたいお肌がちら見えしていてまたよこしまな気持ちが湧き出てしまう。
「ああぁぁぁ」
もう駄目だ。那由他ちゃんをそう言う目でしか見れない! あー! 触りたい! もっとキスしておかしくなるくらい気持ちよくなりたい! 那由他ちゃんのことめちゃくちゃにして身も心も私だけのものにしたい!
私は感情が抑えきれなくなったので、ベッドに転がってさらに転がって壁にぶつかった。駄目だ! まだ冷静じゃない!
「あああ!」
どん! と頭を壁にぶつける。
「あ……あぁ……」
い、いたい。普通、自分で頭にぶつけるんだから、無意識に加減するよね? めちゃくちゃ痛くて涙出てきた。でも、痛すぎてエロい気分は収まった。
「ち、千鶴さん? あの、だ、大丈夫ですか?」
振り向くと立ち上がった那由他ちゃんが心配そうな顔で私のベッドに手をついて顔を覗き込んできている。可愛い。そして前かがみなのでおっぱいでかい。
「う、うん。なんとか……」
柔らかかったなぁ。また触りたいなぁとは思うけど、とりあえず冷静にはなっていると思うので頷いて何とか上体を起こす。那由他ちゃんも身を引いてくれたので、ちょっと近寄ってベッドに手をついて謝罪することにする。
「ごめん、興奮しすぎて暴走した」
「い、いえ。その……私は、もっと、証明してくれて、いいです、よ?」
「んんん。ごめん、ほんとに、誘惑するのやめて? ねぇお願いだから。これ以上無理だから。ていうかこれも無理だし。私ほんとにロリコンだったからやめて」
「えぇ……ロリコンなんですか?」
ちょっと引き気味になってから、半笑いで聞かれた。うっ。その顔も、いい。那由他ちゃん、ほんと、顔いいなぁ。
うん、はい。那由他ちゃんが好きで那由他ちゃんだけなのは本当だけど、ロリコンだわ。だって、那由他ちゃんが小学生だって事実に興奮してたもん。もうこれ、言い訳のしようがないよ。絶対だめだって思えば思うほど、すごい、ぞくぞくしてしたくなってしまう。
それに途中から那由他ちゃんが小学生なの忘れて、と言うか、もう、目の前の感触しか考えられなくなってた。う、うう。私がこんなに欲望に弱かったなんて。いや、強いとは思ってなかったけど、小学生とわかってからは一段と理性を引き締めていたのに。
「うん……でも悪いロリコンじゃないから。那由他ちゃん専用のロリコンだから許して。ごめんなさい。ほんとに、許して」
とにかく何でこんなことになったかと言うと、そもそも私が那由他ちゃん以外を見ちゃうんじゃないかと疑われたのが一番なのでそうお願いする。ちょっと何を言ってるのか自分でもわからないけど、意味はそんな感じなので。
「ふふっ。なんですか、それ。もう、わかりました。と言うか、わかってます。千鶴さんが私だけのロリコンなの、よくわかりました。昨日の田中君のことは許してあげます」
「那由他ちゃん……!」
やった! そもそも田中君に誤解()されたのすら那由他ちゃんがキスをねだったからなんだけど、よかった。これで那由他ちゃんとの仲がこじれずにすんだ。
「あの、ところで、頭大丈夫ですか? かなりはっきりぶつけてましたけど」
「う。痛いよ。那由他ちゃん、撫でて慰めて」
無事許してもらえたので、ベッドから降りて那由他ちゃんの隣に戻って頭を傾ける。冷静になると、結構ずきずき響く痛みだ。これ、たん瘤になるかも知れない。
那由他ちゃんは言われるままそっとおでこの少し上あたりをなでなでしてくれる。うぅ、優しさが染み渡る。
「ちょっと腫れてます。と言うか、どうして急に頭をぶつけたりしたんですか? ちょっと怖かったんですけど」
「いや、あのままだと那由他ちゃんに何するかわからないから、気持ち冷やしたくて」
「……私は別に、何されて」
「んんん! それより、そろそろ那由他ちゃんの制服でも着ようかな!」
ちょっと不満げに唇を尖らせて、何されてもいいとか言いそうになってる那由他ちゃんの言葉をさえぎって話題を変える。何をとんでもないことを。どうせ何されるかわかってないくせに。いや、言うて私もよくわからないまましようとしてたけど。これ以上この話題はまずい。話を変えよう!
那由他ちゃんの顔は見ずにいそいそと紙袋を取り出し、さっと制服を広げる。洗濯したてのふわっと優しい匂いがする。はー、柔軟剤のいいにおーい。心が落ち着く。
「いい匂いだね。どこの柔軟剤つかってるの?」
「えっと、よくわかりませんけど、ピンクのやつです」
「そっかぁ。じゃあとりあえず着替えるね」
今度家に行った時にでも教えてもらおうかな。と思いながらとりあえず着替えた。
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