第7話 とある前世の記憶

 あゝ今日も。


 おびただしい数の命の終わる音がします。


 全体の幸せが無ければ、個人の幸せなど在り様も無いのですから。


 それを想ひますと。


 わたくしといふ現象は、きっと、幸せになれないのでせう。


 けれどもそれで、いいのです。


 私のやうなものは、これから沢山できます。


 私よりも、もつと立派にもつと美しく、仕事をしたり笑つたりして行くのですから。


 だから、人間は幸せになれます。


 必ず幸せになれますとも。


 それなればこそ、わたくしといふ仮定された有機交流電燈の ひとつの青い照明は、その灯火の全てを燃やして、今日も世界と戦ってゐるのです。


 それでは、遥か遠い未来まで。


 御機嫌好ごきげんよう。

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