第31話 ものづくりの進化は止まらない

 ある日、つぼみたちは社会科見学の一環で博物館を訪れていた。

「十九世紀、欧米おうべいで産業革命が起こりました。工業化の進展によって、原料の供給きょうきゅうと工業製品の市場を求めてアジアへ旅立つ人も多くいました」

「イギリスで蒸気機関の実用化が始まったことで、工場の機械化が進んでいった、工業製品を安く大量生産することで、交通機関などに活用することが増えた。これらがきっかけで、イギリスは世界の向上と呼ばれることになった」

「資本家が労働者をやとって生産を行う資本主義も、産業革命が始まりですよ」

産業革新を伝えるブースでは、アリスと晴斗がつぼみたちにむけて解説していた。

「イギリスで世界最初の産業革命が始まった要因として、原料供給地や市場としての植民地の存在した事、清教徒革命・名誉めいよ革命かくめいによる社会・経済的な環境整備、蓄積された資本ないし資金調達が容易な環境、農業革命でもたらされた労働力などが挙げられる。フランスにもこれらの条件は備わっていたが、両者のちがいは植民地の有無である。いずれにせよ、イギリスはライバルのフランスに先んじて産業革命を開始し、フランスに限らず一体化しつつあった地球上の国々に対して有利な位置を占めることとなった。言いえるならば、七年戦争の勝利でイギリスは近代世界システムにおける覇権はけん国家こっかの地位を決定づけたのである。イギリスに限らず西ヨーロッパ地域では産業革命に先行してプロト工業化と呼ばれる技術革新が存在した。そのため、産業革命のような長期的かつ緩慢かんまんで、唯一ゆいいつでない進歩が革命と呼ぶに値するかという議論もある。初期の軽工業中心のころを第一次産業革命、電気・石油による重化学工業への移行後を第二次産業革命、原子力エネルギーを利用する現代を第三次産業革命と呼ぶ立場があるが、技術形態に重きを置く産業革命の理解からは、産業革命不在説に対する有力な反論は出にくい。そのため、現在では産業の変化と社会の変化については、急激な変化ではないという観点から、工業化という言葉で表されることが多い。ただし、イギリスの事例については依然いぜんとして産業革命という言葉も使われている。世界史では、最初の工業化であるイギリス産業革命を期に、奴隷どれい貿易ぼうえきふくむ貿易の拡大や、国際分業体制の確立といった地球規模での大変化が始まったともいえる。この世界規模での影響は、先行するプロト工業化などではなかったものである。そのため、産業革命は単なる技術上の変化としてではなく、また一国単位の出来事としてでもなく、より広い見地から理解される必要がある」

チララも、補足して説明したようだ。

 その頃、見物客にふんした怪盗かいとうトリオのベータとガンマも博物館に潜入せんにゅうしていた。

「これが三種の神器か!」

「冷蔵庫に」

洗濯機せんたっきやテレビまで!」

「よし、これにしよう!」

「ガッテンだ!」

ベータとガンマは、じゅうの生成に取りかる。

「大変だ!あやしい予感がする」

魔獣の気配けはいを察知したチララは、アリスにそのことを伝える。

「どういうことですか!?」

「その話は後回しだ!」

 そこには、ベータとガンマの姿があった。

「本日の魔獣はこちら!」

「機械の魔獣だ!」

ベータとガンマの合図で、冷蔵庫や洗濯機、テレビを使った機械の魔獣が現れた。

「それでは、始めます!」

アリスは、プリンセスミラーでシトラスイエローに変身する。

「プリンセスジュエル、セット!プリンセス・ドレスアップ!」

アリスを黄色い光が包み込む。

「花のプリンセス・シトラスイエロー、見参!」


 シトラスイエローが現れると、

「三種の神器として言われていた洗濯機や冷蔵庫、テレビも進化しています!」

「最も早く普及したのは白黒テレビで、一番遅おそかったのは冷蔵庫だ。当初テレビは非常に高価だったため、街頭テレビやキャラバン隊を通じて宣伝され、電器店の店頭に加えて銭湯せんとう裕福ゆうふくな家庭には、人気番組の放映時には近隣きんりん住民じゅうみんが寄り合い、一同鑑賞いちどうかんしょうする光景が当たり前のように見られていたが、総合家電メーカーの市場参入による量産効果で低廉化ていれんかしていった」

とベータとガンマに伝えた。

「白黒テレビ・洗濯機・冷蔵庫から、カラーテレビ・エアコン・自動車へと変化していったのです」

「デジタル家電であるデジタルカメラ・DVDレコーダー・薄型うすがたテレビはデジタル三種の神器、白物家電の食器洗い乾燥機かんそうき・IHクッキングヒーター・生ゴミ処理機をキッチン三種の神器とも呼ばれている!」

様々な三種の神器について紹介すると、

「科学の力ってすごいぞ!」

「そんなことがあるのか!」

ベータとガンマは驚いてしまった。

「行きます!」

シトラスイエローはプリンセスミラーにトパーズのマジカルジュエルをセットする。その力をプリンセスバトンロッドにさずけると、

「プリンセスステージ、ライブスタート!」

シトラスイエローによる魔獣の浄化がはじまった。

「人生は一度きり」

「得意なことより」

「好きなことがいい」

「だけど」

「遊びもいいけど」

「学びもきちんとね」

「時にはきっと苦しい」

「命ってとうとい」

「すべてを受け止めて」

「歩みを止めない」

「そう 人生は一筆書き」

「真っ白なキャンバスに」

「どんなふうにえがこうかな」

「パパとママと先生も」

「おじいちゃんおばあちゃんも」

「そして 子供たちも」

「みんな同じ」

「世界の中に」

「暮らしているよ」

「個性を生かしながら…」

「人生は一度きり」

「空はいつもお見通し」

「人生は一方通行」

「みんな One Chance」

「生かして One Chance」

「トパーズのかがやききでパワーアップ!乙女おとめの勇気!トパーズ・フローラル・セラピー!」

シトラスイエローがプリンセスバトンロッドでレモン色の花を描き、魔獣に向かって放つ。すると、魔獣は跡形あとかたもなく消えていった。

 「ちゅ、ちゅ、ちゅっぴー!」

と、チララが魔獣のコアから出てきたマジカルジュエルのありかを察知。そこにたどり着くと、

「キャッチ!」

とマジカルジュエルを回収することに成功した。それをシトラスイエローのプリンセスミラーに認識すると、

「アパタイト。青緑のマジカルジュエルだ。燐灰石りんかいせきとも呼ばれているアパタイトは、化学組成の違いで多彩たさいな色をもちいくつかの種類があり、単に燐灰石といった場合はフッ素燐灰石をさすことが多い。結晶けっしょうは六角柱状、六角板状で産出される。透明とうめいから半透明のガラス光沢や亜樹脂あじゅし光沢こうたくで、緑色か褐色かっしょくが多いが、無色、い青色、紫色むらさきいろ、白色、灰色など様々な色のものが存在する。フッ素燐灰石の場合、本来は無色か白色だが、リンとカルシウムの一部が別の元素と置きわることにより、多彩な色に変化する」

 「それではみなさん、また次回輝く世界でお会いしましょう!プリンセスステージ、ハッピーフィナーレ!」

シトラスイエローが勝利宣言すると、

「今日は勝てると思ったのに!」

「次という次こそは絶対に勝つ!」

ベータとガンマはこうなげいて、マシーンに乗ってどこかに去っていった。


 その日の帰り道でのこと。

「つぼみちゃん、今日はどうだった?」

「とても勉強になったよ!ものづくりの進化の奥深おくぶかさを知ることができて!」

「役に立つといいわね」

社会科見学の感想を語っていると、アリスが現れる。

「インスタントラーメンにかんコーヒー、実は日本で発明したものです」

「晴斗くんのお父さん、インスタントラーメンと缶コーヒーを好んでいるみたい!」

つぼみたちは、インスタントラーメンと缶コーヒーについて語っている。

「じゃあ、食べようか」

そんな晴斗は、しょうゆ味のカップラーメンを夕食に選んだ。

「お父さんは、今どこにいるのだろうか?」

藤村ふじむら刑事けいじの写真の前には、ブラックコーヒーの缶が置かれていた。

 「強靱きょうじんなインフラ構築、包摂的ほうせつてきで持続可能な産業化の促進そくしんや改革の推進を図る。質が高く信頼しんらいできる持続可能で強靭な地域と越境インフラなどのインフラを開発し、すべての人々の安価なアクセスに重点を置いた経済発展と人間の福祉を支援しえんする。包摂的ほうせつてきで持続可能な産業化を促進し、各国の状況に応じて雇用や国内総生産に占める産業セクターの割合を大幅に増加させる。後発開発途上国については同割合を倍増させる。特に開発途上国における小規模の製造業その他の企業の、安価な資金貸付などの金融きんゆうサービスやバリューチェーンや市場への統合へのアクセスを拡大する。資源利用効率の向上とクリーン技術や環境に配慮はいりょした技術と産業プロセスの導入拡大を通じたインフラ改良や産業改善により、持続可能性を向上させる。すべての国々は各国の能力に応じた取り組みを行う。技術革新を促進させることや研究開発従事者数を大幅に増加させ、官民研究開発の支出を拡大させるなど、開発途上国をはじめとするすべての国々の産業セクターにおける科学研究を促進し、技術能力を向上させる。アフリカ諸国、後発開発途上国、内陸開発途上国や小島嶼開発途上国しょとうしょかいはつとじょうこくへの金融きんゆう・テクノロジー・技術的支援の強化を通じて、開発途上国における持続可能かつ強靭なインフラ開発を促進させる。産業の多様化や商品への付加価値創造などに資する政策環境の確保などを通じて、開発途上国の国内における技術開発、研究や技術革新を支援する。後発開発途上国において情報通信技術へのアクセスを大幅に向上させ、普遍的ふへんてきで安価なインターネット・アクセスを提供できるよう図る。だから、産業と技術革新の基盤きばんを作らなければならない」

その時、博物館にいたチャミィはこうつぶやくのであった。

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