　ある日のポートフロンティア学園の全校集会では、神門（みかど）先生（せんせい）があることを生徒たちに伝えていた。

「ジェンダーは、多義的な概念（がいねん）で性別に関する社会的（しゃかいてき）規範（きはん）と性差のことです。性差とは、個人を性別カテゴリーによって分類し、統計的に集団として見た結果、集団間に認知された差異を言います。ジェンダーの定義と用法は年代によって変化します。ジェンダーという概念は、性別に関して抑圧的な社会的事実を明らかにするとともに、ジェンダーをめぐる社会的相互作用をその概念自身を用いて分析（ぶんせき）するものです」

それは、男女平等に関する話だった。

「人々はみんな、心の中に輝（かがや）きを持っています。大人だけではなく、男の子、女の子、高齢者（こうれいしゃ）、心身に障害（しょうがい）を持っている人、遠い国にいる人、肌（はだ）が黒い人、貧（まず）しい生活を余儀なくされている人、そしてこれから生まれてくる赤ちゃんまで…。一人一人、それぞれ個性が違（ちが）った輝きを秘めています。だからこそ、輝きを絶やしてはいけないのです」

神門先生は輝きという言葉を引き合いにして、こう締（し）めくくった。

「差別は絶対にしてはいけないよね」

「ああ。誰もが平等に生きていくべきだ」

つぼみと晴斗は、神門先生の考えに賛同した。

　その頃、怪盗トリオのアルファは女子更衣室（じょしこういしつ）にいた。

「あら、カメラがそこにありますわ」

男子が脱衣する教室と女子更衣室に防犯カメラを設置したり、女性教師に対して侮辱的（ぶじょくてき）な発言を繰り返していた西野先生は、ポートフロンティア学園時代ではとんでもないことをやっていた。

「さて、今日もやりますわよ」

アルファは、魔（ま）獣（じゅう）の生成に取り掛（か）かる。

　「大変だ！怪（あや）しい予感がする」

魔獣の気配（けはい）を察知したチララは、つぼみたちを体育館に招集する。

「来た！」

すると、アルファがステージから現れた。

「あら、またお会いすることができて本当に光栄（こうえい）ですわ。では、本日の魔獣はこちら！双子（ふたご）の魔獣ですわ！」

アルファの合図で、双子の魔獣が現れた。

「さあ、変身よ」

「うん」

つぼみたちはドールプリンセスに変身する。

「プリンセスジュエル、セット！プリンセス・ドレスアップ！」

「愛（あい）のプリンセス・ラブリーピンク、見参！」

「水と氷のプリンセス・アクアブルー、見参！」

「花のプリンセス・シトラスイエロー、見参！」

「星と月のプリンセス・トウィンクルパープル、見参！」

「私たち、プリンセスドールズ！プリンセスステージ、レッツスタート！」

　プリンセスドールズが現れると、

「見て！」

と、チララが何かに気づいた。

「左は色黒で目が見えない男性、右は色白で耳が聞こえない女性だ！」

魔獣の特徴（とくちょう）をとっさに見抜（みぬ）くことができたチララ。

　「人種差別や障害者差別なんて、許（ゆる）せないわ」

「差別や不平等を禁じる法律や条約が制定しており、誰もが平等な生活を送れることを願っています」

アクアブルーとシトラスイエローがこう訴えると、

「ジェンダー差別なんて、愛を感じないよ」

「その通りだわ」

とラブリーピンクとトウィンクルパープルもこれに続いた。個人の能力を持てる社会を目指すために、男女差別は絶対にあってはならないことだ。

「ちゅぴ！みんな同じ空の下で生きている！」

チララも、プリンセスドールズに同情した。

　「今がチャンスだ！」

「さあ、行くよ」

「うん」

プリンセスドールズは、ローズクォーツ・アクアマリン・トパーズ・ダイヤモンドのマジカルジュエルの力を授（さず）けると、

「プリンセスステージ、ライブスタート！」

プリンセスドールズによる魔獣の浄化が始まった。

「瞳（ひとみ）を閉じて」

「あのことを思い出してよ」

「嬉（うれ）しいこと　楽しいこと」

「いっぱいあるはず」

「見えるもの　聞こえるもの」

「すべて知ってるとは限らない」

「だからこそ」

「今を生きていくしかない」

「一人じゃできないことも」

「みんながいればできるよね」

「マイナスがプラスに変わる」

「不思議な魔法」

「心重ねる私たち」

「揃（そろ）ったときに初めて」

「嘘（うそ）なんて　もういらない」

「真実の友情を感じたい」

「今こそ、みんなの心を一つに！乙女（おとめ）の結束（けっそく）！プリンセス・ワンダフル・ギャラクシー！」

ラブリーピンク・アクアブルー・シトラスイエローがプリンセスバトンロッドでそれぞれのシンボルマークを描（えが）き、トウィンクルパープルがプリンセススタータンバリンを響かせる。すると、魔獣は跡形もなく消えていった。

　「ちゅ、ちゅ、ちゅっぴー！」

と、チララが魔獣のコアから出てきたマジカルジュエルのありかを察知。そこにたどり着くと、

「キャッチ！」

とマジカルジュエルを回収することに成功した。それをラブリーピンクのプリンセスミラーに認識すると、

「インカローズ。バラのようなマジカルジュエルだ。結晶（けっしょう）系（けい）は三方晶系である。不純物の混じり具合によって灰色、黄灰色、褐色からピンク色、紅色（べにいろ）、シナモン色を帯び、赤みのあるものが宝飾（ほうしょく）や収集の対象となる。バラ色であるためロードクロサイト、南米を中心に産することからインカローズと呼ばれている。日本名の菱マンガン鉱（こう）は、結晶が菱型（ひしがた）であることから。鉱山では炭マンと呼ばれている。中南米、アメリカ・コロラド州、南アフリカ、日本、ルーマニアなどが主要な産地である。方解石と類似した結晶構造を持つ鉱物であり、類質同像をなす。方解石、菱鉄鉱との間では、固溶体を形成する。劈（へき）開（かい）は完全である。変成を受けたマンガン鉱床でばら輝石（きせき）などマンガン鉱物を伴って産する。特に熱水（ねっすい）鉱床（こうしょう）では塊（かたまり）になって生成され、方解石の典型的な性質として菱型や平行四辺形の結晶体となるほか、偏三面体や犬牙状の結晶を作り、膜状（まくじょう）・板状・層状や、粒状（りゅうじょう）・団（だん）塊状（かいじょう）・球状、さらに球状の塊が連続するぶどう状・鍾乳石状（しょうにゅうせきじょう）で産出する。また、熱水鉱床ではしばしば閃（せん）亜鉛鉱（あえんこう）、方鉛鉱、黄鉄鉱、重晶石などを伴って産する。マンガン鉱床で産するロードナイトと外観がよく似ているが、極めて酸化（さんか）しやすいという点が大きく違う。現在典型的な菱マンガン鉱と呼ばれる赤く光沢（こうたく）のある鉱石は空気や湿気によって酸化しやすく、屋外に置いたり、特に雨に打たれると、褐色の皮膜（ひまく）が形成されたり、黒色化しやすい。硬度（こうど）が低く、脆（もろ）く、壊（こわ）れやすいのも特徴で、この観点から宝飾用としても装身具（そうしんぐ）には向かない」

　「それではみなさん、また次回輝く世界でお会いしましょう！プリンセスステージ、ハッピーフィナーレ！」

プリンセスドールズが勝利宣言すると、

「もう、また負けちゃったんじゃないの！でも、次は許しませんわよ！」

アルファはこう嘆（なげ）いて、小型のマシーンに乗ってどこかに去っていった。

　その後、晴斗はプラチナに例のことについて伝える。

「今日、神門先生はどんなことを言っていたのか？」

「誰かを差別することはあってはならないことだ。いじめや不登校を助長しかねないから」

それから、

「校舎は、バリアフリーを意識した設計となっている。ユニバーサルデザインも随所（ずいしょ）に取り入れているようだ」

晴斗はこう明かした。ポートフロンティア学園の学校運営ガイドラインによると、障害を持つ生徒をクラスに一人以上在籍（ざいせき）しなければならないという決まりがある。

　すると、

「カレンを見てくれ！」

「少しずつだが、歩いている！」

カレンがハイハイしているところに気づいた。

「子供の成長って早いな」

「そのことをつぼみたちに伝えなければならない」

晴斗とプラチナは、カレンの成長を見つめたのであった。

　「ジェンダー平等を達成し、すべての女性の能力強化を行う。あらゆる場所におけるすべての女性に対するあらゆる形態の差別を撤廃（てっぱい）する。人身売買や性的、その他の種類の搾取（さくしゅ）など、すべての女性に対する、公共と私的空間におけるあらゆる形態の暴力（ぼうりょく）を排（はい）除（じょ）する。未成年者の結婚、早期結婚、強制結婚、女性器切除など、あらゆる有害な慣行を撤廃する。公共のサービス、インフラ、社会保障政策の提供（ていきょう）、各国の状況に応じた世帯と家族内における責任分担を通じて、無報酬（むほうしゅう）の育児と介護や家事労働を認識したうえで評価する。政治、経済、公共分野のあらゆるレベルの意思決定で、完全で効果的な女性の参加や平等なリーダーシップの機会を確保する。国際人口開発会議の行動計画や北京（ぺきん）行動（こうどう）綱領（こうりょう）、これらの検討会議の成果文書に従い、性と生殖に関する健康や権利への普遍的（ふへんてき）アクセスを確保する。女性に対し、経済的資源に対する同等の権利、各国法に従い、オーナーシップ、土地その他の財産、金融サービス、相続財産、天然資源に対するアクセスを与えるための改革に着手する。女性のエンパワーメント促進（そくしん）のため、ICTをはじめとする実現技術の活用を強化する。ジェンダー平等の促進、すべての女性のあらゆるレベルでエンパワーメントのための適正な政策や拘束力のある法規を導入・強化する。だから、ジェンダー平等を実現しなければならない」

その時、ポートフロンティア学園の体育館にいたチャミィはこうつぶやいたうえで、

「各国内や各国間の不平等を是正（ぜせい）する。各国の所得下位の所得成長率について、国内平均を上回る数値を漸進的（ぜんしんてき）に達成し、持続させる。年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教、経済的地位その他の状況に関わりなく、すべての人々のエンパワーメント、社会的、経済的、政治的な包含（ほうがん）を促進する。差別的な法律、政策、慣行の撤廃、適切な関連法規、政策、行動の促進などを通じて、機会均等を確保し、成果の不平等を是正する。税制、賃金、社会保障政策などの政策を導入し、平等の拡大を漸進的に達成する。世界金融市場と金融機関に対する規制とモニタリングを改善し、こうした規制の実施を強化する。世界的な国際経済と金融制度の意思決定における開発途上国の参加や発言力を拡大させることにより、より効果的で信用力があり、説明責任のある正当な制度を実現する。計画に基づき良く管理された人の移動政策の実施（じっし）などを通じて、秩序（ちつじょ）の取れた、安全で一定的で責任ある移動やモビリティーを促進する。後発開発途上国をはじめとして、開発途上国に対する差異のある特別な待遇（たいぐう）の原則を実施する。後発開発途上国、アフリカ諸国、小島嶼開発途上国（しょとうしょかいはつとじょうこく）や内陸開発途上国をはじめとする要望が最も大きい国々を対象に、各国の計画やプログラムに従って、外国直接投資を含む資金フローを促進する。だから、人や国の不平等をなくさなければならない」