Second Season

思いがけない展開

第22話 新しい命が生まれた日

 ダイヤモンドのマジカルジュエルをかけて激闘げきとうを繰り広げたダークネス団の発表会からおよそ一か月たった後、おとぎの世界の中心にあるプリズムパレスでのことだった。その庭園であるプリズムガーデンに、光の女神がいる。

「これが、百年に一度しかかないまぼろしの花であるプリンセスレインボーローズ…」

 そこに、不思議な白い生き物が現れる。

「チャミィ、どうしましたか?」

「ボクを人間界へ連れてって!」

「分かりました」

「横中に行ってくる」

現状を確かめるべく、チャミィはプリンセスドールズのいる横中へと旅立っていった。

 「満月の夜、そう、人間界とおとぎの世界が一つになるのです」

光の女神はこうつぶやいた。

 その頃、つぼみたちはプラチナの家に招集されていた。

「君たちに伝えたいことがある。それは、おとぎの世界にあるプリズムパレスに四人で行くことだ。もうすぐ、次のおとぎの世界の女王候補となる女の子の赤ちゃんが生まれると光の女神から聞いている。満開になると女王が誕生するという百年に一度しか咲かない奇跡きせきのバラであるプリンセスレインボーローズが咲くプリズムガーデンで、新たなる命の誕生となる一世紀に一度しか発生しない瞬間しゅんかんを見届けてくれ」

「つまり、プラチナがお兄さんに?」

「そうだ。僕は光の女神の息子だからね」

「王子さま、今の心境を聞かせてください」

「兄になる覚悟はできている。あとは誕生するその時を待つだけだ」

と新たなおとぎの世界の女王が誕生することを知る。

 そのうえで、

「君たちのいる人間界からおとぎの世界に行ける日は、満月の夜だけだ。光が反射はんしゃする場所に行けば、月の光に照らされて、おとぎの世界へと通じるとびらが開かれるだろう」

「では、健闘を祈る」

「はい」

「みんな、頑張がんばって」

つぼみたちがおとぎの世界に行くことになり、

「四人で迎えに行こう」

「今からワクワクしちゃう」

「すごく気になります」

「楽しみね」

と期待を寄せるつぼみたち。

 そして、

「満月の夜」

「おとぎの世界へ」

と、決心するのであった。

 その頃、ドクターはダークネス団アジトのモニター室でおとぎの世界の様子を見ていた。

「ついに光の女神の後継者が現れるとは。また一人、我々われわれ邪魔者じゃまものが増えるだろう。新たな時代の幕開けだ」

ドクターはこのことを知っているようで、

「未来のカギをにぎるのは、この人しかいない。この人がいるかいないかで、未来は変わってくるだろう」

と、警戒心も強めているようだ。


翌日、ほぼ一ヶ月に一度におとぎの世界と人間界がつながるという満月の夜につぼみたちは、つぼみの家にいる。

「みんな、準備はできた?」

「もちろん」

「ばっちりです」

「さあ、変身よ」

「うん」

つぼみたちはドールプリンセスに変身する。

「プリンセスジュエル、セット!プリンセス・ドレスアップ!」

あいのプリンセス・ラブリーピンク、見参!」

「水と氷のプリンセス・アクアブルー、見参!」

「花のプリンセス・シトラスイエロー、見参!」

「星と月のプリンセス・トウィンクルパープル、見参!」

「私たち、プリンセスドールズ!プリンセスステージ、レッツスタート!」

 プリンセスドールズが現れると、

「行くわよ」

つぼみの部屋のかがみが月の光に照らされて開かれた扉の中へと入る。


 「ここが、おとぎの世界ね」

「現実の世界とは全くちがった雰囲気です」

とおとぎの世界の独特の世界観に圧倒されるプリンセスドールズ。

「見えたよ、プリズムパレス」

「中へ入ろう」

おとぎの世界の城であるプリズムパレスの門に入ると、プリンセスドールズは約束の場所であるプリズムガーデンへ。

「色とりどりのバラが咲いていますね」

「みんな、見て!」

「あれが、プリンセスレインボーローズ!」

「急ごう!」

プリンセスドールズはプリズムガーデンの中心にあるプリンセスレインボーローズが植えられている場所へと向かう。

 そこには、つぼみがだんだんと大きくなっている。

「蕾がふくらみ続けている!」

「もうすぐ、生まれそう!」

 すると、その時だった。

「おぎゃあ!」

プリンセスレインボーローズの花が咲いて、中から女の子の赤ちゃんが出てきた。

「生まれたわ!」

「待ってて!」

ラブリーピンクが赤ちゃんをきかかえ、プリンセスドールズは光の女神がいるプリズムパレスの謁見えっけんの間へと向かう。

 「失礼します!」

「女王さま、赤ちゃんが生まれました!」

「なんということでしょう。私の後継者となる女の赤ちゃんが生まれたとは!」

光の女神は赤ちゃんが誕生したことを祝福すると、

「では…。この赤ちゃんに名前を付けてください」

「どうしよう…」

 プリンセスドールズがなやむこと数分、ようやく赤ちゃんの名前が決まったようだ。

「そうだ!『カレン』という名前はどうかな?」

「プリンセスレインボーローズのように可憐かれん清楚せいそな女の子になってほしいというメッセージが込められていますね!」

「その通りよ」

「では、その子の名前はカレンでいいですね」

「はい」

「カレン・ピュアラ・エスポワール・フェアリーテイルで行きましょう」

こうして、おとぎの世界の次期女王候補となる女の子の赤ちゃんにカレンという名前が付けられた。

 「プリンセスドールズ、あなたたちにわた(わた)さなければならないものがあります」

光の女神は、プリンセスドールズにあるものを渡す。

「希望と未来のカギです」

「これは?」

「プリンセスドールズがカレンをやみの力から守るためになくてはなりません。にじいろの大きなハートの宝石ほうせきにあなたたちのイメージカラーであるピンク・ブルー・イエロー・パープルがクローバー状に散りばめられているのです」

と希望と未来のカギについて説明する光の女神。

「さあ、かけるのです」

「あい!」

「大切にしてね」

ラブリーピンクはペンダント状の希望と未来のカギをカレンに与える。

 「カレンのことを頼みましたよ、プリンセスドールズ」

「はい!」

「カレン、よろしくね」

「あなたのことは私が守るから」

「一生懸命、お世話も頑張ります」

「こんにちは、カレン」

「あい!」

「カレンを素敵なおとぎの世界の女王にするために、がんばってお世話してくださいね」

こうして、プリンセスドールズはカレンを受け入れたのであった。


 その翌日の朝、つぼみたちはプラチナに例のことを報告するためにプラチナの家にいた。

「お邪魔します」

「ようこそ、僕の家へ」

「次のおとぎの世界の女王となる赤ちゃん、無事に生まれたよ」

「名前はカレン」

「だあ!」

「本当の名前は、カレン・ピュアラ・エスポワール・フェアリーテイルです」

「カレンか。それはよかった」

プラチナはつぼみたちの様子に安堵あんどする。

「すいません」

「私たちが学校に行っている間、カレンはどうすればいいのですか?」

つぼみたちがポートフロンティア学園などにいる間、カレンをどこかに預けなければならない。それもそのはず。カレンとプラチナの母親である光の女神は、おとぎの世界で人間界の様子を見ているのだから。

「君たちはまだ中学生か。でも、安心して」

 すると、不思議な生き物が現れる。

「紹介しよう、おとぎの世界からやってきた、チャミィだ」

「どうも。ボクは宇宙の管理人だ。地球上のかがやきを守るためにここに派遣された」

「君たちが学校にいる間、チャミィがカレンのそばにいるから彼女かのじょのことを守ってくれる。あ、そうそう。大事なことを伝えなければならない。チャミィはほかの生き物とは違ってテレパシーで君たちと会話する」

「分からないことがあれば、気軽にボクに聞いて」

とチャミィについて語ると、

「よろしくね、チャミィ」

「よろしくお願いします」

「これからよろしくね」

「こっちこそ」

とつぼみたちはチャミィにあいさつする。

 「あ!もう時間だわ」

「そろそろ学校に行かなくちゃ」

「では、カレンのことをよろしくたのむね」

「行ってきます!」

「気を付けていってらっしゃい!」

今日は二学期の始業式。つぼみたちはいつものようにポートフロンティア学園へ登校するのであった。

 その日の昼下がりの出来事。プラチナは買い物で外出中のため、チャミィとカレンが留守番となった。

「まま、あいたい~」

「つぼみたちはまだ授業中だ。もう少し待ってておくれ」

とつぼみに会いたがるカレンにチャミィは困惑する。

 すると、

「これ、おちょろい」

「そうだ」

カレンが肌身はだみはなさず身に着けている希望と未来のカギがチャミィのペンダントと同じであることに気づく。さらに、

「な~に?」

「これはボクにとって大切なものだから」

「カレン、これ、ちゃわる!」

カレンがチャミィのペンダントを触ろうとすると、

「だめだ。今はそっとしてほしい」

「あ~い」

とカレンを注意するチャミィ。

 そんなチャミィは、

「プリンセスドールズ、キミたちに伝えなければならないことがある。それは、未来のために何か行動を起こすことだ。カレンがおとぎの世界の女王になるであろう時代に何か残すために」

と心の中で語ったのであった。

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