第20話 星と月のプリンセス・トウィンクルパープル

パラレルワールドにあるダークネス団アジトの倉庫そうこにある金庫には、チララの姉らしきチンチラが閉じ込められている。

「たすけて…」

さけび声をあげると、

「チララ、いたら返事をして…」

とチララを探しているかのような助けを求めていた。

 そのころ、岩瀬いわせふ頭にいるつぼみたちは、星空ほしぞららんの正体がダークミラージュだとあばく。

「あなたがダークミラージュなの!?」

「そうよ」

「正解だ!私の教え子である星空蘭こそ、ダークミラージュの中の人なのだ!」

「西野先生、ここは黙ってほしいわ」

ダークミラージュの命令で西野先生は、コンテナの向こうへと下がっていく。

 「では、舞台はすべて整ったわ。プリンセスドールズ、最後の戦いよ」

ダークミラージュはつぼみたちに宣戦布告する。

「やるしかないわ」

「あなたの心にある傷を、いやして見せます」

「さあ、変身よ」

「うん」

つぼみ、沙奈さな、アリスはプリンセスミラーでドールプリンセスに変身する。

「プリンセスジュエル、セット!プリンセス・ドレスアップ!」

あいのプリンセス・ラブリーピンク、見参!」

「水と氷のプリンセス・アクアブルー、見参!」

「花のプリンセス・シトラスイエロー、見参!」

「私たち、プリンセスドールズ!プリンセスステージ、レッツスタート!」


 ついに、プリンセスドールズとダークミラージュの戦いの火蓋ひぶたが切られた。

「スイッチ スタート」

 するといきなり、ダークミラージュは歌いだす。

「きっと誰かが救いの手を」

「差し伸べてくれるのなら」

わたしは構わないわ」

「街に灯るネオンの光」

「もう見飽みあきちゃったの」

「そう 私はもう」

「見慣れた私ではない」

「生まれ変わるのだから」

「今」

「探しているの ほしいもの」

「時を超えて 空をえて」

「まだ見たことない宝石ほうせき

「それが黒いダイヤモンド」

「出口のないトンネル」

「答えのない質問」

「今の世界はわからないものばかり」

「そう 私はもう」

「誰にもたよらない」

「何もこわくないのだから」

「見つけたい つかみたい」

「大地をかけ 大空をかけ」

「私が勝ち取るから」

「それが黒いダイヤモンド」

「見つけたい つかみたい」

「時を超えて 空を超えて」

「夢がかなう宝石」

「それが黒いダイヤモンド」

「すべてのやみよ、解き放て!プリンセス・ミラージュ・スパークル!」

ダークミラージュは、黒いプリンセスバトンロッドを回す。すると、会場にいた人たちの心の中のかがやきはみるみるうちに失われていく。

「そんな…!ダークミラージュはものすごい力を持っているなんて」

「すさまじいエネルギーだわ」

「私たちでも太刀たち打ちできません」

プリンセスドールズはダークミラージュの本来の力に思わず絶句してしまう。

 「あなたたち、一体何をするつもりなの?私と出会ってからの日々は一体何だったの?私にとってあなたたちはどんな存在なの?」

ダークミラージュはプリンセスドールズにこう問いかける。すると、ラブリーピンクはその答えを導く。

「私たちにとって、蘭は最高の友達だよ。あなたと話していると、すごく楽しくなるの。だって、その優しさが、その笑顔が、私たちにとっての大きな力になれたのだから…」

 それは、蘭がポートフロンティア学園中等部に転入した初日のこと。

「あの子、ひとりぼっちでさみしいよ」

「ちょっと声をかけてみて」

「うん」

「近くにいたほうが、いいかもしれませんね」

つぼみは蘭に声をかける。すると、

「だ、誰なの?」

「つぼみだよ。愛沢つぼみ」

「愛沢つぼみ…。覚えておくわ」

「私のこと、わかっているみたい!」

蘭がつぼみのことを初めて覚えたこと。

 ある時には、

「さあ、飛んでみて」

「できるかどうかわからないけど、頑張がんばってみる」

体育の授業でび箱を飛ぼうとする蘭。

「せーの、ジャンプ!」

「やったね!」

「よかったわ」

蘭が初めて笑顔を見せたこと。

 またある時には、

「蘭、どうしたの?」

つぼみが学校に遅刻ちこくした蘭を気にけると、

「ごめんね」

「いいよ、気にしないで」

ゆるしてくれたこと。

蘭がつぼみ・沙奈・アリス・晴斗と出会ったからでこそ感じた本当の気持ちが、ダークミラージュの脳裏のうりによぎる。

そのことを、ダークミラージュは、

「つ、つぼみ…」

とラブリーピンクの正体であるつぼみの名前を口にしながら、目に大粒おおつぶなみだかべてしまう。


 その時だった。プラチナからの連絡れんらくを受けた晴斗も、岩瀬ふ頭にやってくる。

「王子さま、今はどんな状況なのか?」

「今、ダークミラージュはとてつもなく苦しめられている。さっき放った強力な技『プリンセス・ミラージュ・スパークル』の反動でね」

プラチナによると、ダークミラージュは黒くにごってしまったダイヤモンドのマジカルジュエルから放つ「プリンセス・ミラージュ・スパークル」を出した代償だいしょうとして、意識を失いかけているという。

 そのうえで、

「いいか、よく聞いて」

「彼女はどうやら君たちのことを思い出したようだ。しかし、ダークネス団の一員は『信じる』といった明るいイメージの言葉を聞くと、何かにとりつかれたかのように苦しんでしまう。中には、命を落とした元団員もいるからね」

「つまり、ダークミラージュは命の危険にさらされているんだ」

とプリンセスドールズに忠告ちゅうこくする。ダークネス団の団員規約によると、闇の力が体内からけてしまうと、その団員は強制的に解雇かいこされてしまう。

 そして、

「そこでお願いがある」

「ダークミラージュをダークネス団の呪縛じゅばくから解き放ってほしい!」

とダークミラージュを絶体絶命のピンチから救うことをプリンセスドールズに呼びかける。

「一体どうなるかわかりませんが、やってみましょう」

「今こそ、私たちの心を一つにするとき」

とシトラスイエローとアクアブルーがこう述べると、

「心の輝きを信じて、私たちならきっとできる!」

ラブリーピンクは力強く宣言する。

「プリンセスステージ、ライブスタート!」

そして、プリンセスドールズは、蘭の洗脳せんのうの解放とダークミラージュの改心にいどむ。

「暗くて深い 闇の向こうに」

「一人さびしく たたずんでいた」

「だけどもう こわがらないで」

「それは迷いを 断ち切ったしるし」

「春風に向かって 旅立っていく」

「さあ 夢のとびらを開こう」

「輝く未来に向かって 放つよ私だけのメロディ」

「愛を守るため みんなを守るために」

「きらめく世界に奏でる 私とあなたのハーモニー」

「あなたのそばにいる それがプリンセスなんだから」

砂漠さばくの街に 住んでいても」

「氷でおおわれた 場所にいても」

「心はいつだって 一つだから」

「それは つながっているしるし」

さくらう空 勇気を出して」

「さあ 一歩前へとみ出そう」

「輝く今へと響く みんながつなぐメロディ」

「世界を守るため 宇宙を守るために」

「きらめく夢を目指して 一つになったハーモニー」

「みんなのためにいる それがプリンセスなんだから」

「人はみんなときめいている」

「だから ずっとわすれないで」

「心の輝きを信じて」

「輝く未来に向かって 放つよ私だけのメロディ」

「愛を守るため みんなを守るために」

「きらめく世界に奏でる 私とあなたのハーモニー」

「あなたのそばにいる」

「みんなのためにいる」

「それがプリンセスなんだから」

「今こそ、みんなの心を一つに!乙女おとめ結束けっそく!プリンセス・トリコロール・イリュージョン!」

プリンセスドールズは、プリンセスバトンロッドでそれぞれのシンボルマークをえがき、ダークミラージュに向かって放つ。すると、彼女が持っていた闇の力は浄化されて、ダークミラージュとしての蘭の最期を迎えた。


 そして、ダークネス団にとらわれているチララの姉も、自力で金庫をこじ開けようとする。

「ワタシ、蘭のことが大好き!だから、人間界に行きたい!」

と願うと、チララの姉は星の力を使って人間界へと急行する。

 するとその時、蘭が星と月の輝きに覆われる。

「ついに、星と月のドールプリンセスが誕生する!」

チララはこう未来を予言する。

 「今、助けるからね」

パルルは、意識がもうろうして倒れている蘭が包まれている光の中へと飛び込む。

「こ、ここは…どこなの…」

プリンセスドールズによってダークミラージュではなくなった蘭は今、生と死のはざまに立っている。そこにパルルが現れると、

「あなたはこれまで闇の力によって操られてきたけど、もう大丈夫よ」

とそっと語りかける。すると、

「この小さな妖精ようせい、暖かい…」

と、蘭はパルルにそっとれる。

「私も、つぼみたちとずっと一緒にいたい。だから、もう一度、こんな私だけど大きなチャンスをください…」

とお願いをする蘭。すると、ダークネス団に洗脳されていた時に結っていた黒いリボンがほどけ、ひとみにも輝きが加わり、蘭は見違みちがえるほど生まれ変わった。

「さあ、受け取って。あなたへのプレゼントよ」

「ありがとう」

蘭はパルルから、星型のペンダントブローチであるプリンセスコズミックスターと新たなプリンセスジュエルであるプリンセスジュエル・パープル&シルバーの指輪とプリンセスドールズの証であるプリンセスジュエル・ホワイトの指輪を授ける。これらは、くだかれた黒いプリンセスバトンロッドと黒いプリンセスミラーをパルルが星と月の力で作成した新たなるアイテムだ。なお、プリンセスジュエル・パープル&シルバーは左の中指に、プリンセスジュエル・ホワイトは右の中指にはめた。

「さよなら、ダークミラージュ」

蘭はプリンセスコズミックスターでドールプリンセスに変身する。

「プリンセスジュエル、セット!プリンセス・ドレスアップ!」

蘭をむらさきと銀の光が包み込む。

「星と月のプリンセス・トウィンクルパープル、見参!」

 プリンセスドールズの目の前に現れると、

「あれが、蘭の新しい姿…」

「しかも、新しいドールプリンセスだ!」

「星と月のドールプリンセス、トウィンクルパープル。ようやくここで誕生したのね」

「夜空にきらめく星のように、キラキラ輝いています。ダークミラージュが月の影ならば、トウィンクルパープルが月の光ということが証明されました」

すみれ色のウェーブがかかったツーサイドアップヘアに、パンツスタイルのドレス、リボンがついているミュール、片方に王冠おうかんと紫色のリボンの髪飾かみかざり、もう片方には銀色の羽と星が組み合わさった髪飾り…。その姿は、ダークミラージュとはかけはなれた姿だった。もう、ここにダークミラージュすら、存在しないのだ。

「本当に、あなたたちの仲間になっていいの?」

「いいよ。私たちの本当のこと、本当の気持ち、本当の優しさを分かってくれるのなら…」

「力になっていいわ」

「もちろん大歓迎だいかんげいです」

「ありがとう」

トウィンクルパープルはこう受け入れ、プリンセスドールズの元へと歩み寄る。

 「信じてくれたんだな、僕たちに対する本当のことを」

「おかえり、そして、これからもよろしく」

と、晴斗とプラチナも蘭の帰還を祝福した。

 すると、

「チララ!」

「お姉ちゃん!」

「ずっと待ってたよ!」

「会いたかった!」

「チララのお姉ちゃんも、帰ってきたのね!」

「またうれしいサプライズです!」

「すごくかわいい!」

とダークネス団に拉致らちされていたチララの姉も、収容されていたダークネス団のアジトから横中へ無事にもどってきた。

「紹介しよう。彼女こそがボクのお姉ちゃんのコロンだ」

「これまで、ワタシの代わりに弟のことを見守ってくれて本当にありがとう。改めてよろしくね」

チララは、コロンのことをプリンセスドールズに紹介する。

 「お姉ちゃんは、ボクとは違って人間界では体力を消耗しょうもうしやすい。だから、キミのプリンセスコズミックスターの中に収めた方がいいのでは」

「ああ。その方が彼女のためにも安心できるのだろう」

「コロン、これからもよろしくね」

「ええ」

「さあ、ボタンを押して」

「うん」

トウィンクルパープルはプリンセスコズミックスターのボタンを押すと、コロンは中へと入っていく。こうして、コロンは、トウィンクルパープルのパートナーになった。


 すると、西野先生が再び現れた。

「くっ、我々われわれが愛情をたくさん注いで育ててきたダークミラージュがプリンセスドールズの一員になるとは!しかも、トウィンクルパープルという新たなる姿として転生してまで!しかし、喜ぶのはまだ早い。ダイヤモンドのマジカルジュエルをかけて、ここからが本当の勝負だ!」

西野先生の合図で、ダークミラージュをイメージしたくるみ割りのじゅうが現れた。

「トウィンクルパープルが仲間になった私たちには、失うものなんて何一つない!それぞれの心の輝きを信じて、必ずダイヤモンドのマジカルジュエルをつかみ取ろう!」

「うん!」

トウィンクルパープルが加わって四人となったプリンセスドールズは、ダイヤモンドのマジカルジュエルをダークネス団の手から取り戻すことを宣言した。

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