第19話 いざ、ダークミラージュとの決戦へ

ダークネス団の発表会が目前となっている中、つぼみ・沙奈さな・アリスは、つぼみの家でパルルからのメッセージを聞く。

「みんな、よく聞いてね。ダークネス団が生み出した黒きやみのドールプリンセス・ダークミラージュの正体が分かったの。それは、星空ほしぞららんという少女よ」

これを聞いたつぼみたちは、

うそでしょ…」

「あの蘭ちゃん、私たちと同じクラスで仲良くしていたのに…」

「友達と思っていましたので、ショックが止まりません」

と思わず言葉を失ってしまう。

 すると、チララは、

「お姉ちゃんがダークネス団にとらわれていることを思い出した。確か、ボクを住んでいる場所に残してまで、たった一匹でダイヤモンドのマジカルジュエルを探していた途端とたんに何者かによってさらわれたような…」

とふと何かを思い出す。

 それは、プリンセスドールズが結成する少し前のこと。チララの姉はダイヤモンドのマジカルジュエルを求めて、氷でおおわれた世界にいた。

「これが、白銀にかがやくダイヤモンドのマジカルジュエルね!」

チララの姉がそこに近づこうとした。

 しかし、その時だった。事件が発生したのだ。

「ダイヤモンドのマジカルジュエル、発見!」

なんと、ダークネス団の幹部だと思われる人物が現れたのだ。

「しかも、邪魔者じゃまものまで!」

「今すぐ捕まえろ!」

「了解!」

チララの姉はダイヤモンドのマジカルジュエルとともにダークネス団の元にわたっていった。

 その時、別の場所にいたチララは、

「お姉ちゃん!」

さけぶしかなかった。

 その時のことを、チララは、

「もしボクがその時ここにいたら、お姉ちゃんは助かっていた」

やむも、

「お姉ちゃんのかたきってほしい」

うったえる。

「そこでお願いがある」

「ダークネス団の発表会までもう時間がないの。だから、私と協力してほしいわ!」

「ダイヤモンドのマジカルジュエルをその手から取りもどすだけではない。ボクの最愛さいあいのお姉ちゃんとダークミラージュを救ってほしいんだ!」

と落ち込んでいるつぼみたちに協力を依頼いらいするチララとパルル。

「どうしよう…」

「蘭ちゃんのことも考えないと」

「難しい質問です」

と戸惑うつぼみたち。

 しかし、

「やるしかないわ」

「一生懸命、戦うのみです」

「絶対、大丈夫だよ」

とダイヤモンドのマジカルジュエルの奪還だっかん、ダークミラージュとチララの姉の救出を決心する。

「会場となる場所は岩瀬いわせふ頭だ。発表会までもう時間がない。ボクたちも精いっぱい戦うしかない」

「今こそ、心を一つに」

銀のマジカルジュエルの力を持つチララとパルルも決意を固めたようだ。

「みんなを守るため」

「大切なものを取り戻すために」

頑張がんばるよ」

つぼみたちは、ダークミラージュが待ち構えているダークネス団の発表会に向けて力強く宣言した。


その翌日、どうやらポートフロンティア学園中等部の様子がおかしくなっている。

「では、出席をとります。名前を呼ばれたら返事をしてくださいね」

藤村晴斗ふじむらはるとくん」

「はい」

愛沢あいざわつぼみさん」

「はい!」

野々ののはらアリスさん」

「はい」

雪海沙奈ゆきみさなさん」

「はい!」

「星空蘭さん」

「すいません、星空さんは今日も欠席です」

「そうですか。わかりました」

西野先生が担任たんにん教諭きょうゆを務める一年一組では、欠席者が続出している。

「今日は、西野先生は私用のためお休みとさせていただきます」

と代理の先生が伝えた途端、

「あまりにも欠席が多いので、今日から臨時休校になります」

と臨時休校になったことをつぼみたちに告げる。ポートフロンティア学園のガイドラインでは、クラス人数の半分以上が欠席になると学級閉鎖扱がっきゅうへいさあつかいになることが定められている。それが多くなってしまったためか、終業式を中止するなど一学期をり上げて終了し、夏休みに入ることになった。

「わー!」

「やったー!」

「帰ろう!」

「静かにしなさい!その期間中はしっかりと勉強しなさい!」

ポートフロンティア学園はこれまでに難関の国立大学や名門私立大学に多くの卒業生を輩出はいしゅつしている進学校であるせいか、代理の先生はクラスメイトたちに臨時休校の期間中でも学業はおこたらないように注意をうながした。

 これについて、つぼみたちは、

「なんだか西野先生の不在が影響しているのかな」

「ダークネス団の発表会が近いことも響いているみたい」

「そんな感じがするな」

あやしい予感がしますね」

と、ダークネス団のスパイである西野先生の欠席と臨時休校がダークネス団の発表会と関係があることを冷静に示唆しさしたうえで、

「そんなこと、絶対許ゆるせない」

「私たちが止めさせなきゃ」

「うん」

と、いかりをあらわにした。


 ついに、ダークネス団の発表会が開かれる日が訪れた。

「すごく怪しい気配が漂ってきている。慎重しんちょうに歩いていこう」

「分かったよ」

「うん」

つぼみたちは、ポートフロンティア学園中等部の正門前に集合して、会場である岩瀬ふ頭を目指す。

「街もダークネス団一色にまっているね」

「なんだかおかしいよ」

おそるべし!」

横中市街をいろどる広告はすべてダークネス団のものに切り替わっている。

 さらに、街中には、

「あの曲、どこかで聞いたことがあります」

「ダークミラージュの曲であることに間違まちがいない」

とダークミラージュの歌声が流れてくる。

「もし時間を干渉かんしょうできるのなら」

「過去と未来 どっちがいい?」

「もし時間を止められるのなら」

「どんな瞬間しゅんかんにしたい?」

「私は未来からやってきたの」

「現在には存在しない」

「Time Machine に乗って」

「二人でどこかに行こう」

「誰にも秘密にするから」

「Time Limit なんてないから」

「私の辞書には」

「自由にすればいい」

「Endless Time」

それは、「Time Romance」のリミックスバージョンだった。

 その歌声をたよりに歩き続けると、なぜかポートフロンティア学園の生徒と思われる姿がちらほらと見かけた。

「会場への案内なのか!?」

「急ごう!」

「うん」

つぼみたちは岩瀬ふ頭に急行する。

 その頃、岩瀬ふ頭では、ドクターと西野先生が発表会の準備を進めていた。

「発表会の準備はできた」

「後は君にたくす」

「分かりました」

「では、健闘けんとういのる」

「おまかせください」

ドクターは西野先生をその場に残して、パラレルワールドへと帰っていく。

 「さあ、ダークミラージュ、出番だ」

「スイッチ スタート」

ダークミラージュは黒いプリンセスバトンロッドを出す。

「きっと誰かが救いの手を」

「差し伸べてくれるのなら」

「私は構わないわ」

「街に灯るネオンの光」

「もう見飽みあきちゃったの」

「そう 私はもう」

「見慣れた私ではない」

「生まれ変わるのだから」

「今」

「探しているの ほしいもの」

「時をえて 空を超えて」

「まだ見たことない宝石ほうせき

「それが黒いダイヤモンド」

「出口のないトンネル」

「答えのない質問」

「今の世界はわからないものばかり」

「そう 私はもう」

「誰にもたよらない」

「何もこわくないのだから」

「見つけたい つかみたい」

「大地をかけ 大空をかけ」

「私が勝ち取るから」

「それが黒いダイヤモンド」

「見つけたい つかみたい」

「時を超えて 空を超えて」

「夢がかなう宝石」

「それが黒いダイヤモンド」

 こうして、ダークネス団が手塩てしおにかけて温めてきたダークミラージュが歌う「黒いダイヤモンド」は、西野先生の手によって完成された。

「これで、発表会は行ける」

西野先生はこう自信をのぞかせる。

 「この時間は予定していた番組を変更して、ニュースをお伝えします。まもなく、横中の岩瀬ふ頭でダークネス団の発表会が行われます。では、現地から中継です」

「はい。こちら岩瀬ふ頭では、多くの人がめかけています」

テレビは臨時ニュースを流し、

「横中市の皆さんは、できるだけ外出をお控(ひか)えください」

横中市役所も市民に異例いれいの呼びかけを行うなど、街は厳戒態勢となった。


 そのうちに、つぼみたちはダークネス団の発表会の会場である岩瀬ふ頭へとたどり着いた。

「すごい人だかりです」

うわさを聞いて、ここに来たのね」

「これは多くの注目を集めているよ」

 すると、いち早く現場にいたプラチナがつぼみたちのもとに合流する。

「よくここまで来たんだね。でも、発表会はもうそろそろ始まろうとしている。さあ、おくへ行こうか」

「うん」

つぼみたちは、先を急ぐ。

 そこで待ち構えていたのは、西野先生だった。

「レディースアンドジェントルマン!ボーイズアンドガールズ!ご来場の皆さん、生配信をご覧の皆さん、大変長らくお待たせいたしました!ただいまから、我々われわれダークネス団による発表会の幕開けです!」

 そこには、ポートフロンティア学園中等部で多くの生徒に数学を教えていた教師の面影おもかげが完全に消えていた。

「あなたが一年一組の学級担任の西野佑先生なのね!」

「私たちを裏切うらぎるなんて、許せない!」

「これはポートフロンティア学園の歴史の中で最大のスキャンダルです!」

とつぼみたちはいきどおると、

「もう、私は君たちが知っている私ではない。さあ、本日のメインイベントだ!我々がいくつもの時間を費やしてまで完成した、新しいドールプリンセス・ダークミラージュのおでましを!」

 すると、蘭が現れた。

「あなたがダークミラージュなの!?」

「本当のことは?」

「正直に言ってください!」

とつぼみたちが問いかける。

「そうよ」

と返した蘭。

「プリンセスジュエル、セット!プリンセス・ドレスアップ!」

黒い光が蘭を包み込む。

「闇のプリンセス・ダークミラージュ、見参!プリンセスステージ、レッツスタート!」

ついに、つぼみたちの目の前にダークミラージュが現れたのであった。

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