第11話 梅雨の大荒れ天気に気をつけろ!

 ある夜遅よるおそくのこと。横中はあらし見舞みまわれていた。

「現在、横中に暴風ぼうふう警報けいほうかみなり竜巻たつまき・高潮の注意報を発令しております。くれぐれも不要不急の外出をひかえてください」

「すごい風…」

これには、つぼみも見つめるしかなかった。

 その翌朝、つぼみの家でのこと。

「おはよう!」

「おはよう。つぼみ、今日も元気だね」

「おはようございます、つぼみさん」

「じゃあ、ご飯にしよう」

「そうですね」

「では、いただきます!」

「いただきます」

「召し上がれ」

 つぼみの家族が朝食を食べていると、テレビに天気予報が流れてきた。

「おはようございます。ここからは、全国のお天気をお伝えします。今日は、東海・北陸から関東にかけて、午前中は晴れますが午後から次第に天気が急変するかもしれません。ところにより雷や突風とっぷう、竜巻を伴う可能性があります。くれぐれもお帰りの際には気をつけてください。一方、近畿きんきから西と北海道、東北は一日中晴天が続きそうですが、熱中症にご注意ください」

そのことについて、つぼみは、

「学校に行くときは、かさを持ってくるね」

と言うしかなかった。

 「では、行ってきます!」

「行ってらっしゃい」

「気を付けて」

つぼみはいつもにようにポートフロンティア学園中等部に登校していると、空は青くんでいた。

「気持ちがいい朝ね!」

つぼみはこうつぶやいた。

 その休み時間でのこと。

「ねぇ、最近は異常いじょう気象きしょうが多いよね?ゲリラ豪雨ごううも相次いで起きているようだから」

「うん。昨夜も嵐がれていたし」

つぼみたちは、最近の横中市の気象について語っている。

「今日も、午後から雨がってくるそうです。みなさんは傘を持ってきましたか?私は持ってきましたが…」

「折りたたみの傘、持ってきたよ」

わたしも」

「二人とも傘を持っているようで安心しましたね。しかしながら、帰りは気をつけてください」

「うん!」

つぼみたちは、突然とつぜんの大雨を警戒している。

 その頃、怪盗かいとうトリオは横中の海をマシーンに乗って走行していた。

「これが、海から見た横中か!」

白銀しろがね山脈さんみゃくも見えるぞ!」

ベータとガンマは、横中の街を海から見渡みわたしている。

「おっ、先に進もう!」

「急げ!」

すると、ベータとガンマは何かを見つけたようで。

「雲の赤ちゃん」

「発見!」

「これをじゅうにしよう!」

「ガッテンだ!」

ベータとガンマは、魔獣の生成に取りかる。


 今にも雨が降り出しそうな空模様の放課後。

「じゃあ、また明日」

「またね」

「またね、つぼみちゃん、晴斗くん」

下校の途についた沙奈さな。その時だった。

「大変だ!あやしい予感がする」

突然、チララが沙奈の目の前に現れて、魔獣が近くにいることを知らせる。

「どこにいるの?」

「中庭だ!」

「そうね、急ぎましょう!」

沙奈とチララは、中庭に急行する。

「ここまでおいで!」

チララは、怪盗トリオと思われる声を察知する。

「こっちだ!」

「近くに中庭が!」

その声をたよりに中庭に向かうと、ベータとガンマの姿があった。

おそかったな!」

「それはさておき」

「本日の魔獣はこちら!」

「水源の魔獣だ!」

ベータとガンマの合図で、水でできたドラゴンをかたどった水源の魔獣が現れた。

 「これは、行くしかないわ!」

沙奈は、プリンセスミラーでアクアブルーに変身する。

「プリンセスジュエル、セット!プリンセス・ドレスアップ!」

沙奈は、青い光に包まれていく。

「水と氷のプリンセス・アクアブルー、見参!プリンセスステージ、レッツスタート!」


 アクアブルーが現れると、

「さあ、雨乞あまごいだ!」

「行くぞ!」

強烈きょうれつな雨が降りしきる中、アクアブルーは魔獣の浄化にいどむ。

「横中にゲリラ豪雨をもたらすのも、魔獣のせいなのね!ずっといい天気が続かないのもあなたたちのおかげだわ!」

「ついていけるかな?」

げるぞ!」

 アクアブルーと魔獣によるいかけっこが始まった。

「こっちだ!」

「分かったわ!」

連日のゲリラ豪雨に見舞われている横中で、逃げていく魔獣をアクアブルーが追ってくる。

「何だと!?」

「すばしっこいぞ!」

アクアブルーは必死のスピードで、ターンやステップを披露ひろうしながら追いかけていく。

 すると、わかば幼稚園ようちえんの屋上にあるプールが見えてきた。

「あのプールに魔獣をおびき寄せるんだ!」

「これはナイスアイディアね!」

そこにたどり着くと、チララは冷却室のドアを開ける。

こおらせたら、動かなくなるかもしれないわ!」

「ちゅぴ!」

冷たい風を感じたのか、魔獣は凍り付いてしまった。

「あっ、アクアブルーだ!」

「強くてかわいい!」

そこに、リコとリオもやってきた・

頑張がんばって魔獣をやっつけるからね」

風邪かぜ、引かないでね」

「お姉ちゃんの友達、頑張れ!」

リコとリオは、アクアブルーにエールを送る。

「今だ!」

アクアブルーはサファイアのマジカルジュエルをプリンセスミラーにセット。その力をプリンセスバトンロッドにさずけると、

「プリンセスステージ、ライブスタート!」

アクアブルーによる魔獣の浄化がはじまった。

「青い夏の空の下で」

「君が自転車を進んでいく」

「ペダルをこいだ先には」

「私が待っているから」

おさない頃 二人で見ていた」

「あの景色を見てみたいから」

「もう一度」

「思い出の海」

「青く澄んだ世界が」

わすれられない」

「ここをたとえはなれても」

「ずっと頭の中に…」

「思い出の海よ…」

「思い出の海」

「青く澄んだ世界が」

「忘れられない」

「ここをたとえ離れても」

「ずっと頭の中に…」

「思い出の海よ…」

「サファイアのかがやきでパワーアップ!乙女おとめの美しさ!サファイア・プリズム・ブリザード!」

アクアブルーがプリンセスバトンロッドであいいろのダイヤをえがき、魔獣に向けて放つ。すると、魔獣は跡形あとかたもなく消えていった。

 「ちゅ、ちゅ、ちゅっぴー!」

と、チララが魔獣のコアから出てきたマジカルジュエルのありかを察知。そこにたどり着くと、

「キャッチ!」

とマジカルジュエルを回収することに成功した。それをアクアブルーのプリンセスミラーに認識すると、

「アクアマリン。水色のマジカルジュエルだ。名前の由来はラテン語の『海水』を意味する語から。緑柱石のうち透明とうめいで青い色のものの宝石名ほうせきめいである。和名は藍玉か水宝玉である。エメラルドより低価格で市販品の多くは緑色から黄褐色おうかっしょくの緑柱石を熱処理したもの。サンゴ、ブラッドストーンとともに三月の誕生石である。主要原産地はマダガスカル、ブラジル、シベリアなどである。意味は『海の水』である。化学組成はベリルである。結晶けっしょうけいは六方晶系で、緑のエメラルドや黄のヘリオドールを熱処理によってアクアマリンの色に変化させる事ができる。その名の通り、海の色をした宝石だが、海に投げ入れると瞬時しゅんじに溶け込んでしまうと言われるほどで、その事から古いヨーロッパの船乗りたちは、この石を海の力の宿ったお守りとして大切に持っていた。ブラジルのサンタマリア鉱山こうざん採掘さいくつされる深いマリンブルーの石が最高品質とされているが、現在は枯渇こかつ状態じょうたいである。しかし最近では他の鉱山でもこれと同様の品質の石が採掘されており、現在ではこの深いマリンブルーの物を一般的いっぱんてきにサンタマリアかサンタマリア・アフリカーナと呼んでいる。それ以外にも産地としてはスリランカ、マダガスカル、ロシア、パキスタン、アフガニスタン、インドなどが知られている。特殊とくしゅ効果こうかとして有名なものはシャトヤンシーの出るアクアマリンキャッツアイがあるが、なかなか宝石質の物が少なく非常に稀少きしょうで市場ではあまり見ない。つまり、これはほぼコレクターズアイテムとなっている」

 「それではみなさん、また次回輝く世界でお会いしましょう!プリンセスステージ、ハッピーフィナーレ!」

アクアブルーが勝利宣言すると、

「今日は勝てると思ったのに!」

「次という次こそは絶対に勝つ!」

ベータとガンマはこうなげいて、マシーンに乗ってどこかに去っていった。


 「さて、昨日の雨で水がよごれたことだし、プール掃除そうじするなら今がチャンスね!」

翌日、幼稚園の先生がプール掃除に取り掛かる。

「ふっー、早く終わってすっきりした!」

どうやら、プール掃除は案外早く終わったようだ。

 それから数日後、わかば幼稚園ではプール開きを行った。

「さあ、お待ちかねのプールだよ!」

「はーい!」

澄み渡る快晴の空の下、園児たちはプールを楽しんでいる。それを、つぼみたちは見ていた。

「楽しそうね!」

そんなつぼみたちに、幼稚園の先生がやってきた。

「リコとリオのお友達ですか?」

「そうです!」

「思わずここに来ちゃいました!」

「ありがとうございます。このおかげでいつもより早くプール開きをすることができました。本当に助かります」

先生は、魔獣を浄化したおかげでプール開きが例年より早まったと語った。

「みんな、本当に気持ちよさそう」

「私のおかげね」

「本当ですか!」

「すごいね!」

沙奈は、つぼみとアリスにこう説明する。

「梅雨のプール開きって、新鮮しんせんね」

めずらしい光景です」

「一生の思い出になりそう!」

つぼみたちは、プール開きを楽しそうに見守っていた。

 一方その頃、一年一組を通る廊下ろうかではらんは西野先生と会話をしていた。

「あの…星空さん、ちょっと態度が悪いです」

「どういうこと?」

「授業態度が悪いことだ。いい加減にしてください」

「次から直します」

西野先生に授業態度を注意された蘭だが、ロッカーにこっそりと隠れて黒いプリンセスミラーを使う。

「プリンセスジュエル、セット!プリンセス・ドレスアップ!」

黒い光が蘭を包み込む。

やみのプリンセス・ダークミラージュ、見参!プリンセスステージ、レッツスタート!」

ダークミラージュが現れると、

「さあ、何がしたいの?」

「星空さん、どうしたんだ…」

「何を求めているの?」

「星空さん…!」

「とどめね」

「うわっ!」

ダークミラージュは自身の手によって黒くにごらせたダイヤモンドのマジカルジュエルを利用して、西野先生をおどしたのであった。

 「使えない教師ね…」

ダークミラージュはこうつぶやいて、どこかに立ち去っていった。

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