第12話 ダークミラージュと星空蘭

 パラレルワールドにあるダークネス団のアジトでは、ドクターとダークミラージュがある作戦を実行しようとしていた。

「ここがダークネス団専用のレコーディングスタジオだ」

「すごく快適かいてきな場所ね」

「ああ、ここで君の歌声を録音する」

「分かったわ」

「それでは、歌の準備をお願いする」

ダークミラージュがドクターに案内されたのは、広々としたレコーディングスタジオだった。

「では、行くぞ」

「スイッチ、スタート」

ダークネス団員で構成されているバックバンドによる生演奏に合わせて、ダークミラージュは、マイクに目を向ける。

「もし時間を干渉かんしょうできるのなら」

「過去と未来 どっちがいい?」

「もし時間を止められるのなら」

「どんな瞬間しゅんかんにしたい?」

「私は未来からやってきたの」

「現在には存在しない」

「Time Machine に乗って」

「二人でどこかに行こう」

「誰にも秘密にするから」

「Time Limit なんてないから」

「私の辞書には」

「自由にすればいい」

「Endless Time」

 「いいぞ、その調子だ」

ドクターは、ダークミラージュの歌声に手ごたえを感じている様子だった。


 その翌日、つぼみたちはポートフロンティア学園の正門にいた。

「今日は、街に行くよ!」

「ワクワクするわね」

「楽しみです!」

するとそこに、らんが現れた。

「蘭ちゃん!」

「待ってましたよ」

「さあ、行こう!」

「うん!」

こうして、つぼみたちは横中の街へ向かった。

 まずは、横中中華街ちゅうかがいでランチを食べる。

「チンジャオロースに小籠しょうろんぽう!」

あんにん豆腐どうふにマンゴープリンもあります!」

「では、いただきます!」

「いただきます」

つぼみたちが中華料理を食べていると、

「おいしい!」

「初めて食べたけど、ちょうどいい味だわ」

「もっと食べたくなっちゃう!」

「思わずはしが進みますね」

と、満足した様子だ。

 その時、怪盗かいとうトリオのアルファは横中にいた。

「カシャ」

「あら、カメラのシャッター音が響いていますわ」

アルファがこう語ると、

「思いついたのですわ!本日のじゅうの素材はこれにしましたわ!」

「きゃあ!」

「いただきましたわ!」

アルファは、外国人観光客からぬすんだデジタルカメラを使って魔獣の生成に取りかる。

 「あれ、蘭は?」

「どこに行ったのでしょうか?」

「帰りを待つしかないわ」

そのとき、つぼみたちのもとから蘭がいなくなっていることに気づくと、

「カシャ、カシャ」

というカメラのシャッター音とともにアルファが現れた。

「観光客が大事にしていたカメラを盗んだのは、こいつだったのか!」

魔獣の気配けはいを察知していたチララがこういきどおると、

「あら、また会うことができて本当に光栄こうえいですわ。さて、本日の魔獣ちゃんはこちら!記憶の魔獣ですわ!」

アルファの合図で、小型カメラをイメージした記憶の魔獣が現れた。

「さあ、変身よ」

「うん」

つぼみ、沙奈さな、アリスはプリンセスミラーでドールプリンセスに変身する。

「プリンセスジュエル、セット!プリンセス・ドレスアップ!」

あいのプリンセス・ラブリーピンク、見参!」

「水と氷のプリンセス・アクアブルー、見参!」

「花のプリンセス・シトラスイエロー、見参!」

「私たち、プリンセスドールズ!プリンセスステージ、レッツスタート!」


 プリンセスドールズが現れると、魔獣が複数のコピーを作っていく。

「さあ、あばれてらっしゃい!」

魔獣がはえのように動き回る。

「どうしよう…」

「いっぱいコピーが作られていて、どれがどれだかわからないわ」

苦戦しているドールプリンセスに、チララがアドバイスを送る。

「いいか?本物を見極めるんだ!」

「分かった!」

すると、

「本物の魔獣は、中央です!」

シトラスイエローが魔獣そのものを判明し、コピーは次々と消えていった。

 「さあ、行くよ」

「うん」

ラブリーピンク・アクアブルー・シトラスイエローは、ルビー・サファイア・シトリンのマジカルジュエルをそれぞれのプリンセスミラーにセット。その力をプリンセスバトンロッドにさずけると、

「プリンセスステージ、ライブスタート!」

プリンセスドールズによる魔獣の浄化が始まった。

「Shining! かがやきを」

「いっぱい集めて」

「そのボルテージを」

「高めていこう」

「ここからまた始まる」

「私たちの物語」

「夢をかなえてみせる」

「絶対」

「Star Light Stage」

「ときめいて」

「アイドルになっちゃおう」

ずかしがらずに」

「Star Light Stage」

「一緒に」

「盛り上げていこう」

「一体感を高めて」

「Stardom!」

「ここからまた始まる」

「私たちの物語」

「夢を叶えてみせる」

「絶対」

「Star Light Stage」

「ときめいて」

「アイドルになっちゃおう」

「恥ずかしがらずに」

「Star Light Stage」

「一緒に」

「盛り上げていこう」

「一体感を高めて」

「Stardom!」

「今こそ、みんなの心を一つに!乙女おとめ結束けっそく!プリンセス・トリニティ・ストリーム!」

プリンセスドールズがプリンセスバトンロッドでそれぞれのシンボルマークをえがき、魔獣に向かって放つ。すると、魔獣は跡形あとかたもなく消えていった。

 「ちゅ、ちゅ、ちゅっぴー!」

と、チララが魔獣のコアから出てきたマジカルジュエルのありかを察知。そこにたどり着くと、

「キャッチ!」

とマジカルジュエルを回収することに成功した。それをラブリーピンクのプリンセスミラーに認識すると、

「アメトリン。むらさきと黄色が混ざったマジカルジュエルだ。むらさき水晶すいしょうのアメジストと黄水晶のシトリンがちょうどいい具合に混ざり合った希少きしょう宝石ほうせきである」

 「それではみなさん、また次回輝く世界でお会いしましょう!プリンセスステージ、ハッピーフィナーレ!」

プリンセスドールズが勝利宣言すると、

「もう、また負けちゃったんじゃないの!でも、次はゆるしませんわよ!」

アルファはこうなげいて、小型のマシーンに乗ってどこかに去っていった。


 それから、

「六十九階でございます」

「最上階につきましたよ」

「せーの!」

「ジャンプ!」

つぼみたちは、横中のランドマークであるシンボルタワーに到着した。

「スカイクロックや横中ベイタワーが見えますね!」

「今日はちょうどいい天気だから、白銀しろがね山脈さんみゃくがきれいだわ!」

「これぞ、横中で一番いい場所からの景色だね!」

つぼみたちは、シンボルタワーの最上階であるコスモガーデンから見える横中の景色を見た。

「怪盗トリオによって盗まれていたカメラを観光客のもとに取りもどすことができたし、これで一件落着だ!」

その時、チララはそう思った。

 つぼみたちが家に帰ろうとしたその時、蘭と再会した。

「あ、蘭!」

つぼみが声をかけると、蘭はそちらを振り向いた。

 「あなた、一年一組の愛沢つぼみさんと雪海沙奈さん、それに野々原アリスさん?」

「そうだよ」

「本物だわ」

「間違いありません」

「待ってたよ」

「心配してたわ」

「チララも探していましたよ」

「話があるから、ちょっとこっちにきてくれる?」

「うん」

つぼみたちは蘭に導かれて公園へ向かう。

「実は、大切なことをあなたたちに伝えるために来たの。あの…私と友達になってくれる?」

蘭からの突然とつぜんさそいを受けたつぼみたちは、

「どうしよう…」

「怪しくないか心配です」

「つぼみちゃん、どうする?」

と戸惑うばかり。

 それでも、

「私たちと同じクラスだから、友達になっていいよ」

「仲良くやっていけそう」

「もちろん大歓迎かんげいです」

「本当にいいの?なら、お言葉にあまえて」

「ありがとう!」

交渉成立こうしょうせいりつね!」

「よかったです」

こうして、つぼみたちは、蘭と友達になった。

 そして、夜になってライトアップされたシンボルタワーに、ダークミラージュの歌声が聞こえてきた。

「もし時間を干渉できるのなら」

「過去と未来 どっちがいい?」

「もし時間を止められるのなら」

「どんな瞬間にしたい?」

「私は未来からやってきたの」

「現在には存在しない」

「Time Machine に乗って」

「二人でどこかに行こう」

「誰にも秘密にするから」

「Time Limit なんてないから」

「私の辞書には」

「自由にすればいい」

「Endless Time」

 リミックスされた歌を歌い終えると、ダークミラージュはこうつぶやいた。

「覚えておきなさい、プリンセスドールズ。私には二つの顔を持っていることを。状況に応じて、仮の姿と本来の姿に変身できることを…」

この時、つぼみたちはまだ知らなかった。蘭の正体そのものということを。

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