第8話 発覚!怪盗トリオの秘密

ある日の夜、西野にしの先生せんせいのスマートフォンに突如とつじょ電話でんわがかかってくる。

「はい、もしもし」

「もしもし、ダークネス団最高責任者のドクターだ」

「ポートフロンティア学園中等部に勤務している西野と申しますが…」

「あの作戦は順調に進んでいるのか?」

「それが…」

「それがどうした?」

「まだ行っていません」

「何だと!?」

「今からやるつもりです」

「今からではもう遅い。その事業は地下ちか倉庫課そうこかが代行する」

「分かりました。では、失礼します」

「次はしっかりしてくれ。私も失礼する」

西野先生の電話の相手は、ドクターだった。

 「最近、横中市に異常現象が相次いで発生しています。先日、横中スカイワールドでもどうようの事例が起こりました。一体、なぜ発生したのでしょうか」

このように、最近の横中ではじゅうの出現が後をたず、地域住民も警戒と不安の日々を過ごすことを余儀なくされている。

「横中で起き続けている魔獣による脅威きょうい。これは、ダークネス団がボクたちによる妨害ぼうがいごうやしていることにちがいない!」

「ダークネス団とは?」

「パラレルワールドという人間界とはぎゃくの世界からやってきたかがやきを狙う悪の組織だ。世界中をやみおおいつくすことをもくろんでいる」

「それは、どうして?」

「きっと、キミたちのいる人間界とおとぎの世界に悪意を持っているかもしれない。だって、彼らの本拠地ほんきょちの周辺には、人々によって捨てられてしまった大量のごみであふれているからね」

つぼみはチララからダークネス団について知らされる。

 そのうえで、

「二人の男性に紅一点こういってんで構成されているのが怪盗トリオ。しかも、何かに変装へんそうすることもある。この三人組を知っているか?」

「うん。何度も見たことがあるけど」

「ボクたちと横中を狙っている怪盗かいとうトリオ。通称・地下倉庫課は、国際警察によって指名手配されているようだ。このポスター、どこかで見たことがあるのか?」

「うん。学校や通学路、駅にもられている」

「どうやら警察もかれらについて捜査そうさしているようだ」

と怪盗トリオは国際警察の容疑にわれているとチララは語った。

「そのことを、みんなに伝えなくちゃ」

これについて、つぼみは危機感をあらわにした。


 翌日の放課後、つぼみと沙奈さなはポートフロンティア学園中等部の正面玄関にいた。

「じゃあ、また明日ね」

「うん!」

つぼみが足早に家に帰ったその直後に、チララがけつけてきた。

「大変だ!あやしい予感がする」

「また魔獣なの?」

「そうだ!しかも、この学校関係者が魔獣の生成に関与しているらしい!」

「これはひどいわ!急ぎましょう!」

 沙奈とチララは、魔獣の居場所と思われる一年一組の教室へと急行する。そこで待っていたのは、ベータとガンマだった。

おそかったな!」

「この学校にどんな用なの!?」

「それはさておき、本日の魔獣はこちら!」

「委員長の魔獣だ!」

ベータとガンマの合図で、インバネスコートを着た学生服と眼鏡めがねを身に着けた委員長の魔獣が現れた。

 「これは、行くしかないわ!」

沙奈は、プリンセスミラーでアクアブルーに変身する。

「プリンセスジュエル、セット!プリンセス・ドレスアップ!」

沙奈は、青い光に包まれていく。

「水と氷のプリンセス・アクアブルー、見参!プリンセスステージ、レッツスタート!」


 アクアブルーが現れると、魔獣は一年一組のクラスメイトを詮索せんさくする。

西野佑たすくが担任を務める一年一組には、三十人の生徒を教えております」

「これは詮索したもの」

「すべてお見通し!」

「えっ!」

魔獣は次々と一年一組の秘密をあばいていく。

 しかし、その時だった。

「ちゅぴ!」

なんと、チララが魔獣の眼鏡をこわしたのだ。

「何だと!」

「青いチワワめ、こんな力があったとは!」

「チワワじゃないよ、チララだよ!」

チララが取ったとっさの行動に、ベータとガンマは呆然ぼうぜんとした表情だ。

「これは、お見通し、できません…」

すると、魔獣の記憶きおく媒体ばいたいが壊れてしまった。

「アクアブルー、新たな力を与えるわ」

「ブルル!」

その時、プリンセスジュエル・ブルーからブルルが現れた。

「サファイアのマジカルジュエルで浄化できるわよ」

「さあ、今がチャンスだ!」

アクアブルーはサファイアのマジカルジュエルをプリンセスミラーにセット。その力をプリンセスバトンロッドにさずけると、

「プリンセスステージ、ライブスタート!」

アクアブルーによる魔獣の浄化がはじまった。

「青い夏の空の下で」

「君が自転車を進んでいく」

「ペダルをこいだ先には」

わたしが待っているから」

おさない頃 二人で見ていた」

「あの景色を見てみたいから」

「もう一度」

「思い出の海」

「青くんだ世界が」

わすれられない」

「ここをたとえはなれても」

「ずっと頭の中に…」

「思い出の海よ…」

「思い出の海」

「青く澄んだ世界が」

「忘れられない」

「ここをたとえ離れても」

「ずっと頭の中に…」

「思い出の海よ…」

「サファイアの輝きでパワーアップ!乙女おとめの美しさ!サファイア・プリズム・ブリザード!」

アクアブルーがプリンセスバトンロッドであいいろのダイヤをえがき、魔獣に向けて放つ。すると、魔獣は跡形あとかたもなく消えていった。

 「ちゅ、ちゅ、ちゅっぴー!」

と、チララが魔獣のコアから出てきたマジカルジュエルのありかを察知。そこにたどり着くと、

「キャッチ!」

とマジカルジュエルを回収することに成功した。それをアクアブルーのプリンセスミラーに認識すると、

「ブラッドストーン。その名の通り血のようなマジカルジュエルだ。い緑色の半透明はんとうめい玉髄ぎょくすいで、赤い斑点はんてんを有するものを言う。血石、血星石、血玉石、血玉髄、ヘリオトロープとも呼ばれる。bloodstone の名前の由来は、赤い斑点が血を連想させることである。細かいつぶの石英の結晶けっしょうが集まった碧玉へきぎょくの一種で、赤色やせき褐色かっしょくの斑点がある」

 「それではみなさん、また次回輝く世界でお会いしましょう!プリンセスステージ、ハッピーフィナーレ!」

アクアブルーが勝利宣言すると、

「今日は勝てると思ったのに!」

「次という次こそは絶対に勝つ!」

ベータとガンマはこうなげいて、マシーンに乗ってどこかに去っていった。


 その翌日、事態を重く見たポートフロンティア学園は、急遽きゅうきょ講堂こうどうで臨時の全校集会を開くことになった。

「生徒の皆さん。今回の件をあまく見ないでください。決して他人ひとごとではないことを自覚してください」

校長先生がこう語ったうえで、

「自分のことは自分で守る。そのことを忘れないでください」

めくくった。

その後、つぼみたちはプラチナの家で昨日のことについて報告する。

「昨日、学校に魔獣が現れたんだって!」

「なんとかブラッドストーンのマジカルジュエルを手に入れたんだけどね」

「学校に被害が出なかったことが、不幸中のさいわいです」

「それは何よりだ」

プラチナはつぼみたちの様子を知って安心した様子。

 「しかし、最近はここに魔獣が襲来してくることが多くなっている。中には、甚大じんだいな被害をもたらしてくるものもいるようだ」

「つまり、魔獣を送り込んでいる正体が怪盗トリオだということ!?」

「本当だ。彼らはパラレルワールドからやってきた刺客しきゃくだからね」

プラチナが、魔獣を送り込んでくる正体が怪盗トリオだと明かすと、

「その理由としては、人々がものを大切にしていることを逆手さかてに取っていることが挙げられている。その名の通り、怪盗トリオは窃盗せっとうや万引きといったものをぬすんでくる事件を繰り返しているからね」

「じゃあ、怪盗トリオはよくここを訪れるの?」

「そうだ」

怪盗トリオがほぼ毎日未来世界から横中を訪れることを、プラチナが明らかにした。

「じゃあ、私たちが止めなくちゃ」

「みんながいるなら、こわくないからね」

「彼らにもきっと心の傷があるかもしれません」

つぼみたちも、怪盗トリオを警戒しているとともに、彼らには何かしらのなやみがあることを示唆しさした。

 一方その頃、ダークネス団アジトの入り口のロビーでは、

「緊急事態ですわ!」

「何だと!?」

「今すぐこっちに来るのですわ!」

「ガッテンだ!」

ダークミラージュがアジトを出ようとするところを、ドクターの命令で来ていた怪盗トリオに目撃もくげきされてしまう。

「ちょっと待ちなさい!」

「おい!」

「やめろ!」

怪盗トリオがダークミラージュを制止しようとするも、それをり切ってしまう。

「会いたい人がいるわ。気になる人を人間界で発見したので」

と言い残すと、

「あの小娘こむすめ、何をするつもりよ!?」

とアルファが言い放って、ダークミラージュはビルを出ていった。

「今から、横中に行ってくるわ…。目的を果たすために…」

ダークミラージュは横中へと飛び立つ。その右手には、黒いプリンセスバトンロッドを持っていた。

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