第7話 ワクワク!晴斗と初デート

 ある日のポートフロンティア学園での昼休みでのこと。

「つぼみ、今度の日曜日の予定は空いているのか?」

「もちろん!」

「じゃあ、二人で遊園地に行こう」

「ありがとう!」

「日曜日、つぼみの家で待っているから」

「うん!」

つぼみは晴斗からのさそいを引き受けると、

「晴斗くんと二人きりでお出かけするなんて、とっても楽しみ!」

むねふくらませていた。

 その様子を沙奈さなとアリスは、

「つぼみちゃんと晴斗くんが二人でお出かけするなんて、ドキドキするわね!」

「二人にとって、デートは絶好のチャンスです!」

と二人の関係に興味を持っている。

 「つぼみちゃんと晴斗くん、おさないころからずっと一緒らしいよ」

「そうですか。まったく知りませんでした」

「確か、つぼみちゃんが転んだとき、晴斗が助けてくれたことを聞いたような…」

 それは、小学校五年生のころ、林間学校で起こった出来事だった。

「きゃー!」

「つぼみ、大丈夫?」

「左足がちょっと…」

「ん?ひざり傷がある。ちょっとばんそうこうをるから、動かないでね」

「うん」

 晴斗は、ケガをしてしまったつぼみの左膝に傷ばんそうこうを貼る。

「ありがとう!晴斗くん」

「どういたしまして」

つぼみは晴斗に助けてもらい、二人の思いを強くした。

 「なるほど、そんなことがあったのですね」

「これはとっても素敵なエピソードね!」

つぼみと晴斗が幼稚園ようちえんのころからの幼なじみであることは、沙奈とアリスにも知れわたっているようだ。

 その頃、ダークネス団の地下ちか倉庫そうこでは、

「ガンマ、お前にこれをあげよう!」

「くれるのか?もらうぜ!」

怪盗かいとうトリオの開発主任であるベータが、雑用係のガンマにスマートフォンを支給していた。するとその時、

「あら、わたしたちに何か用はありますの?」

「人間界に行きたい気がするわ。早速行ってもいい?」

「よろしいですわ。でも、あなた一人だけでは危険ですから、私もついていきますわ」

「そうね。なら、行こう」

「ベータ、ガンマ、廊下ろうかそうしてちょうだい!」

「ガッテンだ!」

こうして、ダークミラージュはアルファとともに横中へと向かった。


そして、待ちに待った日曜日。

「それじゃあ、行ってきます!」

「行ってらっしゃい」

つぼみが家を出ると、晴斗が待っていた。

「待たせたね」

「晴斗くん、スカイワールドへ出発しよう」

「そうだね」

つぼみと晴斗は、横中スカイワールドという遊園地へと向かう。

 そこには、多くのお客さんの姿があった。

「週末だから、多くの人たちが訪れているみたい」

つぼみと晴斗は、入口へ向かう。

「ようこそ、横中スカイワールドへ!何名様ですか?」

「中学生二人です!」

「今日は、高校生以下無料の日ですので、どうぞお入りください!」

「ありがとうございます!」

「では、ごゆっくりどうぞ」

つぼみと晴斗は、横中スカイワールドの園内に入る。

「まずは、どこから乗ろうかな?」

「観覧車に乗ろう」

「そうだね」

「スカイワールドのランドマーク!」

「さすがだね、つぼみ」

つぼみと晴斗は、スカイクロックという観覧車に乗る。

 「あっ、見えたよ」

「シンボルタワーに白銀しろがね山脈さんみゃく!」

「横中マリンブリッジも!」

「小さくなって見える!」

ジオラマのように見える横中の風景を、つぼみと晴斗は観覧車のてっぺんから見下ろしていた。

 「すごい!」

「なんてスピードだ」

その後もジェットコースターに乗ったり、

「て、手、つないでいい?」

「いいよ」

メリーゴーランドにも乗ったつぼみと晴斗は、初めてのスカイワールドを満喫まんきつしていた。

 そんな中、アルファとダークミラージュも横中スカイワールドに潜入せんにゅうしていた。

「ねえ、課長さん。このメリーゴーランドが乗りたくなってきたわ」

「そうですわ。でも、私たちはお金なんて持っていないのですよ」

「それなら、私に任せて」

ダークミラージュによって、メリーゴーランドは乗っ取られてしまった。

「これをじゅうにするのはいかがいたしましょうか?」

「そうね」

ダークミラージュとアルファは早速魔獣の生成に取り掛かる。

 「お待たせしました!クリームソーダとオレンジジュースです」

「ありがとうございます!」

「では、ごゆっくりどうぞ」

「さあ、飲もうか」

「いただきます!」

つぼみと晴斗はカフェで一休み。その時、チララがつぼみのカバンから出てきた。

「大変だ!あやしい予感がする」

「また魔獣が!?」

「今度はメリーゴーランドで魔獣の気配けはいを察知した。今すぐそこに行こう!」

「うん!晴斗くんはここで待ってて!」

「分かった!」

つぼみとチララは、メリーゴーランドへ向かう。

 そこで待っていたのは、アルファの姿だった。

「あら、またお会いすることができて光栄こうえいですわ。では、本日の魔獣ちゃんはこちら!舞踏会ぶとうかいの魔獣ですわ!」

アルファの合図で、シンデレラをほうふつとさせる舞踏会の魔獣が現れた。それも、白馬で動いているかぼちゃの馬車に乗って、シンデレラが現れるという本物そのままの光景だった。

「さあ、変身よ」

つぼみは、プリンセスミラーでラブリーピンクに変身する。

「プリンセスジュエル、セット!プリンセス・ドレスアップ!」

つぼみは、ピンクの光に包まれていく。

あいのプリンセス・ラブリーピンク、見参!プリンセスステージ、レッツスタート!」


 ラブリーピンクが現れると、魔獣がこちらに向かっておそいかかってくる。

「さあ、やっちゃいなさい!」

「きゃー!」

「オーホッホッホッホッホ!これで私たちが勝利することは間違まちがいありませんわ!」

ラブリーピンクは、思わず魔獣に大苦戦。

 その時、カフェにとどまっていた晴斗は何かを思いついた。

「今頃、ラブリーピンクは魔獣との戦いに苦しんでいる。そうだ。時計を十二時に合わせてみるしかない。子供のとき、十二時にお城のかねが鳴るとシンデレラの魔法が解けることを聞いただから」

すると、時計のはりがちょうど十二時になった。

「もう十二時になったのですわ!早くお家に帰りますわよ!」

すると、魔獣の左足からガラスのくつが落ちてきた。

「今がチャンスだ!」

「うん!」

ラブリーピンクはルビーのマジカルジュエルをプリンセスミラーにセット。その力をプリンセスバトンロッドにさずけると、

「プリンセスステージ、ライブスタート!」

ラブリーピンクによる魔獣の浄化が始まった。

「Tell me 私に」

「愛の本当の意味を」

「答えてくれるのなら」

「きっと変わるはず」

「たとえ遠くはなれても」

「会えなくなってしまっても」

「心の中でつながっている」

「君に向けて I love you」

「向かい風にかれても」

「君を感じて I feel you」

「私だけのLove Song」

「君に届いて I want you」

「一日だけのステージ」

「君を信じて I need you」

「私だけのLove Song」

「君に向けて I love you」

「向かい風に吹かれても」

「君を感じて I feel you」

「私だけのLove Song」

「ルビーのかがやきでパワーアップ!乙女おとめの愛!ルビー・スイート・ハート!」

ラブリーピンクがプリンセスバトンロッドでいピンク色のハートをえがき、魔獣に向けて放つ。すると、魔獣は跡形あとかたもなく消えていった。

 「ちゅ、ちゅ、ちゅっぴー!」

と、チララが魔獣のコアから出てきたマジカルジュエルのありかを察知。そこにたどり着くと、

「キャッチ!」

とマジカルジュエルを回収することに成功した。それをラブリーピンクのプリンセスミラーに認識すると、

「ジェード。青緑のマジカルジュエルだ。ジェードの別名である翡翠ひすいは『こうぎょく』と『なんぎょく』の二種類があり、化学的や鉱物学的こうぶつがくてきに異なる物質である。宝石ほうせきとしての翡翠は五十パーセント以上のヒスイ輝石きせきが含まれたヒスイ輝石岩を指す。それ以外のものは基本的には資産価値にとぼしいとされる。価値の高い宝石の中で硬度が低く、すなより硬度がおとるため傷がつきやすい。しかし翡翠は、硬玉も軟玉も内部で針状から繊維状せんいじょうの小さい結晶が複雑にからみ合った鉱物で、鉱物の中で最も割れにくい性質を持つ。ダイヤモンドは最高の硬度だが、特定の角度から衝撃しょうげきを与えると簡単に割れる。翡翠は細かな結晶けっしょうの集まりであるため、衝撃に弱い方向というものが存在しないが、鉱物としては強靭きょうじんでも、天然翡翠では、ヒビや石目があると割れることもあり、取りあつかいに注意することが必要である。日本では翡翠は深緑の宝石の印象を持つ人が多いが、他にも、ピンク、薄紫うすむらさき半透明はんとうめい、白、青、黒、黄、オレンジといった様々な色があり、大きく分けて、十五色程度と言われている。化学的に純粋じゅんすいなヒスイ輝石の結晶は無色だが、翡翠は細かな結晶が集まるため白色である。翡翠が様々な色を持つのは、石に含まれる不純物や他の輝石の色のためである。翡翠の緑色には二つの系統あり、あざやかな緑のものはクロムが原因で、コスモクロア輝石の色である。もう一つの落ち着いた緑は二価鉄によるもので、オンファス輝石の色である。同じ緑色でも日本と東南アジアでは好みがことなり、日本では濃い緑のものが、価値が高いが東南アジアでは色の薄いものが好まれる。ただし、比較的ひかくてき安価あんかな石の事で、どの国でも最も珍重ちんちょうされるのは琅玕ろうかんクラスの石である。また、翡翠は半透明というイメージだが、品質の良い石はトロっとしたテリのある透明感がある。緑の次に人気のラベンダー翡翠は、日本のものはチタンが原因でやや青みがかっている。またミャンマー産は鉄が原因でありべに紫色むらさきいろが強い。黄、オレンジは、つぶの間にある酸化さんかてつの影響であり、黒いものは炭質物が原因である。これらは、一般的いっぱんてきには資産価値がない。日本ではオレンジ系の翡翠は産出されていない。青は、ヒスイ輝石に存在せず、主にオンファス輝石の色による。日本の翡翠中から見出される青い鉱物は、糸魚川いといがわいしという新鉱物であることが発見されている。翡翠が産出される場所は全て造山帯で、主にじゃもん岩中がんちゅうに存在する。蛇紋岩は地殻の下のマントルに多く《ふく》含まれる橄欖岩かんらんがんが水を含んで変質したもので、プレート境界付近で起こる広域変成作用でできる岩石である。一方のプレートが他のプレートの下にもぐり込むことで広域変成作用が起こり、同時に激しい断層活動で地上にみだされることで蛇紋岩は地表付近に出現する。その途中でアルビタイトや変斑糲岩へんはんれいがん(へんはんれいがん)、へん玄武岩げんぶがんを取り込むことがあり、高い圧力でナトリウムやカリウムを含む溶液と反応して翡翠に変化したと考えられる。曹長そうちょういしに高い圧力をかけて起こる固相反応で、ヒスイ輝石は低温高圧でできると考えられてきたが、翡翠に石英がほとんど存在せず、沸石類ふっせきるいのような低圧鉱物との共生も見られるため、くわしい成因は今後の研究が待たれている」

 「それではみなさん、また次回輝く世界でお会いしましょう!プリンセスステージ、ハッピーフィナーレ!」

ラブリーピンクが勝利宣言すると、

「もう、また負けちゃったんじゃないの!でも、次はゆるしませんわよ!」

アルファはこうなげいて、小型のマシーンに乗ってどこかに去っていった。それに対して、ダークミラージュは、

「すごく気になる人を見つけてしまった。私と同じ年の女の子を」

と何かを気にしながら、どこかへ去っていった。


 「つぼみの家、ここで合っているかな?」

「そうよ」

「学校から近いのか?」

「まあまあ」

「つまり、徒歩で通っているのか」

「そうね」

晴斗はつぼみの家のインターフォンをす。

「お邪魔じゃまします」

「どうぞ、中に入って」

「ありがとう!」

すると、つぼみのパパがむすめの帰りを待っていた。

「ただいま!」

「お帰りなさい」

「さあ、おやつにしよう」

「そうですね」

 つぼみのパパがおやつを持ってくる。

「今日のおやつはシュークリームです」

「晴斗くん、一緒に食べよう」

「うん」

「ボクも食べる!」

「では、いただきます!」

「いただきます」

「召し上がれ」

つぼみは、晴斗とチララとともにシュークリームを食べる。

「このシュークリーム、すごくおいしい!」

「カスタードクリームとホイップクリームの組み合わせもいい感じだな」

その時、晴斗のスマートフォンにプラチナから電話がかかってくる。

「もしもし?」

「もしもし、マジカルジュエルの回収は順調に進んでいるか?」

「ああ。今日はつぼみと一緒にデートをしたんだけれど、そこでもマジカルジュエルを手に入れることに成功した」

「なるほど、そんなことがあったのか。それなら、本当によかった。これからもマジカルジュエルの回収を続けてくれ」

「わかった。つぼみにも伝えていく」

晴斗はプラチナに例のことを報告した。

 一方その頃、ダークミラージュは横中スカイワールドでの出来事を語る。

「横中スカイワールドで見かけた少女、彼女の首にかけている宝石、鮮やかなピンクの輝きを放っている…これは、私たちと対立しているのかしら?もう少しだけ様子を見なければならないわ」

ダークミラージュは、つぼみがラブリーピンクであると理解しているようだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る