第2話 水と氷のプリンセス・アクアブルー

 人間界と真逆まぎゃくの位置にあるパラレルワールドには、怪盗かいとうトリオの本拠地がある。

「前回、ドールプリンセスと名乗る少女にやられちゃったんじゃないの!」

「同じてつを踏まないためには」

「どうすればいいのか?」

地下倉庫そうこで作戦会議を行っている怪盗トリオ。

 すると、地下倉庫のモニターにあやしい男の姿が映った。

「作戦は失敗に終わってしまったのか!?われらが『ダークネス団』の看板かんばんどろるようなことはゆるさないぞ!」

ダークネス団のボスであるドクターが怪盗トリオに説教すると、

「そんなことより、早くかがやきをうばいに行け!」

「了解ですわ!ベータ、ガンマ、つべこべ言わずに行きますわよ!」

「ガッテンだ!」

怪盗トリオは気を引きめて作戦に取り掛かった。

 一方そのころ、つぼみはいつも通りの朝をむかえた。

「おはよう!」

「おはようございます、つぼみさん。そうそう、この間友人から美術館の鑑賞かんしょうチケットを二枚手に入れましたが、つぼみさんに差し上げますよ」

「ありがとう!」

「友達をさそって、行ってみてくださいね」

つぼみが美術館のペアチケットを手に入れたその時、テレビにつぼみと同年代のモデルが映った。

「続いては、旬のトレンドをいち早くキャッチする、トレンドウォッチです!」

「本日のトレンドウォッチは、雪海沙奈ゆきみさなが担当します!」

雪海沙奈。彼女かのじょは、長い黒髪くろかみと青いひとみ特徴とくちょうの十二歳の少女だ。

「テレビや雑誌ざっしなどで活躍かつやくしている沙奈ちゃんは、今回が番組初出演です」

すると、つぼみが、

「あの子、私たちと同世代に大人気のタレントだよ!今度、会ってみたいな!」

と、沙奈に会いたいと感じた。

 「では、行ってきます!」

「行ってらっしゃい。気を付けて出かけるんだよ」

つぼみが家を出てしばらくすると、

「あ、沙奈ちゃん!」

公園で沙奈がドラマ撮影を行っているところを見かけた。

「あら、わたしのことを知っているのね!撮影が終わったらお話ししましょう!」

ドラマの撮影が終わった後、つぼみと沙奈は話をする。

「私、愛沢あいざわつぼみ!私のことは、つぼみと呼んでね!」

「私は雪海沙奈。女優業じょゆうぎょうやモデルをこなしているの。よろしくね」

つぼみと沙奈は出会ってすぐに仲良くなり、

「そういえば、美術館のペアチケットを持っているけど、沙奈も一緒に行く?」

「いいわよ!」

「じゃあ、明日にお気に入りのカフェで待ってるね!」

「ええ!」

こうして、つぼみは沙奈とともに美術館に行くことになった。


 その翌日、約束のカフェで、

「つぼみちゃん、おそいね…」

沙奈がつぼみを待っていると。

「ごめん、寝坊ねぼうして遅刻ちこくしちゃった!」

「でも、いいわよ。せっかくここに来たのだから、行きましょう!」

つぼみと沙奈は、美術館へと向かう。

 そこでは、世界中の芸術家たちの作品を集めた展覧会が開催かいさいされている。

「ゴッホのひまわりやミレーの落ち拾い、すごく芸術的な作品!」

「これはとっても素敵ね!」

つぼみと沙奈は作品に感心している。

 その頃、警備員に変装へんそうした怪盗トリオは、美術館に潜入せんにゅうした。

「あら、なんてアーティスティックな作品がそろっているのですと」

「おっ、いい作品だぞ!」

「これはよい魔獣まじゅうが生み出せそうだ!」

怪盗トリオは、中心にある巨大な像を発見し、魔獣の生成に取り掛かる。

 しばらくたった後、美術館に、

「ゴゴゴゴゴゴゴ…」

という地割れのような音が響いた。

「ジリリリリリリ…」

「非常ベルが鳴りました。お客様は速やかに安全な場所に避難ひなんしてください」

地震じしんか?」

「とりあえずげろ!」

その音が地震と感じた見物客たちは、美術館の外へと避難する。

「これはもしかして…」

いやな予感がするわ」

つぼみと沙奈が怪しい予感を感じた矢先、背後から魔獣と怪盗トリオが現れた。

「あら、ついに例の小娘ちゃんを見つけましたわ」

「さあ、本日の魔獣はこちら!」

「ゴーレムが動き出したぞ!」

怪盗トリオの合図で、ゴーレムをかたどった鉱物こうぶつの魔獣が現れた。

「つぼみちゃん、ここは協力しましょう!」

「沙奈もドールプリンセスなの!?」

「そうよ。でも今は、そういう時間はないわ。さあ、変身よ」

「うん!」

この状況を重く見たつぼみと沙奈は、プリンセスミラーでドールプリンセスに変身する。

「プリンセスジュエル、セット!プリンセス・ドレスアップ!」

「愛のプリンセス・ラブリーピンク、見参!」

「水と氷のプリンセス・アクアブルー、見参!」

「プリンセスステージ、レッツスタート!」


 ラブリーピンクが、何段のフリルで重なっているスカートにビスチェ風の青いドレスに長い黒髪を結んだポニーテールを青い宝石ほうせきが散りばめられているティアラでかざった姿のアクアブルーとともに現れたことに、怪盗トリオは驚きを隠せない。

「ドールプリンセスが」

「また来やがって」

「何よ、まさかの展開が出てくるなんて!」

しかし、怪盗トリオは燃えている。

「でも、私たちも行きますわよ!」

「今日は負けられない!」

「連敗だけは勘弁かんべんだ!」

魔獣がおそかっていく中でも、チララはラブリーピンクとアクアブルーに指示を出す。

「いいか?一人ではできないことでも、二人の力を合わせるとできるという言葉を知っているのか?そこで、二人で協力して魔獣をやっつけてほしい」

「私たちは、何をしたらいいの?」

「左右に分かれて攻撃こうげきするんだ!」

「私が右半分を攻撃するから、ラブリーピンクは左半分をお願いね」

「わかった!」

 ラブリーピンクとアクアブルーが作戦会議を行った後、曲が流れてきた。

「よし、行くわよ!」

「二人のハーモニー!」

「プリンセスステージ、ライブスタート!」

「暗くて深い やみの向こうに」

「一人さびしく たたずんでいた」

「だけどもう こわがらないで」

「それは迷いを 断ち切ったしるし」

「春風に向かって 旅立っていく」

「さあ 夢のとびらを開こう」

「輝く未来に向かって 放つよ私だけのメロディ」

「愛を守るため みんなを守るために」

「きらめく世界に奏でる 私とあなたのハーモニー」

「あなたのそばにいる それがプリンセスなんだから」

ラブリーピンクが魔獣の左半分を攻撃すると、魔獣の左手と左足は動かなくなった。

「次は、アクアブルーの番だよ」

「ええ」

アクアブルーに、出番が回ってきた。

砂漠さばくの街に 住んでいても」

「氷でおおわれた 場所にいても」

「心はいつだって 一つだから」

「それは つながっているしるし」

さくらう空 勇気を出して」

「さあ 一歩前へとみ出そう」

「輝く今へと響く みんながつなぐメロディ」

「世界を守るため 宇宙を守るために」

「きらめく夢を目指して 一つになったハーモニー」

「みんなのためにいる それがプリンセスなんだから」

すると、魔獣の右手や右足も動かなくなった。

「さあ、ユニゾンしましょう」

「うん」

仕上げは二人で攻撃する。

「人はみんなときめいている」

「だから ずっとわすれないで」

「心の輝きを信じて」

「輝く未来に向かって 放つよ私だけのメロディ」

「愛を守るため みんなを守るために」

「きらめく世界に奏でる 私とあなたのハーモニー」

「あなたのそばにいる」

「みんなのためにいる」

「それがプリンセスなんだから」

乙女おとめの美しさ!アクア・プリズム・ブリザード!」

アクアブルーがプリンセスバトンロッドで青いダイヤをえがくと、

「乙女の愛!ピュア・スイート・ハート!」

ラブリーピンクもこれに続いた。すると、魔獣は跡形あとかたもなく消えていった。

 「ちゅ、ちゅ、ちゅっぴー!」

と、チララが魔獣のコアから出てきたマジカルジュエルのありかを察知。そこにたどり着くと、

「キャッチ!」

とマジカルジュエルを回収することに成功した。それをアクアブルーのプリンセスミラーに認識すると、

「サファイア。鮮やかなブルーに輝くマジカルジュエル。言葉の由来は「青色」を意味するラテン語の「sapphirus」、ギリシャ語の「sappheiros」である。コランダムの中で宝石としての価値があり、赤色ではないものをいう。不純物の違いでい赤色のものはルビーとなる。「青玉」という和名のように、濃紺のうこん青紫色あおむらさきいろをしたものと考えられているが、濃い赤色以外の様々な色、たとえば黄色や茶色、薄紅色うすべにいろなどのものもサファイアである。工業用に生産される単結晶コランダムもサファイアと呼ばれる。ミッドナイトブルーサファイアとして流通するサファイアがあるが、インクブルーサファイアの色合いを呼び変えたものだ」

 「それではみなさん、また次回輝く世界でお会いしましょう!プリンセスステージ、ハッピーフィナーレ!」

ラブリーピンクとアクアブルーが勝利宣言すると、

「もう、また負けちゃったんじゃないの!」

「今日は勝てると思ったのに!」

「次という次こそは絶対に勝つ!」

怪盗トリオはこうなげいて、マシーンに乗ってどこかに去っていった。


 その後、

「お待たせしました。ガトーショコラとアイスレモンティーのセットと、ストロベリーショートケーキとオレンジジュースのセットでございます。ご注文は以上でよろしいでしょうか?」

「はい!」

「では、ごゆっくりどうぞ」

「いただきます!」

つぼみと沙奈は、家族とともによく訪れるというカフェにいた。そう、朝の待ち合わせ場所とは、この場所のことだ。

「そういえば、沙奈はどうしてアクアブルーになったの?」

「東京から引っしてきたときに、ドールプリンセスとしての力が目覚めたの。実は、私の芸能活動をより充実するために、中学校進学をきっかけにここに来たということ」

「えっ!それで、家族はどうしているの?」

「大学に通っているお兄ちゃんの家に住むことになったわ。医療従事者の両親を東京に残してね」

「そんなことがあったんだね」

沙奈が衝撃的しょうげきてきな事実を明かしたことに、戸惑いながらも理解をするつぼみ。

 さらに、沙奈が身に着けている青いダイヤの形をしたペンダントのプリンセスジュエル・ブルーから妖精ようせいが現れた。

「初めまして。私はプリンセスジュエル・ブルーの妖精、ブルルよ。よろしくね」

「よろしく、ブルル」

つぼみがブルルに挨拶あいさつすると、ピンクのハート形をしたプリンセスジュエル・ピンクからピルルが現れた。

「ようやく会えたね、ピルル」

「ピルル、この時をずっと待っていたわ」

「沙奈とブルルもよろしくね!」

「これで仲間が増えた!」

つぼみと沙奈、ラブリーピンクとアクアブルーの二人のドールプリンセスが仲間になったことをチララは歓迎かんげいした。

「そうそう。私はポートフロンティア学園の中等部に一般ルビを入力…(いっぱん)入試にゅうしで合格してここに通うことが決まっているけど、沙奈はどこの中学校に通うの?」

「つぼみちゃんと同じ学校よ!しかも、推薦すいせん入試にゅうしで合格したわ!だって、芸能活動と両立できるからね!」

「よかったね!」

そんなつぼみと沙奈のやり取りを、一人の少年が見ていた。

「つぼみとまた同じ学校に通えるとは、本当にうれしいと思う」

少年はつぼみを心待ちにしている様子。

「待っていて、つぼみ。必ず同じクラスで会えることを」

どうやら、少年はつぼみのことを熟知しているようだ。

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