Let's Go! ドールプリンセス~心の輝きを信じて~

見習いさん

First Season

はじまり

第1話 誕生!愛のプリンセス・ラブリーピンク

 人々はみんな、心の中にかがやきを持っている。大人だけではなく、男の子、女の子、高齢者こうれいしゃ、心身に障害しょうがいのある人、遠い国にいる人、はだが黒い人、まずしい生活を余儀なくされている人、そしてこれから生まれてくるであろう赤ちゃんまで…。一人一人、それぞれ個性がちがった輝きを秘めている。

「底知れぬ輝きを持つ少女には、やみの力から世界を守る権利があるのです」

人間界から遠くはなれた「おとぎの世界」では、古くからこんな言い伝えがあるという。

 ある春の日の朝、人間界にいる一人の少女がベッドから目をました。

「は!お、おはよう!」

彼女の名前は、愛沢あいざわつぼみ。もうすぐ中学生になる女の子だ。

「パパとママが待っている!急がなくちゃ!」

つぼみがパジャマから私服しふくに着替えると、

「今日も頑張がんばるよ!」

と、むねまであるチョコレート色のかみさくらのようにあわいピンクのリボンで結んで、ツインテールに結んで、かがみに向かって語った。

 「おはよう!」

「つぼみちゃん、おはよう」

「おはようございます。朝食はもうできていますよ」

つぼみは、専業せんぎょう主夫しゅふのパパが作った朝食を、イラストレーターのママと一緒に食べる。

「では、いただきます!」

「いただきます」

「パパの作った料理は、すごくおいしい!」

「ありがとうございます。オムレツを気に入ってくれてうれしいです」

朝食を食べた後、

「ごちそうさま!」

「それじゃあ、アトリエに行かなくちゃね!」

「気を付けてくださいね」

つぼみのママは、アトリエへ仕事に向かった。

「つぼみさんの今日の予定はどうなさっていますか?」

「特にないけど…。ちょっと外に出かけてくるね!」

「いってらっしゃい。くれぐれもあやしい人たちには気を付けて」

「はい!」

つぼみはパパに向けて手をりつつ、元気よく家を出た。


 「今日もいい天気だね!」

外に出たつぼみ。すると、

「わわわわわわわー!」

というさけび声とともに、なぞの生き物が空から落ちてくる様子を目撃もくげきした。

「何か、あるかもしれない!行ってみよう!」

つぼみは、声が聞こえてくる方へと向かう。そこには、

「助けて…」

という声が聞こえてきた。すると、つぼみは、

「ここに例の声の主がいるかも!」

と、謎の生き物がいると察知して、ファンシーなおもちゃ屋へと向かう。

 そこには、ピンクのリボンを付けた青いぬいぐるみが売られていた。しかも、実際に動いている。

「このぬいぐるみ、すごくかわいい!」

かわいいものに目が行きがちなつぼみだが、

「あれ?動いている」

「キラキラ輝く女の子、見つけた!」

青いぬいぐるみは、とっさにつぼみの方を振り向いた。

「びっくりしちゃって、ごめんね。ボクは青いチンチラの男の子、チララだ」

わたしの名前は、愛沢つぼみ。よろしくね。それにしても、このチワワはかわいいなぁと」

「チワワじゃないよ、チララだよ!とはいえ、助けてくれてありがとう。こちらこそよろしく」

チララとつぼみは、互いのことを紹介した。

 「チララ、どうしてここにいるの?」

「未知なる輝きを秘めた少女を探すためだ。つぼみのその一人だと思って」

チララが人間界にやってきた理由を語り始めた途端とたん、何かと怪しげな三人組が現れた。

「おやまあ、かわいい小娘こむすめちゃんを見つけましたわ」

「ついに見つけたぞ!」

おれたちが探していたものを!」

 怪しい三人組は、つぼみとチララをターゲットにした。

「ひとまず、げなくちゃ!」

「わかった!」

つぼみとチララは、必死で怪しい三人組を追いかけるべく、おもちゃ屋を後にした。


 しかし、その向こうにある公園では、モンスターらしき生き物が。

「怪しい予感がする!」

「行くしかない!」

そこには、先ほどの三人組の姿があった。

「あら、またお会いすることができて本当に光栄こうえいですわ!」

「見つかったぜ!」

「もう逃げられないぞ!」

怪しい三人組も、自分たちのスマートフォンに組み込まれている位置情報システムを駆使くしして、つぼみとチララの居場所を特定できたという。

「誰なの?あの不審者ふしんしゃは?」

「私たちを不審者呼ばわりするなんて、ひどいですわ!」

「お前、まだ学生なのか!?」

「決してこわくないぞ!」

つぼみが怪しい三人組を不審者と呼んだことに、本人たちは困惑する。そういうときのために、怪しい三人組は自己紹介をねた口上を述べる。

「そうそう、私たちの自己紹介がまだでしたもの」

「いってみよう!」

「俺たちのことを!」

「誰かの声が聞こえたのなら」

「すかさずここにやってくる」

「世界の危機を救うため」

「今日も明るく出動だ!」

「レッド・アルファ!」

「ブルー・ベータ!」

「グリーン・ガンマ!」

「三人そろって、神出鬼没しんしゅつきぼつ怪盗かいとうトリオ!」

「なんてな!」

その正体は、人間界から遠く離れた世界からやってきた怪盗トリオだった。

 リーダーで紅一点こういってんのアルファは、

「本日のじゅうちゃんはこちら!昆虫こんちゅうの魔獣ですわ!」

と、クモをイメージした昆虫の魔獣を呼び出した。

「ところで、魔獣ってどんなものなの?」

「そんな小娘に説明しよう!」

「我々が時空のかなたで愛情をこめて育て上げたモンスターだ!」

 怪盗トリオは少々複雑な気持ちで、つぼみに魔獣について説明する。

「どうしよう…。私が魔獣を退治できるかな…」

と、不安がるつぼみ。すると、クモの幼虫ようちゅうをイメージした魔獣の手下が、街の人たちを次々とおそう。

「キャー!」

「助けてくれ!」

しかし、その時だった。チララのしっぽにおさめていたピンクの宝石ほうせきが光りだした。

「プ、プリンセスジュエルが輝いている!」

「どういうことなの?」

「ジュエルがキミを選んだようだ」

 すると、ピンクのプリンセスジュエルから妖精ようせいが現れた。

「初めまして、私はプリンセスジュエル・ピンクの妖精、ピルルよ。愛沢つぼみ、あなたが私によって選ばれたドールプリンセスなの」

「本当に!?」

「そう。その証としてプリンセスミラーとプリンセスジュエルをわたすわ。大切に持っていてね」

つぼみはピルルから、変身コンパクト・プリンセスミラーとペンダント状のプリンセスジュエル・ピンク、指輪状のプリンセスジュエル・ホワイトを手に入れた。

 「必ずみんなを守って見せる!さあ、変身よ!」

つぼみは早速、ドールプリンセスに変身する。

「プリンセスジュエル、セット!プリンセス・ドレスアップ!」

つぼみはピンクの光に包まれ、ドールプリンセスに変身する。

「愛のプリンセス・ラブリーピンク、見参!プリンセスステージ、レッツスタート!」

つぼみは、かざりボタンとプリーツスカートが特徴的とくちょうてきでピンクと白を基調としたコスチュームに、ボリュームが大きくなったツインテール姿のラブリーピンクに変身した。

「このコスチューム、すごくかわいい!」

ラブリーピンクは、リボンやピンクが多くあしらわれている自身の衣装いしょうを気に入っているようだ。


ラブリーピンクが現れると、

「な、なんと!?この小娘ちゃんがすごい力を持っていますとは!でも、くじけずに行きますわよ!」

アルファの合図で、魔獣が攻撃こうげきを仕掛けてきた。それに対して、ラブリーピンクは次々と回避かいひしていく。

 すると、チララはラブリーピンクに指示を出す。

「ドールプリンセスは歌とダンスで戦う伝説の戦士。そこで集めた輝きで、魔獣を浄化するんだ!」

と、チララがラブリーピンクにこう呼びかけると、魔法のつえが出てきた。

「プリンセスバトンロッド。あなたの武器よ」

「さあ、キミの番だ」

「うん!」

ラブリーピンクはピルルから、トワリング用のバトンと魔法の杖を組み合わせたプリンセスバトンロッドを受け取った。

 すると、曲が流れてきた。

「この曲、初めて聞いた!」

「さあ、歌って、ラブリーピンク」

イントロが流れた直後にラブリーピンクはおどりだし、Aメロで歌い始めた。

「プリンセスステージでライブスタート!」

きれいな歌声で、華麗かれいなダンスパフォーマンスで、魔獣をひるませていく。

「暗くて深い 闇の向こうに」

「一人さびしく たたずんでいた」

「だけどもう 怖がらないで」

「それは迷いを 断ち切ったしるし」

「春風に向かって 旅立っていく」

「さあ 夢のとびらを開こう」

「輝く未来に向かって 放つよ私だけのメロディ」

「愛を守るため みんなを守るために」

「きらめく世界に奏でる 私とあなたのハーモニー」

「あなたのそばにいる それがプリンセスなんだから」

砂漠さばくの街に 住んでいても」

「氷でおおわれた 場所にいても」

「心はいつだって 一つだから」

「それは つながっているしるし」

「桜がう空 勇気を出して」

「さあ 一歩前へとみ出そう」

「輝く今へと響く みんながつなぐメロディ」

「世界を守るため 宇宙を守るために」

「きらめく夢を目指して 一つになったハーモニー」

「みんなのためにいる それがプリンセスなんだから」

「人はみんなときめいている」

「だから ずっとわすれないで」

「心の輝きを信じて」

「輝く未来に向かって 放つよ私だけのメロディ」

「愛を守るため みんなを守るために」

「きらめく世界に奏でる 私とあなたのハーモニー」

「あなたのそばにいる」

「みんなのためにいる」

「それがプリンセスなんだから」

 ラブリーピンクのライブパフォーマンスで、魔獣は戦えなくなった。

乙女おとめの愛!ピュア・スイート・ハート!」

ラブリーピンクがプリンセスバトンロッドでハートをえがき、魔獣に向かって放つ。すると、昆虫の魔獣は跡形あとかたもなく消えていった。

 「ちゅ、ちゅ、ちゅっぴー!」

と、チララが魔獣のコアから出てきた輝きのありかを察知。そこにたどり着くと、

「キャッチ!」

と輝きを回収することに成功した。それをラブリーピンクのプリンセスミラーに認識すると、

「ルビー。あざやかなピンクに輝くマジカルジュエル。天然ルビーは産地がアジアにかたよっていて欧米おうべいでは採れないうえに、産地においても宝石にできる美しい石が採れる場所は極めて限定されている。また、大きな石は産出量も少ない。かつては宝石の中で最も貴重とされ、ダイヤモンドの研磨法けんまほうが発見されてからも、火炎溶融法かえんようゆうほうによる人工合成ができるまで、ダイヤモンドに次ぐ宝石としてあつかわれた。名前の由来はラテン語で赤を意味する『ルベウス』ある。コランダムで赤色のものをルビーと呼び、透明とうめいから不透明まで存在する。透明感が高く、インクルージョンの少ない物が高価である。不純物の違いでコランダムの色が変わり、不純物のクロムが1%ほど混入すると、い赤のルビーとなる。鉄やチタンが入ると青のサファイアとなり、クロムがごくわずかしかない薄い赤のものはピンクサファイアだ。クロムの含有割合一パーセント以内という数値が、自然界で希少きしょうな状況でしか起こらないため、天然ルビーが貴重とされる。クロムが増えるたび色は濃い赤から黒くなり、価値も下がる。さらに五パーセント以上だと、エメリーという灰色の工業用こうぎょうよう研磨剤けんまざいになり、価値は激減する」

 「それではみなさん、また次回輝く世界でお会いしましょう!プリンセスステージ、ハッピーフィナーレ!」

ラブリーピンクが勝利宣言すると、

「もう、魔獣ちゃんがやられちゃったじゃないの!」

「俺たちが手塩てしおにかけて育てたのに!」

「次という次は絶対に勝つ!」

怪盗トリオはこうなげいて、マシーンに乗ってどこかに去っていった。


 それから、つぼみはチララを家に連れて帰り、

「チララのその姿、キュンキュンしてる!」

「ありがとう、つぼみ」

色とりどりのマカロンを食べているつぼみとチララだが、チララがつぼみにあることを伝える。

「ボクは、人間界からはるか遠くにあるおとぎの世界からやってきた。もちろん、闇の力から世界を守るために」

としたうえで、

「それに必要なものは、マジカルジュエルという不思議な力を持つ宝石だ。世界中に散らばっているマジカルジュエルをすべて集めるには、キミの力が必要なんだ!」

と、つぼみに協力を要請ようせいする。

「世界中の輝きを守るために、私は頑張るよ!」

「つぼみ、本当に戦ってくれるんだね。でも、キミの力だけではまだまだ力不足だ。まずは仲間を探すことから始めよう!」

「うん!」

こうして、つぼみはラブリーピンクとして闇の力から世界を守るべくマジカルジュエルを集めることになった。

 その夜、つぼみの夢の中でのことだった。

「聞こえますか…。私の声を…」

どこかから、美しき女性が現れた。

「私はおとぎの世界の女王である光の女神です。女王様と呼んでください」

光の女神は夢の中のつぼみに自己紹介したうえで、

「そこであなたにお願いがあります。ドールプリンセス、世界中の輝きを守ってくれませんか。輝きに満ちあふれた世界を真っ黒な闇に包みこまれないために、人々の将来の夢をうばわないために、そして子供たちが主役となる未来を守るために…」

と、メッセージを送ったのであった。

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