スターモンキー

@wizard-T

スターモンキーの生態メモ

 スターモンキーと言う生物をご存じであろうか。


 その生物は通常の猿に比べて非常に大きな目と、両手合わせて20本の指を持つ。

 腕は異様に太く、それでいて手先は妙に器用である。また頭部も通常の猿に比べ肥大化し、同時に耳たぶの筋肉が発達した。いつでも耳たぶを動かして耳を開閉し、音を遮断する事が可能である。

 だが足はかなり細く、また口も大きくはない。

 胃袋も基本的にまたしかりであり、その気になれば一日十グラム程度の食糧で生き長らえる事も可能である。




 それで寿命はと言うと、まったく不定である。なぜなら、彼らは自分の望みがかなえられたと知るや自らその命を絶つ習性があり、それ以外で死ぬことは絶対にない。逆に言えば、それが叶ったと思わぬ限りは彼らは絶対に死なないと言う事でもある。


 その彼らの行動を支えている物は、先にも述べた20本の手指である。


 この手指をもって、彼らは板を叩く。「上流階級」とされる者は数枚単位の板を叩き、「下流階級」は1枚または2枚の板を鳴らす。


 なお言うまでもなく「上流階級」・「下流階級」と言うのは我々の軸による呼び名で、彼らはあくまでも個体名で呼び合い、そしてそれ以上に階級差を付けられることを極端に嫌う。よって彼らには常に等しく食料を与えねばならない。ただ先にも述べたように量の多寡はさほど問題ではないため。あくまでも平等が第一である。


 とにかくその板から流れ出した波動をもって、各々の個体はコミュニケーションを取る。そしてその板を奪われる事をスターモンキーは極度に嫌い、それが失われた時・失われそうな時になると初めて動き出す。

 その時の力は極めて強く、また極めて乱暴である。よってそれらを奪おうとすることは大変危険な行いである。少なくとも餌を絶やさない限りは彼らは全く無害である事が確認されている以上、今後ともその方針で当たるべきである。


 









 そんな彼らスターモンキーであるが、近年興味深い記録が取れた。


 彼らの言語を解析する最中、彼らの願望と極端に現実が乖離した場合、彼らがひどくもだえ苦しむ事があったのである。先に述べたように彼らは極めて発達した耳たぶを持ち、また同時にまぶたの筋肉も強く発達している。

 これは身の安全を守る行いであり、視覚・聴覚の異常な発展の副作用だとされる事は既に研究済みである。


 それでもなお彼らの身体機能の限界を突破する速度または量の「攻撃」があった場合、彼らの精神は強く摩耗していくことは間違いないようである。なおこの場合、彼らが物理的な攻撃を試みる事はない。あくまでも板を必死に叩き続けるのみである。

 一部学者はこれを攻撃行為と取っているが、筆者はその見識を支持しない。



 筆者はその生物が先に述べたような激しい戦闘力を持っている事に対して、かつて同種族の中で激しい戦争があったのではないかと推察している。そうでもなければ、普段あそこまで争いを好まぬ性質の彼らがあれほどの膂力を持つ理由の説明が付かないからである。

 実際、私は彼らの死体の解剖に立ち会った事があるが、その筋肉は研究に明け暮れていた私などよりはるかに力強く、普段板ばかり叩いていたとは思えないほどであった。腕だけではなく、発達していないように見えた足もなかなか強い。

 

 あるいは彼らが一斉に攻撃にかかれば、我々もかなりの被害を出すのは免れないであろう。だがその結果はスターモンキーを我々が最大の敵として動く事となり、我々とスターモンキーによる最終戦争が始まる懸念すらある。

 言っておくが筆者はこの戦いで我々が負ける事は危惧してない。あくまでも放置する事と攻撃を仕掛ける事のメリット・デメリットを考慮したのみである。



 とにかく以上の理由により、彼らが我々に向けて板を叩き自分たちの意思を示そうとしているのであろうと言うのはほぼ間違いなく、またわざわざそれ以上に攻撃をかける必要もないと言うのが現在の筆者の見解である。


 あともちろん、その彼らの逆鱗に触れぬために、触れた時の防備のために対策をしておくことは大変重要である旨書き加えておく。

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