第39話 再会

 あ、1時過ぎちゃってるわ。


 まあ、エミリさんのことだから、遅れてくることくらいお見通しでしょ。


 シャレオツなカフェに入る。奥に行くと、あ! エミリさん発見!


「こんにちはー」


「久しぶりねえ、ユイちゃん」


「ねえー。なんか太ったんじゃないっすか? エミリさん」


「あんたねえ……アラサーになったら、誰でも太るのよ」


「アラサーは私だよ。エミリさんは三十路過ぎでしょ」


「過ぎてもアラウンドはアラサーなの!」


 エミリさんはハンバーグメイン、私はパスタを注文した。


「昨日、ビーワンにドキュメンタリーずの撮影クルーさんが来たよ」


「昨日? 私の密着したの先々週なのに、えらい間が開くものだねえ」


「ユイちゃんの密着なんて、テレビで流せるところ少なかったんじゃないのー?」


「ははっ。否定はできないな」


「密着ドキュメンタリーって、案外同じ人を違う番組でやるものなのね」


「もう3つ出たからね。あとは情熱大陸のオファーを待つばかりね」


「さすがに来ないでしょうよ」


「放送されたらしばらくはまたビーワンが大盛況になっちゃうね、ママさん」


「あー、放送される頃には私、ビーワンのママじゃなくなってるわ」


「え?! なんで?! 辞めるの?!」


「ふふーん。本店のママになるの!」


「え―――! すごいじゃん! え、てか、チエミさんは?」


「肝臓ぶっ壊れて、引退することになりました」


「おう、あの魔物が自滅したか……エミリさんも、気を付けなよー」


「私はあそこまで乱れた食生活送ってないから」


「あ、じゃあビーワンのママは?」


「カンナちゃんに任せることにした。ベテランだし、サバサバしてて女の子達に好かれてるし、適任でしょ」


「へぇー、適当に稼げればいいって昔は言ってたカンナちゃんが、ママかー」


 懐かしいなあ、カンナちゃんとトリキ行ったなあ。あの後、わりとすぐ移籍したもんだから、あの1回きりになったけど、また行きたいな。


「天神森のユイを育てた店として聖地巡礼とか言って客は勝手に来るし、第2のユイちゃんを目指して女の子は勝手に集まるし、今のビーワンの経営は難しくはないしね。ママ交代するには、いいタイミングだと思うわ」


 ハンバーグとパスタがやってきた。


 食べながら、しゃべり続ける。


「天神森のユイか。約束は果たせたかな。天神森のトップに立ててるのかしら」


「十分果たしてくれたわ。間違いなく、ユイちゃんは天神森の伝説となるホステスよ。ここまで成長するとは、さすがの私も見抜けなかったわね」


 エミリさんが変わらない笑顔で笑う。良かった。この笑顔を見るために今日は来たようなもんだ。

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