第30話 初トップ

 カンナちゃんと過ごしたトリキの時間は、私に、ヒントをくれた。


 てか、カンナちゃんの店とのキャラのギャップに驚いた。


 お酒が進むにつれ、ペースが上がるタイプ。


 閉店まで飲み続け、寮のカンナちゃんの部屋で更に飲んだ。


 店でのカンナちゃんは可愛い系なのに、素はおっさんみたい。


 って言ったら、


「サバサバ系が人気なのは女相手だけだよ! 店のコンセプトが可愛い女の子と話せるお店ってロリコンコンセプトなんだから、可愛くしろとしか言われないもん〜」


 って、ぶっ壊れてた。


 ロリコンって、この店で禁句かと思ってた。


 客の平均年齢の割に全員10代設定でのスタートって、やっぱり変だよね! って、盛り上がった。


 超面白い。カンナちゃん、大好き!!


 面白いだけじゃない、カンナちゃんは気付きをくれた。


 必要なのは、レベル上げ。


 レベル30で、推奨レベル50にはどう頑張ったって勝てない。


 レベル30までいくのも、十分しんどいんだけどなあー。


 今の私じゃ、到底敵わない。


 恥も何もなく、エミリさんにも、チエミさんにも、ミズキちゃんにも、アカネちゃんにも、小さな迷いでも何でもかんでも聞きまくった。


 後輩でもどうでもいい。


 ただただ、レベル上げが必要なのだ。今の私には。


 いつか、魔物を倒すために。


 ミズキVSアカネを楽しみにしてる場合じゃなかった。


 でも。


 魔物を倒すのは、別に私じゃなくてもいい。


 魔物が、自分の駒だと信じきっている重要キャラに返り討ちにあうのとか、どうかしら?


 おもしろそうだけど、どうすりゃいいのかまーったく分からんですわ。


 今日はお給料日だ。恒例の、ランキングの発表だ。


 ユキノちゃんが危機感を感じ始めたのか、人手不足で店から要請があったのか、最近は週2で入っている。


 カンナちゃんは、相変わらずだ。十分生活できてるし今のペースがラクだから、特に頑張ろうとは思ってないって本人も言っていた。


 ミズキちゃんは、指名客が増えてるのにまだまだアグレッシブに強引に指名取ったり売上上げたりしている。


 アカネちゃんは、心理学も大学で学んでいるそうで、お客さんを実験台にさせてもらってると言っていた。結果、ガンガン指名も売上も取っている。


 やっぱり、ミズキVSアカネはおもしろそうだ。


「成績発表〜」


 ミーティングが始まった。


「先月のトップは、ユイちゃん! おめでとう!」


 おおーと、女の子達から拍手が起こる。


 心の中から、ブワッと浮き足立つ感覚が沸いた。


「ただ、指名はダントツで言うことないんだけど、売上がひどい。まだまだ遠慮が見えるから、もっと積極的に取りにいって」


 浮いた感覚が、引いた。


「あ、はい」


 ここんとこ、毎月同じことを言われているような……。


 でも、初トップだ!


 頑張った! 頑張ったよ、私!


「次は、今いないけどユキノちゃんね。週2で最近は入ってもらってるから、2倍ペースとはいかなくてもかなり上げてるわね。売上はダントツのトップでした」


 ユキノちゃんは、スリードリンク制のライブみたいな感じだもんな。グッズ作ったら売れるだろうな。


 さて、注目の3位は?


「次は、カンナちゃんね。指名も売上も安定してる。でも、ここで満足しないで新しいお客さんを掴むことを意識してね。もっと伸びるのに、もったいない」


 カンナちゃんだ!


 新人達は、まだまだ寄せ付けませんな。


 マイカちゃんはまだ入ってこないだろうから、ここでミズキVSアカネの結果が出るはず……!


「次は、ミズキちゃんとアカネちゃんと、同じくらいね。2人ともすごく指名も売上も伸びてて、すごいわ。特に、ミズキちゃんの指名を取ろう、売上を上げようって姿勢はみんなも見習ってほしい」


 ドローか……。


 決戦は来月に持ち越しだな。


 でも、アカネちゃんの方が出勤少ないし、そう考えればアカネちゃんが1歩リードか?!


「次が、今いないけどマイカちゃんね。マイカちゃんも地味に伸びてるんだけどね。出勤の少なさがどうしてもねえ」


 そりゃ、しょうがない。


「今月こそ、いい人が来れば3人は採るから」


 それも、毎月言ってるよね、エミリさん。

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