第23話 沼2
「ご馳走様でした! 本っ当に美味しかったですー!」
エミリさんが、飛び跳ねる勢いでお礼を言っている。
「美味しかったです、ご馳走様でした。ありがとうございます」
私も丁寧に頭を下げる。
いやー、美味しかった。高いもんはうまいな、やっぱり。
古民家風の鉄板焼き屋さんだった。
コース料理みたいな感じで、前菜です、とか言いながら店員さんがチマチマ料理を持って来てくれる。
サラダもステーキもエビもよく分からんやつも、よく分からんデザートも、全部美味しかった!
さ、満腹だし、帰ろ。
「じゃあ、私おなかいっぱいなんで、腹ごなしに歩いて店まで行きますね。まだ時間あるし」
またタクシーに乗せられてヘロヘロにされるのはイヤなので、適当に理由付けて1人で店に行きたいんですー。
「あら、うち近くなのよ! まだ時間あるんだし、寄っていって。いいコーヒーがあるのよ〜」
「わー、食後のコーヒーいいですね! 頂きます!」
エミリさん……。
おわ、おばちゃんもうタクシー拾ってる!
「んー、……んー、じゃあ……」
はあ。まだ続くのか。
てか、近いから寄ってけって言ったんじゃないのか。タクシーの距離かよ。
タクシーの距離じゃなかった。
ものの5分と経たず、到着した。
チエミさんは、いくらか見えなかったけどお札を運転手さんに渡し、
「お釣りはいいから」
と、やっていた。
いや、歩けよ。
なんか、すごく大きなマンションだ。
茶色の外壁で地味な、大きなマンションだ。
エントランスに、制服のおっさんが立っている。
「おかえりなさい」
お、しゃべる。
チエミさん達が返す。
「ただいま」
「ただいま」
「ただいま……あ」
釣られた。
エミリさんが笑ってる。
「え? エミリさん一緒に住んでるの?」
「同じ部屋じゃないわよ! でも、このマンションに住んでるのよ」
「ここは、天神森のママクラスとか、トップクラスのホステスやホストがたくさん住んでるの」
「へえ〜……」
水商売の集まるマンション。
なんじゃそりゃ。
「ユイちゃんも、天神森で働くからにはこのNOVAに住むことを目指しなさい」
「はーい」
興味ないのに返事したんだから、上出来だと思いなさい。
エレベーターに乗って、13階へ。最上階だ。
やっぱり、上の階ほどお高いのかしら?
しかも、一番奥だ。角部屋だ。なんか、ドアの手前に、廊下に門のようなものが付いてる。
最上階の中でも特に、お高いのかしら?
相当金持っとんのか、このおばちゃん。
いや、うずうずしてる訳じゃない。もう悪いことはしないと、新垣結衣に誓ったもの。
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