第17話 コスプレデー、爆誕

 夕方4時半。


「おはようエミリさん! ウチ、完璧な標準語をマスターしたっちゃ!」


 カランカラーンってドアを開いて、カウンターのエミリさんに報告だっちゃ!


「おはようユイちゃ……その格好で寮から来たの?!」


「そうだっちゃ!」


「うる星やつら観たのね……」


「面白かったっちゃ! ドンキで同じ服見つけたから、買ったっちゃ!」


 クルクル回ってみるだっちゃ!


「せめてしのぶを吸収してくれれば……ドンキにセーラー服もあるでしょうに……」


 なぜかエミリさんが頭抱えてるだっちゃ。


「しのぶはなんかあざといからイヤだっちゃ!」


「そのしゃべり方じゃ狙ってる感強すぎるから! ユイちゃんがあざとく見えるから!」


 クルクル回るウチを見て、エミリさんが決定したっちゃ。


「コスプレデーを週一でやろう! 客の少ない平日に!他に何があった?」


「竹付きの着物とか、デカいリボンのセーラー服とか、メイド服とかチアリーダーとかだっちゃ!」


 買ってくる! と、エミリさんは走って行ったっちゃ。


 急遽開催、コスプレデーだっちゃ!


 カンナちゃんとリンちゃんも出勤だっちゃ。


「えー何これ〜」


「あ! 私禰豆子ねずこがいい! 禰豆子!」


「私胡蝶こちょうさん! エミリさんがセーラームーンはキツいでしょ、リンちゃんセーラームーンにしなよ!」


「やだ!禰豆子がいい! エミリさんじゃイタいから、カンナちゃんがセーラー服着なよー」


 いつもチャイナドレスで飽きてたから、2人ともすごい食いつきだっちゃ。


 エミリさんは、鬼の形相っちゃけど。


 そんな揉めなくても、今日はマイカちゃんも出勤だっちゃ。


 ホームページに写真載っけて、いつもの営業メールとラインにも写真付けたら、初めてのコスプレデーは大盛況だっちゃ!


 でも、次のコスプレデーまでこの衣装はダメって言われたし、また帰りにレンタルしに行くっちゃ!


 エミリさんが、


「高橋留美子なら、めぞん一刻にしなさい。男が守りたくなるから」


 って教えてくれたっちゃ。




 今日も、4時半に出勤です。


 カランカラーンって、おなじみのベルの音と共にお店に入ります。


「おはようございます、エミリさん」


 今日もエミリさんは、カウンターで事務仕事をしているよう。


「おはよう、ユイちゃん」


 エミリさんが顔を上げて、私を見ましたわ。


「ホウキ持って来たの?! たしかに響子きょうこさん、魔女の宅急便のキキばりにホウキ持ってるけど!」


「ええ」


「ユイちゃん、形から入るタイプなのね……」


 まあ悪影響はなさそうだからいいか、と、着替えてそのままミーティング、オープンと進みました。


 お客様が来られますわ。


「ひとつだけ、お願い……1時間でいいから、私を指名して……」


「泣いてるの?! どうしたの?! 閉店まで指名するから、泣かないで?!」


 約束よ、お客様。


「名言をパロディするな!!」


 まあ、エミリさんがご立腹ですわ。


 また、帰りにレンタルしに行かないといけませんね。




 翌日、4時半。カランカラーン。


「エミリさん! ぽっくん、今度こそ標準語マスターしたばい!」


「ええ?! なんでそれ借りたの?!」


「亀に男の子が乗ってるのが気になって、パケ借りばい! てっきりイケメンおぼっちゃまが主人公だと思ったら、まさかのパッケージの子が主人公だったばい!」


「思ったのと違ったらそこで観るの止めようよ! 髪切って来なくてほんっと良かったわ。それはダメ! 今日は休みね! 連勤だったし!」


 仕方ないばい、ゲオ寄って帰るばい。



 さらに翌日。


「エミリさん! これなら、どうある! かわいかったあるー!」


「チャイナキャラで来たか!おダンゴの髪でチャイナでかわいいと言えば、らんま½のシャンプー!」


「ブブー! 銀魂ぎんたま神楽かぐらある!」


女傑族じょけつぞくじゃなくて、夜兎族やとぞくかー!」


 これなら、コスプレデーじゃなくても制服がチャイナドレスだから完璧ある!


「いや、なんか違うユイちゃん! 趣旨がズレてる! もう、カード返して! 今から私が借りてくる!」


 閉店後、エミリさんが山ほどDVDを貸してくれたある。


「多くないあるか」


「多くない! ユイちゃん吸収力凄すぎるから、偏らないように観るのよ!」

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