第14話 声
「え……まさか……」
周りざ、ザワザワしよる。
なんね? 何があったがや?
入って来たのは、堀さんず。
「いらっしゃいませー」
ち、わちゃ言いよるが、
「なんだあ、堀さんかー」
「まあ、そうよね、まさかね」
「でも、あの声絶対……」
「私も聞こえた!」
「え? 何? すごくガッカリされてない? 客だよ?」
堀さんも戸惑いちゅうわ、そら。
「まさかとは思うんだけど、ユイちゃん」
エミリさんち、カウンターから手近なワインを持って来ざん。
「これこのお客さんに、こんばんはお客様、よろしければこちらのワインを入れてくれませんか? って言ってみて?」
「は? わちゃ、こん客に暴言プラスチェンジくらでとんぞ」
「んー、そう言わずに、お願い!」
うう、上目遣いってげが威力な……。
「わちゃ言うたら、こん客がこんワイン入れてくれるならええざ。5万のワインぞ」
「5万?! ……カードで。お願いします!」
いぐんかい?! 5万ざデカいど。なんなんぜ……。
「エミリさん、なんちゅーんやっで」
「ま、何でもいいんだけど、お客様、よろしければこちらのワインを入れてくれませんか? って」
「わち。お客様、よろしければこちらのワイン入れてくれませんか?5万円です」
「あ! 後半!!」
「やっぱりガッキーだ! ガッキーの声だ!!」
「ガッキー? 新垣結衣?」
「ユイちゃん、声激似だよ!!」
「があ? わちゃん声だ新垣結衣に似どうわがなかもんが、なんちゅーんやっづ」
「あれ? ユイちゃんの声だ……」
「わちゃしゃべっとんじゃ、当然ざろ!」
「えー、でも、絶対絶対、ガッキーの声だったよ!」
「ガッキーだ……俺、ガッキーに5万のワイン売られた……」
アホげ、わちゃざ。
「なんだろ? 後半ガッキーだったってことは、長くしゃべるとガッキーになるの?」
「いや、ユイちゃんいつも1人で長くしゃべってるよ」
みんな考え込んざら。
なんざだあ、みんななんざ騙されちゅんざろか。わちゃんドッキリざろか。
「標準語よ!」
「標準語?」
エミリさんが、なんざひらめいたざん。
「今までと違うのは、標準語だよ!」
「たしかに! ユイちゃんの標準語、初めて聞いた!」
なんげ、みんなじでわちゃん見よる。
「ユイちゃん! このお客さんに標準語でなんか言ってよ!」
「なんざこげん客にわちゃなんべんも!」
「お願いだよ! 頼む! この通り!」
「お前が頼ばんな! うでるぜえば、黙れ!」
「私、動画撮っとくから! ユイちゃんも見たらわかるよ! マジ激似!」
マジ激似……?
万が一、万が一わちゃん声だ新垣結衣似どっちゃあ……でへ。
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