第13話 汚い方言

 昨日は指名被ってパニくらいやっちな、今日はえろうヒマな。


 まあ客自体も少のうの。


 アヤちゃん、ちゃんとフォローしてくれとったけんず、やっぱり、大きいっちにゃあ。


 わちゃ、ちょっと人気者かい思ちが、アヤちゃんの客が流れてきての指名もあんざし、たまたま被りよっただけやったんさのー……。


 そげんち、初めて見る客が来おった。


 みんなの「いらっしゃいませー」が、心なしか勢い強お気いするわ。


 指名なしの客さ、エミリさんから


「ユイちゃん、よろしく」


 っち、テーブルについた。


「こんばんはぁ、はじめまして、ユイです」


「あーはじめましてー」


 なんや? えらい、小馬鹿にした物言いの。


 ちと、ムッとしよが。


「君何歳なの?」


「わちゃ19歳ざ。お兄さんは?」


「え? なに、方言?」


「我峨弁ず! やっぱりこのへんの人ぁ知らん人ばっかのおが、ええとこやでの」


「なに、その汚い方言。他の子付けてくれる?」


 …………


 あれざの、大晦日の。


 除夜の鐘突くやつの、太い木で思いっきり突かち、大きな釣鐘に走る衝撃ぞ。


 方言を否定されち、わちゃだけでのうず、家族とざ、友達とざ、地元全部否定されち気持ちなるんぞんな。


 ……泣きそ……。


「エミリさん!」


 カウンターのエミリさんに、声掛けざん。


「こった方言かねちごーち、かんごうのいわよるち。たーかよけんのかんね、とんざん?」


「ん? え、方言が何? ごめん、さすがに分かんない」


 もう泣ぐ。


 早う、伝えんで。


「えーと、このお客さんが、方言が無理だから他の子にして欲しいって言ってます。他の子と代わってもらえますか?」


「えっ……」


 この憎そい客も、他のお客さんも、女の子たちも、キョロキョロしち、入口のドアを見、しだした。


 なんしちょう?


 エミリさんも、え? へ? ち。


 わちゃ、おかしな言い方しよっちゃが?


 そん時、入口ドアがカランカラーンつって、開いた。

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