第9話 給料日翌日

 わちゃ今日は休み!


 昨日ざ2人も本指名来て、めためた嬉しかったんざ!


 わちゃ、水商売向いとるんけね〜♪


 明日に備えち、アヤちゃんからもろたマスカラを試すざ!


 アヤちゃんがやっとっちゃようず、思い出しつう塗ってみゆ。


 アヤちゃんみたいに、なんべんも塗ってみゆ。


 手鏡で塗りようざん、もうええかいの?思うち、洗面所の鏡にわちゃん顔ざ写してみゆ。


「おお!」


 目がえろう大きち見えんがや!!


 すごいでよー、アヤちゃんの言うちゃ通りじゃ!


 かわいくなったで!


 アヤちゃん、ええもんくれらしたずんど。


 明日、アヤちゃんにお礼言わんずな!


 けえアヤちゃん、9時で帰らんならんずかしゃべれんのんぞ……


 あ!


 アヤちゃんいっつもわちゃ行っちおるが!


 たぶん店行くん早いんど、わちゃも早う行きゃミーティング前にいっぺえしゃべれる!!


 明日、わちゃ早う店行くん!!




 カランカラーンつって、扉開けて店入っちな、エミリさんがカウンターずノートとパソコン開きよっちゃ。


「あ、おはよーございます」


「おはよー早…めっちゃかわいい!!」


「あ、分かりよんすー? マスカラっちゃ。アヤちゃんにもらったんず」


 あり? アヤちゃんおらんすな。早すぎたか。


「アヤちゃん?」


「アヤちゃん早いんど、おるかなーち思たんぜ」


「アヤちゃん、たぶん飛んだよ」


「飛んだ?」


「辞めたの」


 ……なんや、あれや、大晦日な。


 除夜の鐘突く、でけー響く音させる、大きい太い木のやっちゃ。


 あれで、胸を突かれたようなんざ、衝撃ぞ……


「昨日、来なかったのよ。電話したし、ラインもしたけど、着信拒否されてるみたい」


「……アヤちゃんが? 着信拒否……」


 ノートから目を上げちゃ、エミリさんが聞いちょくう。


「仲良かったの?」


「仲? ……良くなりたかったんず……」


 エミリさん……ノートを閉めひゃった。


「すっごく多いのよ。お給料もらって、翌日飛ぶ子」


 頭が真っ白ざ。


 アヤちゃんが……


「飛ぶ子って、月が変わったら全然お客さん呼ばなくなったりするから、分かるの。でもアヤちゃんは分かんなかったわー。真面目なアヤちゃんらしいわね」


「真面目?」


「お給料日もいつもと変わらず、お客さん呼んで、指名取って、売上上げて」


 よう、分からんちね。


 何が真面目なんか。


「きっと、目標額を稼いだのよ。アヤちゃん、アメリカに留学するのが夢で留学資金を稼ぎたいって、面接の時から言ってたの。貯まったから、辞めたのよ」


「……そんげ……アヤちゃん、これから夢を叶えるんすなあ……」


 えれぇ寂しいけんど……夢が叶うんずら、めでてえこっちゃ。


 頑張ってな、アヤちゃん。


 ありがとうざ、アヤちゃん。

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